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第307話


 「………間一髪か」



 自爆を予見していた俺は、1人だけ爆発させずに生かしておいた。

 暗示は上書き可能なため、俺は爆発の手前でかかっていた暗示を上回る強力な暗示をかけた。


 正直、この屑はぶっ殺してやりたいが、これ以上犠牲者を増やさないためにもそういうわけにもいかない。

 情報は必要だ。

 このリーダー格の男が、情報を持っているとしたら持っているだろう。

 ただ、こいつが情報を持っているかどうかは結構微妙なラインだ。


 「ニールとレイは………逃げれたっぽいな」


 2人の魔力を感じる。

 恐らくほとんどダメージも無く無事だ。


 「………」


 今回、 俺たちの中では犠牲者は出なかった。

 しかし、盗賊共のせいで辺りはこの惨状だ。

 自爆で死体も殆どが朽ちてしまった。


 

 「せめて、安らかに眠ってくれ………」



 目を瞑り、黙祷を捧げる。

 


 「ケン!」


 向こうから声が聞こえる。

 ニールだ。


 「無事だったか、ニール」


 「ああ、どこも喰らってないないし、爆発も間に合ったからな。お前の方はどうだ?」


 「俺は全然大丈夫だぜ。それよりこいつだ」


 俺は盗賊の男をニールに見せた。

 一瞬ギョッとするが、それ以降は何も言わずにじっと見ていた。



 「こいつを騎士団に預けときたいんだが………」


 「………やめておけ、無駄骨になるぞ」


 ニールははっきりとそう言った。

 そして、こう続ける。



 「先にこの場所についていた騎士団の兵達は………1人残らず、全滅した」











———————————————————————————













 戦闘科も、特科同様に3人1組だったらしいが、現在ニールとレイが2人でいる理由は、組む筈だった生徒が、急な事情で合宿に行けなくなったかららしい。

 

 こんな早くにこの場所にいるのは、早めに出たニールとレイがバイクでここまで来たからだ。

 2人の話によると、ここを通ろうとした時点で現場は荒らされており、盗賊達に見つかったためやむなく戦闘になった。



 「なるほどな………」


 俺は2人の現状を聞き、現在の全体の状態を予想する。

 だが、状況は芳しくないと言ってよさそうだ。


 「お前ら以外が着いているかどうかってわかんねーよな?」


 「ああ、わからん。本来の集合場所にはまだ辿りつけていないからな」


 本来の集合場所は、今いる場所のもっと奥の方にある大きな街だった。

 この町は大人数を入れるには狭いすぎるのだ。


 「そうか、まだか………じゃあ、連絡は入れたのか?」


 「あ………いや、まだついていない。参ったな………通信魔法具もないし、こいつの魔法具も微妙に使えないからな」


 レイはギロリとニールを睨みつけるが、ニールはツーンとしていた。

 お前らチームなら仲良くしろよ、と言いたいところだが、女同士の諍いは怖いので何も言わないことにした。


 俺はアイテムボックスから()()ゴーレムを取り出す。

 いつぞやのデスウェポン戦のあれとさらに数体だ。


 「通信魔法具を持ってない奴もいるだろうから、こいつを各方面に飛ばす。生徒はともかく、騎士団に連絡がつかないと、後々面倒なことになりそうだ」


 俺はゴーレム達に魔力を流し、意識を憑依させる。

 前回より数は増えているが、問題なく扱えそうだ。


 『そんじゃ、行ってくる』


 『俺はあっちだ』


 『じゃあ俺はそっち』


 『じゃあこっちで』


 レイが奇妙なものを見る目で俺のゴーレムを見ていた。

 というか、若干引いていた。


 「これを自分で操っているのか…………?」


 わからなくもない。

 俺も自分でやっててきもちわりぃ。


 「集合場所はここってことにしとくぞ。とりあえず、追っ払ったばっかだから、この辺の中では一番安全地帯だろ………お、着いたっぽいな」



 後方からバイクの音がする。

 ミレア達だ。

 思ったより遅かったが、無事らしい。



 「会長!」


 レイが、バイクを止めたミレアの元に駆け寄った。

 マジで忠犬だ。


 ぐるぐるとミレアの周りを見回している。

 恐らく、無事かどうかを確認しているらしい。


 「お怪我はございませんか!?………はぁ………よかった………ご無事で何よりです、会長」


 「え? ええ、大丈夫ですが………一体何があったのですか………?」


 着いたばかりのミレアとシャルティールはまだ何が何だかわかっていなかった。












———————————————————————————













 「どうか、安らかな眠りを………」


 「………」



 ミレアとシャルティールは亡くなった者達へ黙祷を捧げていた。

 今はとりあえず地中に穴を掘って、無事だった遺体は氷魔法で冷凍保存させて入れておいた。

 後でちゃんと葬ってやろうということで、今はこの様にしている。



 ミレアとシャルティールは黙祷を終え、 戻ってきた。


 「こんな酷いことを………許せません………!」


 「その為にも、僕たちは盗賊たちを根絶やしにしないとね………」


 2人とも、この理不尽な蹂躙に対して憤っていた。

 これはあまりにも非道だ。

 

 俺1人で解決してもいいが………恐らく、そうなればここら一帯の後処理が十分になされず、生き残った住民達は困るだろう。

 騎士団が出なければならなかった、という事と、騎士団と学院の協力でようやく解決したという事実があれば、幾分ましになるだろう。

 今回は、目立った行動はなるべくせず、住民の保護を優先させるべきかもしれない。


 「ん?」


 その時、ゴーレムの一体が、白い甲冑を身に纏った集団を見つける。


 「あれは——————」


 

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