第364話
ラビは放課後に、誰もいない場所を探して本を読んでいた。
モンスターは進化する。
人間や他のモンスターを殺すことで、死体や魔石から魔力を得て、ある一定の量を貯める事で別種のモンスターへと変化する。
その進化には分岐があり、変化時の条件によって何に変わるかが違う。
進化後のモンスターは、自然発生した個体より強い。
さて、ここまでは基本だ。
ラビは何人もモンスターを仲間にしている。
内訳としては、スライム・サーペント・ゴーレム・ハーピィ・ドラゴン・スパイダー・スケルトン・トレント・ソウル・マシン・パンサーだ。
当然彼らも進化する。
これは生物迷宮の特徴だが、種類ごとに長がいて、それぞれ人格を持っている。
例えば、スライムだったらスラ左衛門。
現在はスライムヒューマンだ。
スラ左衛門も最初はスライムだったわけだが、ラビの成長につれ、どんどん進化して今に至る。
ちなみに、退化も可能であり、元に戻る事もできる。
では、それまでに進化していない分岐になる事は出来るのか。
答えは否だ。
実際試したため、ここまではラビも知っている。
ここでラビはこう思った。
退化した状態で条件を満たせばどうなるのか。
答えは——————
「………まじか」
分岐可能だった。
現在のスラ左衛門の姿は、ボイルスライム。
超高温のスライムで、直接触れると火傷では済まない。
進化条件は、炎魔法の取得又は炎魔法を100回受ける。
実験でわかったのは、生物迷宮の場合この条件を主人がクリアすれば分岐するらしい。
お陰でかなりのモンスターが分岐可能だったことがわかったのだ。
現在ラビの元にいるモンスターは11人。
分岐によりダンジョンで召喚可能なモンスターは一気に種類が増えた。
「すごい! この本すごい! ここまでわかるなら、みんなどんどんつよくなれる! いろんなモンスターになれる!!」
静かな場所ではしゃぐラビ。
ダンジョンの力を使う以上、 人がいない場所でなければならない。
でなければ危険なのだ。
この力は悪用しようと思えばいくらでも可能。
悟られてはならない。
隠し通せ。
ラビは母から言われていた。
なのに————————————
カラン
「!!!」
ラビは振り返る。
そして、目を大きく見開いた。
「お、お嬢ちゃん、まさか………」
「としょしつの、じいちゃん………………!!!」
(見つかった! いそいでくちどめを、かてる? きょうしだぞ、でも、だって、どうするどうするどうするどうするどうする………!!)
混乱するラビ。
すると、
「“モンスターロード”か!?」
「………ん?」
モンスターロード。
聞き覚えのない単語に首をかしげるラビ。
「数々のモンスターを使役し、その姿も自在に変化させられるという………お前さんがそうなのか?」
「………しらん!! なんだモンスターロードって!」
正直に答える。
この辺は子供だ。
「なんと! 無自覚じゃったか………」
どうやらフォルゴーンの中ではそういう事になってしまっているらしい。
「話を聞いてもいいかのう?」
ラビはこう思った。
これは利用できる。
このモンスターロードとやらの情報を得られれば、今後ばれた時に対処できる。
そう思ったラビは、
「………だれにもいっちゃダメだぞ」
話すことにした。
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「なるほどなるほど………11人のモンスター………彼らの進化個体を自在に変化できるというわけじゃな」
「かのうなじょうげんはあるけどな。ツリーのげんかいのたかさとへいこうのえだよりうえはむりだ」
ツリーとは言ってしまえば系統樹だ。
同ランクより上にはいけないという事が言いたいらしい。
「そうか………それでもそれぞれかなりの種類に変化できるんじゃろう?」
「うん。できる」
「羨ましい事じゃて。儂もモンスターに好かれてみたいものよ」
「ははは」
同じようになるには無理なので笑って誤魔化すラビ。
「………そうじゃな。お前さんならふさわしいやもしれんのう」
「ん?」
「何でもないぞい。ではな」
フォルゴーンはそのまま校舎へと消えた。
ラビは知らなかった。
これが、とある事件のきっかけとなる事、そして、先代魔道王フォルゴーンが言った、モンスターロードが生物迷宮の秘密に関わるという事を。




