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第343話


 「ルナラージャ………特秘部隊?」



 菅沼 惑という男はそう名乗った。

 やはりルナラージャのやつか。



 「特秘っていう割には随分簡単に名乗るんだな」


 『名前は関係ないもんね。おれっち達の素性はそう簡単にわからないもんね。例え、特異点だったとしても』


 「!」


 俺が特異点だという事はすでに知れ渡っているらしい。

 全く、俺も随分と有名になったものだ。


 「お前らの目的は………………やはり暗殺か? いや、そこはあくまでも通過点か」


 『へぇ、わかるんだ。それはすごいもんね』


 「愚かな連中だ………お前らの神サマはあれについて何も教えてくれなかったのか?」


 魂属性は神の領域だ。

 いや、それは正確ではない。

 その神でさえ、魂を自在に操ることは出来ないのだから。

 神といっても便宜上のもの。

 彼らは一柱たりとも、おとぎ話のように全能ではない。



 『いいや、神はお教えくださったもんね。そして、その上で完成を志すように言ってきたんだもんね』


 「何………?」



 馬鹿な。

 いくら神の知恵のような知識と知恵を持っていない他の神だとしても、あれはもう詰んでいるということくらいわかる筈だ。



 「………何企んでやがる」


 『企み? それが違うもんね。命の神はおれっち達を導いてくださっているんだもんね』


 「破滅へ導いてるのか? だとしたら救いようのない愚者だ。いや、愚神か?」


 『………………図にのるなよ。確かにお前は特異点だから、おれっち達では勝てない。でも、命ちゃんは別だ。お前は彼女の足元にも及ばん』



 えらく信心深い奴だ。

 連中は皆こうなのか?

 それにしても、天崎か………確かに、特異点として気になる。


 特異点としての力、救済措置は人によって全く異なる。

 つまり、全ての例において、前例は存在しない。



 「最悪それはどうでもいいや。あんたらの国がどうなろうが俺には関係ねー。だが、こっちに降りかかる火の粉なら、一切合切の躊躇なく振り払わせて貰うぜ?」



 『君達の国の脆弱な勇者で僕らに勝てるとでも?』


 「どうだろうな? 勝てる見込みがあるやつは今んとこ数名か? はは」


 「ははは、何をほざきだすかと思えば、おれっち達は君らの戦力はだいたい把握してる。このあいだの戦いは覗かせて貰っていたからね」


 「成る程、やっぱり天崎のやつ探ってたのか」


 『っ………!』


 しまったという雰囲気がありありと見えるようだ。


 「こんなザルな連中にやられる? 冗談だろ? 無能なのは神だけじゃなくてテメェらもそうみたいだな、オイ」

 

 簡単に煽られてくれるな。

 やはりそうなるか。

 向こうからこちらに転移する人間は、確かにステータス値が高い。

 だが、早熟ゆえに、経験や知恵は浅く、ベテランとの戦いでは拙さが露呈する。

 心構えがなっていない。

 ようやく人を殺せるようになった。

 それだけだ。


 ………まぁ、その点で言えば俺はとやかく言うことは出来ない。



 『………やはり、これだから異教徒は癇に障るね』


 別に信仰してないと言うツッコミは面倒だから省く。

 こいつにばかり構ってもいられない。

 ()()()が来ていないからな。


 俺が今、気にかけるべきは——————














———————————————————————————















 竜の咆哮は地を焼き、凶暴な爪や牙は大地を斬り裂く。

 しかし、騎士団はそれに屈せず、竜の攻撃を防いでいた。


 「全体! 防御体制!! 絶対に突破されるな!! 何としても()()()()!!」



 騎士団らしからぬ、と誰もが思った。

 現在の指揮は大騎士長が直々に執っている。

 彼は完全主義といってもいい程、勝利にこだわりを持つ。


 完膚なき勝利


 常にこれを意識し、時には無茶な命令も下される。

 だが、優秀なものの無茶は決して無駄のない無茶だ。

 そして、 無茶をする以上、それにかなうだけの利益がある。


 故に、一番危険であり、一番生き残れる指揮なのだ。


 


 その大騎士長が、防御の専念を命じていることに、少なくとも騎士団の者達は戸惑いを感じていた。



 「恐れながら大騎士長。なぜ守りに専念されるのですか? いくら盾が強くとも、刃を持たねば勝てません」


 側近の騎士がそう尋ねた。

 それに対し、スカルバードはこう言った。


 「確かに、 そう思うのも無理はない。だが、私が今まであの目標以外を掲げて戦ったことがあるか?」


 スカルバードの信条。

 この策は、まさにそれを体現できうる策。

 彼は、あの少年の言葉を信頼したのだ。

 

 つまり、彼の掲げるものは今も変わらない。


 「無論、完膚なきまでに勝つためだ」

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