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第336話


 「随分大所帯になっておるな………」


 「すみません、隊長さん。ご迷惑なら私は抜けますけど………」


 リンフィアは申し訳なさそうにそう言った。

 チラッとニールを見たが、出て行ったらついて来そうな様子だ。


 「もちろん、貴女が抜けるのなら私はついて行きますとも!」


 ニールは胸を張ってそう言った。

 そういう事でもないんだけどなぁ、と思うリンフィア。


 「どうしますか?」


 「いや、問題ない。お前達がわざわざ抜ける必要はないだろう。それにこの状況だ。下手にバラけるより、集まって対処した方が効率がいい」


 なるほど、と相槌を打つリンフィア。

 

 「ただ、連携は生徒同士でやってくれた方が助かる。一緒に行動し且つ、違う行動を纏って行うのだ。そちらの方が生存率が高い」


 隊長はそういった。

 すると、


 「生存率? 意外な言葉だな、オイ。騎士ってのは命を賭していや、命を捨てて戦うのが信条みたいな連中だって俺様は思ってたけどな」


 ガリウスがそう言った。

 どこか棘のある言い方だった。

 だが、嫌味や皮肉とった感じではない。

 どこか、何か含みのあるのには変わりないが。



 「それは違うぞ少年よ。ふむ………武器の家紋から見てお主はガルディウス家の者だな」


 「………だったらなんだよおっさん」


 「お前の父はそういう方針だろう。ガルディウス殿の軍はそれはもう鬼神の如く敵をなぎ倒す百戦錬磨の戦士が集う、魔法騎士団の中でも特に凄まじい軍だ。しかし、私の部隊は何よりも命を優先する。勝利を収めるより、敗北しない事に重きをおく。私にとっての敗北とは、部下達の死だ。故に、私は命を優先する」


 軍隊の考えとしては甘い考えだろう。

 兵士とは、戦うものであり、戦いとは命を消費するものの事だ。

 削りに言ったものを保とうとするこの矛盾。

 周りの騎士はさぞ嗤うことだろう。


 しかし、そう言った矛盾も抱えて成り立つ事が出来ているこの隊を、リンフィアは素直に凄いと思えた。

 


 「ケッ、甘い考えだぜ」


 「他の者に言われるならまだしも、ガルディウスの家の者に言われると、重みが違ってくるな………うむ、いわば相対する思想の元で戦う者同士だ。理解しろとは言わん。だが、一時的にも加わるのであれば、納得はしてもらおう。先ほどいった部下には、今のお前も含まれているのだぞ」


 噛み付く、と皆思った。

 ウォルスさえ思った。

 だが、


 「そうかよ」


 と、だけ言ってあとはおとなしくしていた。

 だが、振り返った表情を見ると、少しばかり浮かない様子だったのを、ウォルスだけ気がついた。

 


 「………甘い考えを許されるんだったら、俺様はこんな場所にいねぇよ………」













———————————————————————————














 あれから数十分後、リンフィア達の元に、伝令が入った。



 「伝令が来た。我々“見回り”は本部と各町村の守護に半々に分かれているようだ。我々はと言うと、本部に戻って大騎士長と共に応戦する事になった」


 「ドラゴン………」


 リンフィアはそう呟くと、苦々しい顔をした。

 それに気がついたコロネが声をかける。


 「リンフィアちゃん、顔、浮かない、どうしたの?」


 「コロネちゃん………ううん、少し緊張してるだけです。頑張って生き残りましょう!」


 「………うん、生き残る」



 そう、ここはもう合宿場に非ず。

 一帯は戦場と化し、常に血が流れている。

 ここで起きておるのはまぎれもない殺し合いだ。

 気を引き締めなければ足元をすくわれれしまう。




 「すみません!」



 伝令役の少年が大声で叫んだ。

 少し焦っている様子だ。


 「うむ、どうした?」


 「追加情報です! メ、メルウェイ隊が壊滅しました!」


 「なんだと!?」


 隊長は信じられないといった様子で少年を見た。


 「本当なのか!!」


 「残念ながら………本当です」


 指揮官クラスのメンバーがまとめてやられたと言う。

 生徒の被害はないらしい。

 壊滅といっても、死人はほぼ出ていない。


 だが、戦況は変わる。

 回復魔法を使う者がいても、治療には時間がかかる。

 この世界のHPという概念はかなり曖昧だ。

 数値化してはいるが曖昧。

 MAXになっても、疲労というステータス異常によって、ステータス低下が起きる。

 これの除去はかなり難しい上に、それも多少の時間がかかる。


 だから、一刻も早く招集しなければならない。

 



 「………ありがとう、すぐに向かう。お前、名前だけ教えておいてくれ。この辺りの伝令ならまた会うこともあるだろう」


 「確かに、そうですね。じゃあ名乗っておきます」



 

 リンフィアは気がついていない。

 地下での出来事を全然知らないのだ。

 だから、この名前を聞いてもパッとは出て来ない。




 「ユノです」



 それは、もう1人の異世界人の名前であり、裏切り者の名前であることを誰も気がつかなかった。

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