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第335話


 急げ。

 こんな状況だ。

 リンフィア様の身を守る為に全力で駆けつけなければ、命の保証がない。


 「チッ………盗賊どもめ。ヤケを起こしたか………ドラゴンで集団攻撃とは厄介な。それに、見たところ先程戦ったような下級竜種ではなく、上位の竜も多々いるな………」


 戦力を隠していたという事だ。

 だが、何故か盗賊達に余裕がない。

 思い当たるのは、ケンが何かをしたという事くらいだ。

 しかし、ニールはケンが何をしたのかはよく知らない。


 「いや………そんな事はどうだっていい」


 自分はただ急ぐだけだと、余計な思考を消し去って、急ごうとした次の瞬間。


 「………」



 「!?」




 奥から声が聞こえた。

 向こうもニールに勘付いたらしく、動きをピタリと止めている。

 すると、






 「っ!!! この魔力は………!」



 肌が焼けつくような空気を感じた。

 殺気や気配の感じでは戦い慣れているわけではなさそうだが、魔力が異常に高い。

 それに、反応は2人だ。

 場合によっては、これは手を焼きそうだ。

 


 「だが………急がなければ!」


 ニールは双剣を抜いて一気に距離を詰めることにした。

 回避する余裕は残しつつ、攻撃を仕掛ける。

 先手必勝。

 可能であれば、ここでまず1人は倒す。


 「フ、ゥ………ッッ!!!」


 双剣による横薙ぎの一撃を相手に仕掛ける寸前、向こうから魔力を感じた。

 なるほど、向こうもすぐに攻撃をしてくる気か。

 だが、ニールの方が一歩先だ。





 「貰っ——————」


 「喰ら——————」





 双方攻撃がピタリと止む。

 2人はまじまじとお互いの制服を確認した。


 「お前達は………!」


 ニールはこの男達を知っている。

 片方は、ニールもよく知る男、ヒジリ・ケンがよく一緒にいるところを見る。

 もう片方はたまにだがみる機会がある。


 確か名前は、


 「ガリウス・ガルディウスとウォルス・カーネラスか?」



 「アンタは………たまにアニキといる女………!」


 「戦闘科の編入生の………確か名前はニール」


 とりあえず、お互いに武器を下ろした。

 数秒沈黙が流れるが、特に話すこともないので、ニールはこう切り出した。



 「盗賊じゃないなら、私はもう行く」


 と言って、先へ進んだ。

 ガリウスたちも特に止めるつもりはない。


 だが、ガリウスの脳内でとある思考がよぎった。




 (確かに盗賊じゃねーなら関係………待てよ? こいつ、アニキの知り合いか。アニキはここにきて日が浅いから、親しく話すやつは少ない。だが、この女とは親しそうだった。つまり、関係者? ということは、この女についていけば………!!)



 「ウォルス!!」


 ガリウスはクルッと振り向いて友人の名を叫んだ。

 当のウォルスはキョトンとしている。


 「なんだ急に」


 ガリウスは特にこれといった説明もなく、ただ一言、


 「追うぞ!」


 と言って、ガリウスはニールを見失うまいとして先に駆け出した。

 なんの説明も受けていないウォルスだが、そこは慣れたもので一瞬で反応してついて行った。

 ウォルスはため息をフッとついて走り出した。


 「やれやれ……」










———————————————————————————












 「と言うわけで、余計な連中を連れてきてしまったのですが………」


 ニールはリンフィアとガリウス達を交互にチラチラと見た。


 「アンタ達、アニキの知り合いだよな?」


 「アニキ………?」


 ニールが首をかしげている。

 (こいつの兄だろうか。だが、似たようなやつは知らない)


 意味が食い違っているようだ。

 するとリンフィアが、

 

 「あ! ケンくんのお友達ですか? 一緒にいるところを見たことがあります!」


 パンと手を叩いてそう言った。

 そうだ、たまにケンと一緒に抜けている人だ。

 


 「友達じゃねぇ。俺様はケンアニキの舎弟一号だ。一号ってとこは重要だからな」


 (しゃてい?)


 聞き慣れない言葉だった。


 「? お友達ですよね?」


 舎弟ということばを今日日聞かないリンフィアは首を傾げた。


 「………こうなりゃもうこの際なんでもいい。アンタらアニキの居場所わかるか?」


 「いえ、わかりません。ケンくんのことなので無事だとは思いますが………」


 「チッ………ンだよ使えねー」



 これはいけなかった。



 ヂッッッ………!!!



 「!!!」



 気に障ったニールがガリウスに向けて明確な敵意をぶつけた。



 「………ハッ」


 殺気に当てられたガリウスが額に汗をかいて、微かに震えている様を見たニールはガリウスを鼻で笑った。

 馬鹿にされたと気がつき、カッとなったガリウスがニールに向かおうとした。


 「待てガリウス………」


 「離せよウォルス!! 舐められっぱなしは性に合わねンだよォ!!」


 「断言する。お前では勝てん。模擬戦でお前を完膚無きまでに叩き潰したレイを相手に引き分けているような女だぞ?」


 「〜〜〜〜〜〜!!! クソが!!」


 ガリウスはパッと手を振りほどいてそっぽを向いた。

 ニールは再び鼻を鳴らしてやはりこちらもそっぽを向いた。


 

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