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第317話


 「リンフィア、助かった。礼を言おう。あのまま全員死ぬところだった」


 「いえ、私は大したことはしていませんから。皆さんならあれくらい対処していたでしょ?」


 騎士達は苦笑する。

 この部隊には、そこまで強い騎士はいない。

 装備も加味してだが、現時点で最強はリンフィアだ。


 「それにしても、その武器はなんなのだ? 飛び道具………弓にしては小さい上に弦も無いが………」


 「ああ、これは銃っていう武器です。まぁ、貰い物なので細かいことはわかりませんが、鉄の塊や魔法を高速で打ち出すんです」


 興味を示している。

 カプラやコロネも初めてみる魔法武具をまじまじと見て観察していた。


 「むむむむぅ…………すっごい精密な組まれかたしてる………私じゃ無理、というか技術科の生徒でも難しいかもだ………」


 「凄い、強力。汎用性、高い!」


 特にコロネは興奮気味に言っていた。


 「むむ? ふと思ったけど、それ多分まだ発表されてない武器じゃないのか?」


 カプラがリンフィアにそう尋ねる。


 「はい、多分してないですね」


 「何故だ? 発表すれば、国から一生遊んで暮らせる金が貰えるぞ? 多分」


 「制作者の意向ですね。見せびらかしてもいいが、構造は流出させるなって言われてます。魔法の組み方には特に何もいってませんでした」


 大分端折って言ったが、ケンは以前リンフィアに、


 『どうして発表しないんですか?』


 と、同じ質問をされ、


 『なんつーか、この武器はこの世界の文化からすれば過剰性能に過ぎるとこがあンだよ。これがきっかけで文明に強い影響を与えて仕舞えば“上”の連中が何を言ってくるかわかんねーし、それは面倒だからな。なんにせよ、構造は伏せてろ。それともしお前が説明する羽目になったら、俺が今言った説明の中で伏せろってとこ以外は誰にも言うなよ』


 と言われたのだ。


 上の連中とやらのこととか、過剰性能がどうしたとかはよくわからなかったが、ケンが何かを隠そうとしていることは分かっている。


 これ以上問い詰められるのもアレなので、リンフィアは話をそらそうとした。


 「はい、これでおしまいです」


 とりあえず、先程助けた子供の様子を伺おうとした。


 「隊長さん、今助けた子は?」


 「っ………!」


 リンフィアはキョロキョロして気がつかなかったが、尋ねられた隊長の表情が微かに曇るところを、カプラとコロネ、そして他の騎士は見逃さなかった。


 「………向こうで治療している」


 フッと目線を向けて、その場所を見る。


 「あの木陰だ」


 「木陰………」


 リンフィアは向こうを見た。

 人影だ。

 医療系魔法を使う魔法騎士がそばにいる。


 「あっ、居ました! ありがとうございます!」


 リンフィアは子供の方へ向かった。

 隊長は少し悲しげな表情でリンフィアを見ている。

 何かに気がつき、ハッとしてまさかと思ったコロネが、恐る恐る隊長に尋ねた。


 「た、隊長さん、子供………………どうなった、です………?」


 隊長はしばらく何も言わずに押し黙った。

 周りの人は皆察した。


 「あの時点で………既にほとんど力尽きていた。一つ一つは致命傷になっていないが、あまりに傷が多すぎる。散々痛めつけられていたに違いない。痛ましいことだ………」


 隊長は強く瞼を閉じた。


 「さっき生きていたのは奇跡だ。あの子はあそこまでされて生きたいと願えたのは本当に凄い事なのだ………やはり生きたいと言う気力というのは凄まじいものなのだな。だが………」


 気力だけでは人は生きていけない。

 いくら生きたいと願っても、傷を負い、肉体が朽ちれば、心は居なくなる。




 そして、隊長が告げる。




 「………………我々は、遅かったのだ」







 

 リンフィアは、少年の遺体を抱きかかえる。

 先程まで浮かべていた、苦悶と絶望が消え、優しく穏やかな表情をしている。

 だが、動かない。

 


 そして、リンフィアは静かに泣いた。


 


 

 間に合わなかった。

 助けて、って言われたのに。

 私が、あの子にそう求められたのに。

 救えなかった。



 私は、救えなかったのだ——————



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