第356話
「姉貴ッッッ!!!」
流が目を覚ました。
周りを見渡し、自分が気絶していた事に気がつく。
「………………ちくしょう」
ダグラスは、ルーティンが先程叫んだ声で、目が覚めた事に気がついた。
「やっと起きたか、イケメンボウズ。調子の方はどうだ? 」
「………姉貴は?」
「帰った。とんでもねぇ強さだぞ、ありゃ」
舌打ちを打つ流。
先程守ると決めた奴が目の前に現れたのに、みすみす逃してしまった。
「んで、ありゃなんだ? 何故あそこまで寄せられる? 固有スキルってやつか?」
「!! アンタ知っているのか?」
「ああ、やっぱりそうか。で、 どんな能力なんだ?」
流は一瞬いうのを渋った。
しかし、ここまで来て言わないのは失礼だと思ったのだ。
「それじゃあ、今から話す」
流は改まって向き直った。
そして、留華の能力について語る。
「………【十色】っていう能力だ。俺たちの国の言葉で、十人十色って言葉があるんだ。多分そこから来てるんだよ。人によって、性格や考え方が違うって意味だ。姉貴の能力は、人の顔や能力、記憶をコピーすると言う能力。本体よりは劣るが、ある程度なら再現できる。人によって違う筈のものを、1人で担っているが故に、“十色”。十人ではないからね」
「なるほど………だから、俺のことを知っていたのか」
「完璧に理解しているわけではないよ。たまに穴がある。ヒジリ ケンにはそこを突かれたんだろうね」
流はギリっと、奥歯を噛み締めた。
先程の姉の行動は、やはりおかしいと考えているのだ。
流は、留華が操られたのは自分が逃げ出したからだと推察する。
「くそッ………あの時、俺が逃げていなければ………一緒に居られれば………」
今更ながら後悔の念がどんどん湧いてくる。
情けないと自覚するが、止められない。
すると、
「………あー、お前さんの姉ちゃん、親玉の言いなりなんだろ?」
突然、そう尋ねられた。
それに対して、頷いて返答する。
「そうか………だったら、お前さんの判断はやっぱり正しかったぜ」
ダグラスはそう言った。
正しかったと断言した。
「知ったような事を………」
「逃げてなけりゃ、お前も操り人形だ」
「!!」
ハッとする流。
確かに、その通りかもしれない。
逃げ出していなければ、自分なんぞ簡単に操られていただろう。
そう思うが、それでも納得できない流。
「そして、逃げたからこそ、お前は正気を保ったまま、姉ちゃんを助けに行ける」
「——————」
流はダグラスと目を見合わせた。
ニカッと笑うダグラス。
「恐ろしいもんだよな、偶然ってのは。良いことも悪いことも起こりうる。しかし喜べ、ボウズ。お前さんが引いたのは、正真正銘の大当たりなんだからな」
確かにそうだ。
これは、姉や幼馴染、クラスメイトを救う唯一のルート。
ならば、
「ダグラスさん、だったか?」
「おう」
「ありがとう、ダグラスさん」
ならば、俺は自分が出来ることをするのみだ。
流は、この事を心に刻みつけた。
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「そっか、私の居ない間にそんな事があったんだ」
「ああ」
「大変だったね、ナガレくん。だいじょーぶだよ。ルカもハナエもきっと助けられるよー。何たってこの国にはケンくんがいるもんね」
「………」
流は黙った。
一応、ちゃんと理由はある。
「………どうしたの、ナガレくん」
ウルクは心配そうに流に声をかけた。
おそらく、先程の戦闘で負った傷が痛むと思っているのだろう。
違う。
傷は負ってないし、そもそもそこじゃない。
そう、そこじゃない。
そう思っている流だが、ツッコもうか迷った。
そして、あえてツッコむことにした
「あのさ………一度その隙間から出て話そうよ」
間抜けな格好をしたウルクは、 しばし考えた。
そして、眼をカッと開き、こう言った。
「確かに………!!」
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ウルクは考えた。
この状況をそうするべきか。
色々予想外だ。
しかし、目的を放棄するわけにもいかないウルクは、こうすることにした。
「じゃ、 進もーか」
「本当に大丈夫なのか?」
「そうだぜ、嬢ちゃん。一回戻って休んでから来た方がいいじゃないのか?」
「ダメだよー。だって、場所はだいたいバレちゃたんだもん。このまま進んで回収しないと大変な事になるよー」
ずんずん進んでいくウルク。
ダグラスたちは、そもそも何を探しているかわからなかった。
「嬢ちゃんは一体何を探してんだ?」
ダグラスはそう尋ねた。
ウルクは悩む。
ダグラスは、ファリスがわざわざ用意した護衛。
流は、向こうとは完全に敵対した異世界人
「………よし、言っちゃおっかな………私が探しているのはねー」
そして、 ダグラスと流は、予想だにしない言葉に、呆然とさせられるのだった。
「先代、 命の神の遺体だよ」




