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第308話


 「騎士団………」


 白い甲冑を身に纏い、王国の旗を掲げる騎士達。

 旗と鎧に描かれているのは、紛れも無いミラトニアのマークだ。

 だが………


 「なんだ………妙な違和感がある………」


 少し様子がおかしい。

 妙に隊列が乱れており、統制が取れていない。

 いや、もはやただ固まっているだけといった感じだ。

 何というか、全体的に雑な感じがする。

 並ぶのなら、もっときちんと並ぶはずだ。

 規律を重んじる騎士とは思えない。



 そのまま観察を続ける。

 以前違和感は残ったままだ。


 「ん?」


 そして俺は、違和感の正体に気がつく。


 ………待てよ?

 あんな方角から来るのか………?


 歩いてきてる方角は、王都のある方角では無い。

 つまり、



 「………そうか………あの連中………!」



 あれは騎士団では無い。

 それはすぐにわかった。

 では一体誰なのか。

 実は、中身は盗賊でも無い。

 盗賊なら、あんな事をする理由もない。

 むしろリスクしかないと言っていいだろう。

 連中は——————








———————————————————————————








 「………」


 ゴーレムの情報は本体である俺のところへ、リアルタイムで100%フィードバックされる。

 俺はそのうちの一体の動きを注意して見ていた。

 

 「どうしたのですか? ケン君」


 「騎士団になりすました集団がこちらに向かっている」


 「!?」


 「だが敵じゃねぇ。奴らは、生き残った住民だ」


 そう、あれは住民だ。

 恐らく、全滅した騎士団から鎧を借りてきているのだ。

 どう言う理由かは知らないが、盗賊どもは物品を奪っていった様子はない。

 彼らは運良くそれを手に入れたのだ。


 「しかし、 何故そんな事を………」


 「ああ、そいつは多分………」


 意図しているかは知らないが、あれは騎士団になりすましている。

 強い装備で身を守る為だろうが、それが功を奏して、盗賊除けになっているのだ。


 盗賊なら、なるべく騎士との戦闘は避けたいだろう。

 少なくとも、魔法を用いて戦う魔法騎士団相手に正面から戦うのは些か無謀が過ぎるというものだ。


 「………って事だろ」


 「なるほど。しかし、どちらにしろ長くは保たないでしょうね………」


 「だから——————!!」


 チッ、このタイミングかよ………!











———————————————————————————











 「グロォォォアアアアア!!!!」



 紅の鱗を身に纏った竜が、はるか上空で咆哮している。

 その口からは、彼らの町を焼いた灼熱が見えている。



 「ひっ………どっ、ドラゴンだ!!!」


 「もう、ダメなのか………?」


 「鱗の泉が………ついにドラゴン達に呑み込まれるのか!? チクショウッ!!!」



 彼らは嘆いた。

 

 ここら一帯はお世辞にも治安がいいとは言えない。

 周囲は竜の住処。

 一定時期に増える盗賊。

 騎士団が来るとは言え、被害は今まででもあったのだ。

 それでも彼らは、この地から離れようとしなかった。

 しかし、そんな彼らも、今度こそ無理かもしれないと諦めかけていた。



 「コォォォォォ………」



 

 「「!!!」」


 ドラゴンが大きく息を吸うような仕草をし始めた。

 町民達も理解している。

 これは、火炎(ブレス)だ。



 「あ………ぁ………」


 「終わった………」


 「死ぬのか………?」



 人々の心は一気に折れた。

 そして、


 


 ゴォオオオオッッ!!!!




 火炎が放たれる。

 人間を一瞬で消し炭にする紅蓮の炎は人々を燃やし尽くす。

 

 みな、そう思っていたその時だった。





 『ッッラァアア!!!』



 

 ヒュォオオッッ!!! と、風を切る音が鳴った刹那、炎が消滅した。

 町民達の目の前には、一体の小さなゴーレム

 


 『チクショウが………出るのが早ぇんだよクソトカゲ!!』









———————————————————————————








 「おい! 何か起きたのか!?」


 ニールが俺に迫ってそう尋ねてきた。

 恐らく感じ取っているのだろう。

 あちら側で雄叫びを上げている竜の魔力を。



 「この魔力は………!」


 「大きい………」


 竜は、高い魔力を有するモンスターだ。

 知性を持った、魔族としての竜はさらに高い。

 特に今見つけたのは、モンスターの中でもなかなかの強さの個体だった。



 「俺のゴーレムがドラゴンと交戦中だ。結構強ェぞ」


 出来るなら、もっと後に出てきて欲しかったが、こればかりは仕方ない。

 それに、 悪いことばかりでもなかった。


 「! よし、見つかった………」


 同じタイミングでこちらに向かっている騎士団と生徒や教師も発見した。


 さて、問題はドラゴンだ。

 俺は万が一リンフィアやガリウス達が竜や盗賊、はたまたその両方に襲われた場合すぐに対処するために、ここから動くわけにはいかない。

 本気で動けるなら動くが、ゴーレム操作中は俺はフルパワーを出せないのだ。

 それでも本気を出してしまえば、あちら側のゴーレムも止まり、町民たちは瞬く間にドラゴンの餌食だ。

 遠くでは再起動できない。


 さらに、別の問題発生だ。


 「またドラゴンかよ………!」



 先ほど発見した生徒達をドラゴンが追っている。

 騎士団とは距離があるので、こちらもゴーレムで食い止めている。

 やはりこうしておいて正解だった。


 「クソが………やってやろうじゃねぇか!」


 さて、俺は全員守りきれるか。

 ここが正念場だ。



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