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第347話


 「セァアッッ!!!」


 ニールは近めの間合いで脇腹を狙って剣を振る。

 ユノは、かなり余裕を持った様子でそれを防ぎ、剣を弾くと同時に回転しつつ袈裟斬りにしようとした。

 ニールもそれを防ぎ、再び攻撃を繰り出す。


 

 「なるほど、剣の腕前では全然及ばねぇな」


 「クソッ、防がれる………」


 

 「こっちばっかり気にしてたら戦えねぇぞ?」



 「!」


 後方から強烈な蹴りが飛ぶ。

 ニールは足を振り上げて逆立ちの状態になりながら後ろに飛んで、真上からドラゴヒューマの首を狙う。

 すると、ドラゴヒューマは羽を生やし、 首元をガード。

 ニールは小さく舌打ちをすると、羽を支点に飛んで少し距離を置いた。



 「2人がかりだときついか………だったら………」

 

 ニールはガリウスたちの方を向かずにガリウスに話しかけた。



 「おい、協力しろ!! こいつには束になってかからねば勝てないぞ!! ぉお、っと………っ!!」



 ドラゴヒューマが再び突っ込んできた。爪による攻撃に対して剣で応戦する。

 


 「チッ………ンなこたァわかってるよ!!」


 ガリウスは拳の武器に魔力を貯め、ニールの元へ向かう。

 しかし、


 「お前はリタイアじゃん?」


 「な、にッッ………!? ぐ!! ォおァア………………!!!」


 咄嗟に手でガードするが、受け切れずに腹に思いっきり入った。

 ユノは逆の手で短剣を持って構える。


 「はーい一名死亡おつかれさまでーす」




 ヒュォオッッ!!!




 「!!」


 ユノは視界の端に見えた弾丸を紙一重でかわした。


 「くっ………やっぱり避けますか」


 「拳銃………さっきから見てっけど、なかなかエゲツない武器持ってんじゃん。オーバーテクノロジーだぜ、それ」


 拳銃を知っている。

 リンフィアはその事である事実に気がついた。


 「その口ぶり………あなたも転移した人なんですね」


 「! ………あー、マズったわー………いや、これは俺の落ち度だな。俺も連中のこと馬鹿に出来ねーわ」


 失敗失敗と言いながら頭をかく。


 やはり転移した人間だった。

 つまり、勇者なのだろうか?

 人を守るための役割を負っている人間が何故こんな事を、と疑問に思った。

 しかし、リンフィアにはこのことに関しての情報が少な過ぎて、これ以上考えることはできなかった。


 「もうこの際あれだし、俺たちの目的も話してやるよ」


 「!?」


 どういうことだろうか。

 リンフィアには今の言葉の意味が理解できていなかった。

 彼らの目的は、この街の侵略だとばかり思っていたからだ。


 「どういう………」


 「俺たちは——————」


 ユノが何かを言おうとした直後、リンフィア達の横を、大きな塊が横切った。

 そして、



 ドゴォオオン!!!!



 大きな音を立てながら地面に激突した。


 「!」


 「お?」


 飛んできた方角を見ると、ニールが剣を持って立っていた。


 「あまり舐めるなよ。ドラゴヒューマは万能だが、弱点がないわけではない。あんなので私を倒せるなんてゆめゆめ思わないことだ」


 「ニール!!」


 「チッ、予想より強いじゃん。覚醒なしでこの強さとか………でもまぁ………」


 「!!」


 キィィィン!! と刃を交えた音が鳴り響いた。

 

 「2対1なら勝てるか?」


 「何!?」


 さっき飛ばしたはずのドラゴヒューマがニールに向かって飛び出してきた。

 ガードをしようと片方の剣を防御から外して攻撃しようとするが、すぐに追撃された。


 「言っとくが、飛んだところで無駄だ」


 「厄介な………!!」


 仕方ない。

 一度食らうしかない。


 しかし、



 「ォオオオオオオオ!!!」


 「ギ?」


 ドンッ!! という音と共に、ドラゴヒューマが少し横に吹き飛ばされた。


 「違うな」


 突進したのは隊長だった。

 そして、加勢するのは隊長だけではない。


 「2対1ではなく」


 「4対1です」


 リンフィアとウォルスが武器を構えて立っていた。



 「うぉ、ル、………す………」


 ウォルスは瀕死のガリウスに一瞬注意を向けた。

 そして、回復すれば再び戦闘可能な事を確認する。


 「だから日頃から言っているだろう。ガリウス、お前はもう少し落ち着いて戦え。俺は彼女達に加勢する。回復したらすぐに参戦しろよ」

 

 「あ、たり前だ………ッッ!!!」



 フッと一瞬微笑むと、 すぐさま全神経を目の前にいる化け物に注いだ。



 「さて、俺の親友をあのようにしたツケは、払ってもらおう」


 「そうかい? じゃあやってみりゃいい。出来るもんならな」


 ユノは新たに武器を取り出した。

 巨大な斧だ。

 中央の石はどうやら魔法具らしい。


 「っと………やっぱ軽いじゃん。ま、そういう魔法具なんだけど。これが俺本来の武器。思考を読むことができる以上、最低限の動きをすれば重量級の武器でも戦えるって思ったんだけど、やっぱ軽い方が楽じゃん? こいつは体感じゃ直剣程度しかないんだよね。でも、」


 ユノは斧を振りかぶって思いっきり叩きつけた。




 ズドンッッッ!!!!




 およそ直剣程度の重さでは生まれないであろう威力だ。


 「そいつァ体感だけの話。与える影響は通常の重さのものだ。MP消費が激しいのは困りもんだけどな」


 ほぼ反則に近い。

 リンフィアはそう思った。

 しかし、勝てるとも思っている。


 (これだけ強い人達が一緒なんだ………勝てる。一対一では勝てなくても四人で束になれば、いくら強くても——————)













 それは、一言で表すなら絶望だ。

 期待をひっくり返して、どうにもならない状況を表に出す。

 これは、まさに今起きていることだった。



 「——————え?」


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