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第329話


 「ミレア、ちょっと来いよ」


 奥の方からミレアが歩いてくる。


 「話は終わったのですか?」


 「ああ。こいつは盗賊側じゃ無い。だが、敵の内情を知っている貴重な情報源だ………って、何してる?」


 ミレアは距離を取っていた。


 「いや、その………」


 そういえば、ルーティンの時も距離を取っていた。

 確か、


 「お前、男の中でもイケメン苦手だったな」


 「学院内のどうしようもない状況ならまだしも、この現状で耐える意味もないのではっきり申し上げますが、苦手です」


 「はは、顔の整っている男は狼だって、おじいちゃん、に言われたんだっけか?」


 「おじっ………ええ祖父からはそう言われています」


 こいつそれでバレてないと思っているのだろうか。

 意外とアホだな。


 「アンタ“あの”会長と会話できるのか?」


 「あ? ああ」


 「驚いたな………副会長以外に嫌悪感を出さずに会話する相手がいるとは………」


 「………お前、こいつも口説こうとしたのか?」


 なんて節操の無さだ。

 同じモテ男でも蓮とは全然違うタイプだな。


 「いや、口説けていない。というかそもそも口説いていない。近づいただけであれ程嫌な顔をされれば口説く気も失せると言うものだ。最初から手を出す気も失せてしまったよ。初めてのケースだ」


 確かに、嫌悪感丸出しでこっちにくるなオーラ全開にされれば口説く気も失せるというものだ。

 

 「しかし、そう考えると不思議な話だね」


 流はそう言った。


 「何がだ?」


 「いや、アンタは目つきは頗る悪いが」


 唐突に失礼だな、オイ。


 「顔はいい方じゃないか? 顔の整った奴の多い貴族だらけの学院の中でも結構ランクが上の方だぞ」


 「ほー、そうなのか」


 意識したことはなかった。

 いや、意識するのは結構キモいな。


 「彼はいくらか平気です。多分一切下心というものがないからでしょう」


 「何だって? こんな美少女相手にか? 正気じゃないね、アンタ。死んでるのか?」


 「お前突然失礼になったな。まぁ、下心は無い。というか、よくわからん。俺はいくつかの感情の欠落がある自覚はあるが、そう言った感情もその一つなんだろ」


 流は顎に手を当て、考えるようなポーズをとった。

 おそらく、納得はしたのだろう。

 感情の欠落。


 さっき俺が盗賊を殺した時におかしいだなんだと騒いでいた。

 そのせいなのだろう。



 「………ふむ、俺はアンタが嫌いかもしれないな」


 「なんだ藪から棒に」


 「アンタは俺が落とせなかった女を二人も落としたんだ。それも何の苦労もなく」


 「わっ、私は別に落とされてなどいません!! 不愉快です!!」



 俺を見て言うなって。

 こいつが言ってんだよ。


 「はいはい、この話はもういいだろ。そろそろ次の行動について話させろ」


 「次?」


 そうだ。

 俺にはやらなければならない仕事がある。

 リンフィアを護りにいこうと思ったりしたが、ここは俺が出向く必要は無いと思う。

 暇を貰ったニールが行く場所は確実にリンフィアの周辺だ。

 予め、リンフィアが進む予定の経路は知っていると思う。

 奴は馬鹿だが、リンフィアの事になるときっちりとこなしてくれる。


 故に仕事とは別の事だ。


 「俺が今からする仕事ってのは——————」







 ドッゴォォォオオオオン!!!





 凄まじい音とともに地面が崩れ落ちる。


 「な………何が………!?」


 「一体これは………!?」



 俺は思わず舌打ちを打つ。

 なかなか面倒な状況だ。


 「………地下の竜が起きた」


 「それって………」


 ミレア達は下を向いて身構えている。

 するとそこには、



 「ギィアアアアアアアッッ!!!」




 先ほどの竜より間違いなく上位種の紅い竜が迫ってきていた。

 だが、


 「いや——————」



 俺はすーっと魔力を流す。

 一瞬体に魔力を循環させ、魔力に体を慣らし、とある魔法を準備する。



 「——————こいつじゃない」




 消滅一級魔法 【滅ビノ鎮魂歌(レクイエム)





 俺の手から光の糸のようなものが現れる。

 それはゆらゆらと、俺の手の上で静かに揺られていた。


 「その魔法は………まさか!?」


 「何の冗談だ………無詠唱だぞ!?」


 消滅魔法は扱いがかなり難しい。

 仮に魔法の取得難易度を10段階とするならば、生活魔法が1、炎魔法は3、そしてこの消滅魔法は7から8と言ったところだ。


 しかし、難易度が高いとはいえ、使い勝手がいいとは言えない。

 この魔法は速度がかなり遅いのだ。

 俺が放っても変わらない。

 それが性質だからだ。

 重ねて、使用者は距離を取る必要がある。


 欠陥だらけの魔法だ。


 だが、それにも理由がある。



 「弾くから受け身取れよ!」



 俺は二人を風魔法で壁際に飛ばしてそのままドラゴンへ突っ込む。




 ドラゴンはとっくに大口を開けて俺を飲み込もうとしていた。

 俺はドラゴンに飲まれる直前、ドラゴンに魔法を放ち、ドラゴンを足場にして上に飛んだ。


 そして、



 「消えちまいな、デカブツ」





 ボッ!! と言う音が鳴る。

 ドラゴンはピタリと動きをやめた。

 そして、



 パキィィィィン………!




 氷が割れるような音とともに、小さな結晶となって消えてゆく。


 その結晶はまるで天に昇る魂のようにも見える。




 「よし、駆除成功」

 



 消滅魔法の速度が遅い理由。

 それは、触れたものを確実に消滅させるからである。



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