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第326話

 


 「………」


 手に残るあの感触。

 剣で人を刺すあの感触。

 いつかはしなければならなかった。

 それでも、不快だ。

 殺すと言うのはどこまでも、不快だ。




 「………うっ………ぷ!! おぇぅえええええええっっっ!!!!」




 ルクスが姿を現した。


 「………よォ、そんなところにいたのか」



 「ハァ、ハァ………お前、何でそんな簡単に人を殺せるんだ………? なぜ躊躇しない!? 日本にいたなら普通おかしいって思うだろ!?」



 何言ってんだ?

 こいつ。

 お前らがやったことに比べれば俺のやったことは全然普通だろう?

 だから当然、俺はこう答える。



 「………? 俺は何か間違っている事をしたか?」



 「っっ………アンタ、頭おかしいんじゃないのか?」





 そうすると、ルクスは姿を消した。

 逃げる気か?

 ………いや、



 「………!!」



 俺を囲うように魔法が飛んできた。

 野郎は俺を倒すつもりらしい。


 「上等だ」



 俺は魔法を全て蹴り落とした。



 「逃げなかっただけマシだ。倒すつもりはないが、手傷を負わせようとは思ってんだろ? 相手してやる。安心しろ、テメェは殺さねぇからよ」



 (………こいつ、見えない俺を相手に勝つつもりか?………舐められたものだ。いくら強くても、見えない敵を相手にして勝てない事を教えてやるよ)



 次の瞬間、目の前で待機していたドラゴンが忽然と消えた。

 盗賊の死体を見ると、指輪が一つ消えている。


 「この間壊した分を補充したわけか」



 すると、


 「ギャアアアアアアア!!!」


 「!」


 巨大な爪が突然現れ、俺を攻撃する。

 俺は体を翻して攻撃を避けた。

 すると、避けた先に炎の塊が現れる。


 「っと………」

 

 俺は同じ魔法をぶつけて相殺する。

 そして爆発する瞬間、別の魔法が投げ込まれた。

 水魔法だ。

 弱い水魔法は一瞬で高温の水蒸気に変わり、目の前に広がった。


 「チッ………」


 なるほど、様々な角度から攻撃して俺を誘導するつもりか。

 おそらくトラップがある。

 だが、攻撃してくる位置から大体の場所が予想できた。

 

 だからまずは、



 「水蒸気が邪魔だな………………フ、ッッ!!!」



 俺は魔法で水蒸気を凍らせて後ろから来ると予想していたドラゴンの手に猛スピードでぶつけた。



 「!?」



 攻撃されたドラゴンの姿が一瞬見えた。

 尻尾がおかしな方角を向いている。

 先を見ると、ルクスが尻尾を足に絡ませ、片手でもう一体のドラゴンをつかんでいる姿が見えた。

 もう一体は大口を開けてブレスを用意している。

 あそこに誘導するつもりだったのか。

 

 「くっ………………!」



 さっき俺が魔法を防げたのは威力が弱かったからだと思っているのだろうか。

 

 「馬鹿が」



 俺は敢えて、ドラゴンの口の真ん前まで飛んだ。


 「なっ………!」


 「やってみろよ」


 「舐めやがって………………!!!」



 ルクスはドラゴンを操ってブレスを放った。


 「ゴォォオアアアアアアアッッッ!!!!」



 炎の渦が俺に向かってくる。



 「ケン君!?」


 ミレアが俺を助けようと水魔法を放とうとした。

 だが、ミレアは魔法を止める。


 ブレスを食らった俺はそのまま地面に落ちていく。

 ルクスは微妙な表情で俺を見ていた。

 

 「安心しろ、テメェは誰も殺してねぇさ」



 「何!?」



 俺は風魔法で留めていたドラゴンの炎を一気に四散させた。



 「………………………!!!」


 ルクスは口をパクパクさせている。

 ようやく悟ったらしい。

 自分では何もできない、と。

 

 するとルクスはドラゴンを捨て、逃げるように姿を消した。

 ドラゴンは操られたまま、俺に向かってくる。




 「いい加減くだばれ。トカゲども」



 飛ぶ。

 剣を抜き、すれ違いざまに首筋に一閃。


 カキン、と鞘に収まる音がする頃には、ドラゴンは魔石に変わっていた。



 「………」



 さて、残るはあいつだけだ。



 「………………ケン君、逃がすのですか?」


 やっと口を開いたミレアがそう尋ねてきた。

 逃がす気は無い。

 ではどうするか。

 簡単な話だ。

 あぶり出せばいい。



 「ただ消えるだけだよな………」



 当然俺にも奴の姿は見えない。

 神の知恵があっても、奴の姿を見えるようにする方法は見つからない。

 いや、そもそも存在しない。


 固有スキルは魔法とは違う。

 その更に数段上の次元にある、ある種の現象だ。

 神から直接もらっているだけのことはある。



 だが、穴がないわけではない。

 何故なら、使っているのは所詮人間なのだから。




 「ミレア」


 「!」



 俺は一瞬で魔力を貯めた。

 そして、魔法を放つ準備をする。



 「死にたくなけりゃ、そこから一切動くな」






 姿が消え、気配も消え、魔力も感じられない。


 ただ、それだけだ。

 奴はいる。

 存在は消せないし、透過させられない。

 だったら、



 「片っ端から探ってくだけだ」




 俺を中心に、無数の炎球が出現する。

 その数、100個



 炎三級魔法【フレイムキャノン】


 「逃げ切れるか?」



 一気にそれらを放ち、魔力を操作してどんどん加速させていく。

 100もの炎球が、洞窟内を駆け回っていく。


 そして。




 ブォオオオッッ!!!!




 爆風。

 衝撃で固有スキルを解いたルクスが現れる。



 「ご………ァッ………!!!」



 ルクスは膝をついて俺の方を見た。

 目の奥には少しの対抗心のようなものがある。


 さて、どうするか。


 俺はルクスに近づいてこう言った。

 


 「ほら、あと99個もあるんだぜ?」


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