第313話
「出撃!」
部隊がどんどん出撃している。
優先順位の高い役割の部隊からどんどん出撃させているのだ。
ちなみに、ルートは俺がこっそりスカルバードに伝えている只々最短のルートだ。
どのみち敵が出ればいずれは片付けなければならないので、エンカウント率が低いという選択肢は消してある。
「次の部隊、急げッ!!」
当然ながら、この部隊には生徒が編入されている。
彼らは役割によって配属を分けられている。
学院側の合宿参加者は、それぞれの科の下等、上等、特等クラスの第三学年の中で、先日の殺気に耐える試験に合格した者達。
下等は基本的に支援や雑用。
もちろん、戦闘をする可能性はあるが、そこまで高くはない。
先程出発したのは彼らとそれなりに強い騎士を編入した部隊だ。
諸所の街を守護する為に散っている。
支援というのはこの部隊の騎士の支援だ。
次に、上等と下等の戦闘科はパトロールをする部隊に編入されている。
これはそれなりに戦う頻度が高いと思う
リンフィアはここに入っているようだ。
残ったのは特科と戦闘科の上等と特等だ。
ここは結構細かい。
戦闘科の上等と特等の序列四位以下、それと特科の四位以下は盗賊の出現頻度の高い場所と泉周辺に向かうことになっている。
最後に残ったのが戦闘科の三位以上と特科の四位だ。
ここに俺は配属されている。
詳細を言うと、
俺、ミレア、シャルティールが特科の所属者で、ニール、レイが戦闘科の所属者として参加する。
なぜ、ここまで人数を減らしているのかと言うと、騎士団の方が、まだ自分たちの方が強いと言う確信からだろう。
「やれやれ………もうちょっと、学院生を信じてもいいんじゃねーの?」
「仕方ないだろう。彼らは騎士だぞ。学院の生徒同様、基本的に自意識と自尊心の塊のような連中だろう? 生徒任せにしていたらプライドが傷つくというものだ」
「そう言うもんかね」
正直呆れる。
どこの世でもそうだが、取るに足らないプライドの所為で本当に成さないといけない事を疎かにする馬鹿な大人という奴は本当に多い。
うちの学校の教師なんかまさにそれだ。
まぁ、春は例外だが。
さっきからこんな風にくっちゃべってる訳だが、なかなか命令が来なくて暇を持て余している。
いい加減まだなのかと思い始めたとき、とある騎士から声をかけられた。
「君達、学院の生徒か?」
全員に聞き覚えのある声に一斉に注目を集める。
とりあえず、俺と目があったので一応返事をしておいた。
「あ? そうだけど………そう言うアンタはさっき前に出てた騎士か」
純白の鎧を身に纏った騎士。
この白鳥の騎士は俺たちの指揮官に当たる。
ようやく作戦でも伝えに来たか?
「わぁ、“白鳥”だ。僕こんな間近に見られたのは初めてだよ」
シャルティールは感激していた。
「お前も普通に女子なんだな」
「それはどういう意味かな?」
「ボクっ娘は百合百合しているって知り合いに聞いてたからな」
ちなみに、その知り合いと言うのは七海のことである。
結構漫画とかラノベとか好きなのだ。
ジョ◯ョとか好んで見てる。
「失敬な。僕だってイケメンには反応するよ。そこの男性恐怖症は違うだろうけど」
「かっ、顔の整った男は狼だとおじいちゃ………オホン………お爺様に教わっています」
いや爺さんそれただの僻みだろ。
間違いねぇ。
騙されんな、ミレア。
「で、何の用だ? 名前くらい言ってからにしろ」
ニールがズバッと尋ねた。
こいつも特にイケメンに反応するわけでもなさそうだ。
おかげで会話が進む。
ただ、有名人に名乗れってのもなんだかな、とは思うがな。
「す、済まない………私はルーティン・ヴァレインだ。白鳥の騎士なんて呼ばれているが、正直そこまで気に入っているわけでもないよ。気軽に名前で呼んで欲しい」
へぇ?
今時珍しいタイプの騎士だな。
規律より友好を重んじるか。
「いいのか? 指揮官相手に。アンタ一応大騎士長の補佐だろ?」
「隊に必要なのは結束と統率だ。私の場合、身内とはなるべく対等に接するのを信条にしているんだ。上官ぶられたりするのは正直不愉快だろう?」
「騎士っぽくねぇ野郎だ。だが、嫌いじゃない。むしろ好感が持てたぜ、ルーティン」
「ああ、ありがとう。君たちは、ミレア・ロゼルカ、ヒジリ・ケン、レイ・ウェルザーグ、ニールでよかった?」
「ああ。その感じだと、用ってのは顔を見に来ただけなんだろ」
何か裏のある奴は顔を見れば大体わかるが、この男にはまるでそれがない。
本当にただ顔を見に来ただけのようだ。
「ああ。まぁ、フェルナンキアを救った英雄と話してみたいというのもあったけどね」
ミレア達は何のこっちゃという顔をしている。
あとでフォローを入れておくか。
ふと。
本当に唐突に、自分でも何故かと思うほど唐突にある事を思い出した
ここに来てウルクを見ていない。
いや、見ていないだけなら知り合いは結構見ていないのだが、何故かウルクの事を思い出した。
これは、虫の知らせという奴だろうか。




