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第349話



 通信を切って数分。

 ミレアを落ち着けるためにしばらく地下にいた。

 そんな時だった。




 ズ………………ッッ!!




 俺は思わず飛び上がって魔力を感じた方を向いた。


 「!! 使ったか………!」



 リンフィアに渡した特殊術式の物理・魔法障壁を込めた魔法弾。

 それと、万が一のために調べておいた()()()を使うための弾丸。


 アレはこの俺をもってしても完全に解読出来ていない。

 解読に必要なのは、知識ではなく思考回路だ。

 “情報”ではなく、“筋道”が重要。

 つまり、解読できていないという事は、まだ神の知恵の能力を完全に自分のものに出来ていない証拠だ。

 しかし、逆に言えばいくらか馴染んできたが故にあそこまで解読できたとも言える。

 


 いや、そんな場合ではない。

 ここから3分は余裕で間に合う。

 しかし、ウルクがいるという理由から、ここを下手に崩すわけにもいかないので、トップスピードで行くことは出来ない。

 こうなる事を予想して可能な限り大人しく戦ってはいたが、流石に無傷というわけにもいかないらしい。


 とにかく急がねば。

 まだピークは来ていないが、予定より早く外に出る事になりそうだ。


 「それじゃあ、行くぞ。()()()


 それにしても、と俺は思った。

 アレを使ったらどうなるのか。

 いや、リンフィアはどう思うのかが、少し気がかりだった。











———————————————————————————












 「じ、自分を撃った………?」


 ユノは驚いた表情でリンフィアを見ていた。

 リンフィアは撃った態勢から全く動かない。



 「ま、ありえない話でもないじゃん? バリアはいつか消えるし、そうなればどの道誘拐できる。それを考えて自殺したんならしょうがないじゃんね」


 ユノはやれやれとかぶりを振った。


 「ったく、失敗しちゃったじゃん。はぁ〜あ………」







 ドクン







 心臓の音が聞こえる。

 これは、自分の心臓の鼓動だと、リンフィアは気がつく。

 感覚が鋭くなる。

 これは覚醒半魔だろうか。

 いや、これは違う。

 リンフィアはそう確信する。

 覚醒半魔は、一種の“進化”だ。

 次のステージに進むための手段。


 だが、これは根本的にモノが違う。

 鍵を開けたような、封じていた何かが這い出てくるような妙な感覚を全身で感じていた。






—————————





 

 ゾッッッ………!!



 「!?」


 ユノは、突如感じた奇妙な感覚に、抽象的な恐怖を感じた。

 わからない。

 それはとても恐ろしい事だ。

 無知の恐怖は、人が想像するよりはるかにおそろしいことだという事を、神を目にした彼はよく知っている。


 「なんだこの寒気は………!?」


 強さ自体、ユノを大幅に超える強さになったわけではない。

 だが、それでも別人の如く変質したその強さに、驚きを隠せないユノだ。






—————————






 「う、そ………こっ、この、魔力は………………」



 ニールの手がかすかに震える。

 リンフィアの変質した魔力に驚いているらしい。

 しかし、驚いているのは、変わった事、それ自体ではない。

 リンフィアから今放たれている魔力は、ニールが………いや、魔族なら誰しもがよく知っている魔力。

 かつて彼らが王と崇め、忠誠を捧げた絶対者。

 紛れも無い。

 あの魔力は、



 「まッ、魔王様………………!!」

 







—————————







 恐ろしい力を感じた。


 未知なる知識を解した。


 湧き上がる自信に驚いた。




 そして——————懐かしい記憶を思い出した。

 


 これは、今の自分には分不相応な力だ。

 でも、理解はできる。

 この力を使って、この状況を変えられると自然と思える。

 だってこれは、父から受け継いだ(モノ)なのだから。




 「………父が何故この力を封じたかったのかはわかりません。これは使ってはいけないものなのかもしれません。それでも、私は戒めを解いて戦いますッッ!!」





 リンフィアは、その姿をあらわす。


 皆、息を呑んだ。


 

 ——————曰く、魔王とは邪悪の根源である。

  闇より暗い漆黒の翼を持ち、紅く光る瞳は魔に通ずる全てを見透し、鋭いツノと牙は万物を引き裂く。

 魔の者を統べ、悪意を喰らい、人を滅ぼす災厄である。




 伝承の魔王の姿を投影したその姿は、確かに伝承通りの圧を感じた。

 しかし、この場にいる誰もが思っていること。

 それは、リンフィアからは、“悪”を感じないと言う事。

 姿こそ禍々しくとも、根底にある物をしっかりと理解している。

 彼女は、人に仇為す者では無いと、理解している。

 

 


 「魔王降臨かよ。ハッ、少しはマシになったじゃん? でも、マシなだけだ。俺に勝てると思っているのか?」


 「いいえ、私じゃ及ばないです。でも、みんなを護る力はあるつもりです」


 「そうかよ。じゃ、噂の魔王様の力、見せておうじゃんかッッ!!!」



 

 最終決戦が、始まる。

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