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第36話


 俺たちはクエストの目的地に行くために街の外に出ていた。


 「ケンくん、今回のクエストってどんな内容なんですか?」


 「ゴブリン退治だ。ここの近くにある森にゴブリンが住み着いたらしい。そこのゴブリンを10匹退治する。証拠として魔石を10個提出すれば依頼達成だ」


 魔石とは、モンスターの体内で生成される魔力の結晶だ。

 鑑定石でどのモンスターの魔石か、属性は何なのかを知ることができる。


 「思ったより簡単そうですね」


 「だと良いけどな。今回はとりあえずお前を主体にしてクエストを行う。負けそうになったら俺が出るが、出来るだけ自分で戦え。俺なら森ごと焼いて一瞬で終わらせれるから………それじゃ依頼がパーだな。森を荒らすなって書いてあったし」


 このクエストの条件として、森を荒らすなというものがあった。

 木々を傷付けず、ゴブリン討伐をしなければならない。


 「じゃあ、頑張ってみます。この前覚えた魔法を駆使して勝ってみせますよー」


 「油断はすんなよ。ゴブリン、人型っつってもモンスターだ。捕まったら何されるかわかんねーぞ」


 緊張感を持たせるために少し脅しておく。


 「大丈夫です。油断しません。それにケンくんがいますから」


 「ハァ、ったく………」


 通じてないみたいだ。

 まあ油断しないと言っているので信じておこう。


 「なるべく早いほうがいい。今日中に片付けるぞ」


 「はいっ」









———————————————————————————









 「森が荒れている………例のゴブリンか」


 実は、俺たちが今向かっている森は女王が拠点としている場所だった。


 「ギルドに依頼をして3日。そろそろ冒険者が来る頃か」


 森を荒らさずにゴブリンと戦うのは手間がかかるので時間の無駄だと考えた女王は、冒険者に依頼することにした。

 ゴブリンと言えば初心者が狩るモンスターの中でもメジャーな方だ。

 そのため、依頼すればすぐに処理をすると思ったのである。


 「今日も見つからなかった………何処におられるのだ………」


 







———————————————————————————








 「この森の奥だ。ゴブリンほどの知能があれば集落くらい出来てるかもな」


 「はい、多分出来てると思います。数によりますが、集団で暮らしているゴブリンなら1日で作っちゃうはずです」


 リンフィアはそう言った。

 ここまで詳しいのは魔族だからだろう。


 「へぇ、よく知ってるじゃねーか。だったら弱点属性もわかってるよな」


 「炎ですね。でも………」


 「ああ、森を荒らせねーからな。工夫して戦え。焦げるくらいならあっちも文句を言わねーだろうから」


 「頭に入れておきます」







 俺たちは森を進んだ。

 鬱蒼とした森だ。

 肝試しに丁度良さそう。

 木々の距離が近いため、日があまり差さない。

 

 「暗いですね」


 「確かにな。これならモンスターが拠点に選ぶのもわかる」


 モンスターの祖先は魔族の国から生まれている。

 魔族の住む場所は青空が見えない。

 暗い雲に覆われており、今みたいな暗さだ。

 念のために【索敵】を発動。



 「近いな………リフィ、構えとけ。ここから100m先にゴブリンが5匹いる。ここの木をうまく使って奇襲をかけろ」


 「はい」


 そろり、そろりと歩いて行く。

 リンフィアは忍び足でゆっくりと近づく。

 そして数秒後、ゴブリンを視認した。


 「………居た」


 どうやら食べ物を探して歩き回っているようだ。

 手作りの粗末な籠のようなものの中に果物やらキノコやらが入っている。


 「よかった、気づいてない。奇襲をかけるならまずは動きを封じないと」


 リンフィアは詠唱を始める。


 「『土よ、隆起せよ。グランドライズ』」


 「!」

 

 地面が隆起し、ゴブリン達の逃げ場をなくす。

 木もあるので効果はかなり高い。


 「『炎よ、矢となり敵を貫け。ファイアアロー』」


 「ギャアアア!!」


 射出された火の矢はゴブリンの頭蓋を貫いた。

 脳などの弱点をやられた場合はHPに関係なく死に至る。

 逆にそれ以外の取り返しのつく場所はHPが0にならないと死なない。


 「一匹目………」


 「グギャギャッ!」


 ゴブリン達は木に登って脱出を試みる。


 「『我が肉体は限界を超える、ソロブースト』」


 その隙に強化をし、


 「『炎よ、矢となり敵を貫け。ファイアアロー』」


 「ギャアアア!!」


 もう一匹貫いた。

 しかし、その間に残りの3匹は脱出を終えていた。


 「3匹は逃しましたか………やっ!」


 木から飛び降り、追いかける。

 流石に木の間を飛んで追いかけるのはできないので。


 「………入った! 『氷よ、弾丸となり敵を撃て。アイスバレット』」


 狭い場所に入ったゴブリンを目掛けて魔法を放つ。

 逃げ切れなかったゴブリンの頭にヒットした。


 「当たった」


 「ギ………ギィ」


 死には至らなかったが、ダメージは負っている。

 なお、残りの2匹は見失ってしまった。


 「ギャアアア!!」


 「!」


 ゴブリンは、リンフィアに向かって走り出した。

 腰に下げた棒を掲げ、リンフィアに振る。


 「ギ!」


 「ハッ」


 リンフィアはそれを躱し、棒を杖で叩き落とした。


 「やッ!」


 その衝撃で倒れたゴブリンを力一杯杖で殴る。

 身動きが取れなくなったら、距離をとって、魔法を使う。


 「『炎よ、矢となり敵を——————』」


 

 目があった。

 リンフィアはゴブリンの目を見てしまった。

 そして自覚する。

 今自分は、命を奪おうとしていると。


 「つらぬ………」


 掲げている杖を下ろす。


 「………」


 俺はリンフィアの肩に手を置いた。


 「精神的な弱さが出ちまったか………リフィ、無理すんな。慣れるのは少しずつでいい。ここは俺がやっておくからお前は魔石を回収しに行け」


 「はい………」


 リンフィアは魔石を回収しに戻っていった。

 その間に木刀を出し、構える。


 「ギィ………」


 何故だろうか。

 俺には情というものがないのだろうか。

 俺は意図して生き物を殺そうと思ったことはない。

 普通拒否反応が出ると思っていたが、案外そうでもないらしく、全然平気だった。




 「悪りぃな。これは仕事だ」




 俺はゴブリンを真っ二つにし、魔石を拾った。

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