第357話
「この部屋にその遺体があるのかい? 嬢ちゃん」
ダグラスはウルクにそう尋ねる。
「うん、間違いないよー。目の前にある祭壇の上で巻かれている何か。あれが遺体の筈」
ウルクの目の前には、確かに祭壇があり、その上には何かがあった。
しかし、自分で言いつつ、妙だと思った。
どう考えても、
「あんなに小さいのにか?」
そう、あまりに小さすぎて、あれが遺体とは思えないのだ。
祭壇の上にあるのは、手くらいの大きさの塊。
それを何かが書いてある布で巻いている。
おそらく封印のようなものだと、ウルクは思った。
「遺体って言っても、命の神の遺体だろう? だったらそもそも遺体の形が俺たちと違っていてもおかしくは無いんじゃないかな?」
流はそう言った。
「確かに、神サマの遺体が俺らと同じとは限らねぇもんな。そもそも人の形をしているのかもわかんねぇのに」
「いや、少なくとも人の形は持っているよ」
流は一度見た事があるので、そう断言できる。
それが始まりだったのだ、忘れるわけはない。
「とりあえず見てみよう」
ウルク達は祭壇の前に立つ。
何か罠があると思ったが、罠どころか結界すらない。
ウルクは恐る恐る遺体に触れた。
封印されているのか、特にこれといって感じるものはない。
しかし、妙な圧迫感はある。
ウルクは手にとってその全貌をみた。
「これが………先代命の神の遺体………」
「そもそも先代ってなんなんだ? 神サマに代替わりとかあるのか?」
尤もな疑問だ。
しかし、この問いに対する答えは誰も持ち合わせておらず、一瞬シンとなった。
「………私は、ただこれが“先代のもの”だって聞いてただけだからねー………詳しいことはわかんないんだ」
「そうか………」
「仕方ないよ。神の遺体なんて規格外なもの扱っているんだ。わかった方がおかしい」
「それなー。ミーの事詳しく知っている奴なんて各国の特異点のどれかくらいっしょ」
「そうだよね………………ん?」
「ん?」
「ん?」
「ん?」
やっぱり1人多い。
さっきから会話に入ってきている奴がいる。
全員背筋をゾクリとさせた。
これはいわゆる、心霊案件なのでは?
「わっ、わっ、お化けかーッッ!!」
「おいおいおい!! この世界にも幽霊って概念があるのか!?」
「おいマジか!! おいマジか!?」
混沌とする現場。
この現場を収めたのは、やはりその“お化け”だった。
「うるっさいなー………ちょっとくらい静かにしなよー。ミーは騒がしいの嫌いなんですけどー」
一瞬静かになった。
そして、これの主を探す。
流はその喋り方に少し反応を示していた。
(なんだこの軽い口調は!?)
「はいみんな遺体にちゅうもーく」
全員で遺体を凝視した。
そこには、手のひらサイズの人がいた。
「やっと見たね。やれやれだわー」
黒髪のツインテールをブルブルと振り回す小人。
子供っぽい顔つきだ。
「えっと、君は………?」
「君とは随分ぶれーものじゃんかー。ま、ミーは別にいいんだけど。とりま挨拶しちゃいますか」
小人はそれっぽいポーズをとってこう言った。
「我は万物の生命を司りし神——————命の神………なんつって。先代だけどねー」
「「「………………はぁ!?」」」
そういってしばらく、ウルク達はフリーズしていた。
ここでようやく、 ケン達が地上でリンフィアと合流する時間と繋がるのだが、そんな事はウルク達は全然知った事ではなかった。
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「アニキッ!! 無事だったんすね!! 俺様もう心配で心配で………ゴハァアアッ!!!」
「俺は今のお前の方が心配だ」
吐血しながら再会を喜ぶガリウスに若干の引きつつ治療をする。
ていうか、コイツよく無事だったな。
まぁ、念のためにお守り仕込んでたが、使われてなさそうなのは良かった。
「無事だったかリフィ」
「はい! ありがとうございました。あれがなかったら多分死んじゃってましたので」
「だろうな。お前ら2人がいて取り逃がすって事は、相当だったんだろ」
正直、信じられないくらいだ。
俺たちの国の転移者とルナラージャの転移者でこうも違うとは。
「それで、ケンくん。一つ相談なんですけど………」
「バリアはともかく“覚醒弾”はしばらくなしだ」
覚醒弾。
リンフィアに封じられている魔力を一時的にほんの一部を解除させるために作った魔法弾。
しかし、予想以上だった。
あれは、まだ数%も出力を出していないのだ。
いくつか解除した俺と比べてもイイ線行くだろう。
正直、多用は危険過ぎる。
「むぅ、やっぱりダメですか」
「言っとくが、あれは反則みたいなもんだ。覚醒半魔とはわけが違うんだぞ?」
それにしても………
周りを見渡すが、あの状態のリンフィアを見たにも関わらず、差別的な目で見てるものはいない。
珍しい事だが、素直に嬉しく思う。
「お前………入ったのがこの隊でよかったな」
「はい!」




