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第366話


 「誘った癖に邪険にすんなって話だ」


 「黙れ。こっちは会話に慣れていない人物と会話する距離感を捉えているんだ」


 なるほど。

 そう言うことか。

 して、黙れとは一体。


 「で、どうする? 来てるぞ」


 「ああ、 来てるな」


 奥の方でモンスターが出現した。

 流石に他のダンジョンより強力な個体が多そうだ。


 「わー、結構多いわー。どうすんのこれ」


 「倒すに決まってンだろ」


 俺は最近使用頻度の増えた安い剣を取り出す。

 俺の愛用の木剣はそろそろ限界が来ている。

 この木をベースにした別の剣を作るべきだろうが、とりあえず予定はないので、100本ほどストックのある安い剣を使うことにしているのだ。



 「俺は左、お前は右な」


 「指図するな」


 「そのセリフ、リアルに聞く機会滅多にねーな………来るぞ」



 アンデット系の人型モンスターが大量に迫ってくる。

 俺とレイは同時に飛び出して大群の両端に着いた。

 すると、一番近くにいたアーマースケルトンとハイゾンビが同時に斬りかかってきた。


 「ハハッ!!」


 ここのダンジョンのモンスターは確かに他よりは強力だ。

 しかし、そんなものは関係ない。


 「おッッッラァアアッッ!!!」


 まとめて薙ぎ払ってアンデット達を吹き飛ばす。

 地面を蹴って次のアンデット達の目の前迄迫って斬って、迫って、斬ってを吹き飛ばした。

 

 「ん〜〜!!! 頭使ったから、スカッとするわー。それじゃ、こいつを試すか」


 

 バックステップを踏んで後ろに下がる。

 剣を抱えるように持って魔力を貯めた。

 風魔法が上を向いている刃を中心に円盤上の風の塊を生成。

 剣を抱えたままモンスター達の上空へ飛ぶ。

 一番いい位置に来たらところで、

 

 「よっこら、せッッ!!!」



 振り落とした。

 風魔法がアンデット達を潰していく。

 しかし、 それだけでは終わらない。

 円盤状の風の塊が回転を始める。

 高速回転をした風は、アンデット達を切り刻んだ。


 「ふぅ………んー、ボツだな。自分で斬った方が速ェわ」


 魔法を解いて、剣を一旦収める。

 討ちもらしたモンスターの最短距離を計測。


 ダンッ!! と地面を蹴る音が鳴ったとほぼ同時に敵の前で足がつく。

 体はあくまで動いたまま、移動のための動きを邪魔せず、無駄なく斬る。

 その勢いを残したまま次のモンスターへ。

 これも斬る。

 反応する暇も与えない。

 そうやって、アンデット達は悉く消滅していった。


 「おしまいっと」



 俺はちらっとレイの方をみた。

 向こうも難なく片付いたようだ。

 剣を仕舞いながら近づいてくる。



 「………………貴様、剣くらい選んだらどうだ?」


 「これでいいンだよ。剣として使えるんなら大抵のやつは倒せる。つーか、お前いい剣持ってんな」


 この前のニールとの模擬戦の時とはまた違う剣だ。

 あれはあれでかなりの業物だったが。

 しかし、こいつ()()()だろうか。


 「どうした?」


 「あー、その反応でわかった。もういいもういい。用件はわかった」


 こいつは多分俺が異世界からの勇者だと、どこかで知ったから近づいて来たのだ。

 ただ単に強いからと言う理由なら、入学試験の段階で何らかのアプローチがあったはずだからな。


 「ふ、流石は勇者だな。まさかこの剣の銘柄で当てられるとは思っていなかったぞ」


 ルーテンブルクの宝剣・アリュシオン。

 おそらく、ニールの持つバルムンクと同レベルの超業物だ。

 フェルナンキアの闇市にいた武器マニアの中年から話を聞いただけなので大した情報はもっていないが、こいつがあの国に深く関わる人物だと言うことはわかった。


 「で、俺のことは誰から聞いた?」


 「聞いたと言うよりは偶然耳に入った。騎士達の方からだ。よもや貴様のような輩が勇者とはな。まぁ、実力は申し分ないだろうからな。なにせこの私を軽くあしらうような化け物だ。そこそこ強い自負があった分かなり応えた」


 「ああ、だろうな。お前ら学院生はプライド高そうだし」


 流石に貴族王族出身者が多いだけはある。

 驕ってない奴もいるにはいるが、それでも多少はそんな感じはある。


 「あれ、って事は人間界の三大国家の人間がここにいるわけじゃねーか」


 「ミーはノーカンっしょ。まぁ専属の神だろうって言われればそれまでだケド」


 「でも、俺にお前の国絡みで話があるのは変わりねーだろ?」


 「ありゃま。確かに。事が起きるとしたら一年後。今のうちに出来ることはしときたいしね」


 一年。

 また一年だ。

 俺の記憶の穴も、一年後までに修正させておかないと、いけない。

 関連があるのだろうか。

 ………いや、あるだろうな


 「奇遇だな」


 「あ?」


 「私も、一年後に起こるであろう出来事について相談に来たのだ。そうか。だったら小人の相談も当然だと言うもの」


 レイは1人で納得していた。


 「………やっぱり起きるのか?」


 「ああ。間違いなく起きる」



 もしかしたら、全てこれに繋がっていたのかもしれない。

 国王が俺を強制的に連れ帰ろうとしたことも、魂魔法の研究も、ルナラージャの連中がここを攻めてきたことも、フィリアの政略結婚も。


 「人間界の三カ国戦争だ」

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