第306話
「………!」
戦闘場所に移動していると、目的地に人影があった。
見覚えのある影が二つ。
「セァアアッッ!!!」
鎧を着た方は、竜の背に乗って、上空で戦闘。
大剣を背負いながら、双剣で次々と剣技を繰り出している。
「ハァアッッ!!!」
軽装備の方は、地上で盗賊達を殲滅していた。
華麗な剣さばきで盗賊達をものすごいペースで無力化していってる。
あれはニールとレイだ。
「お前ら!」
「「!」」
俺はとりあえず、近くにいたレイの方へ向かう。
だが、盗賊達がレイを取り囲んでいる。
レイは来るなとでも言いたげな余裕の表情、かと思ったが、そこには怒りが込められている。
ニールはニールで、地上を見ながら苦悶の表情を浮かていた。
よくわからないが、一先ずはレイ側の盗賊の処理が先だ。
俺は、盗賊達の方へ向かう。
数が多いな………
俺はアイテムボックスから剣を取り出す。
両刃ではなく、片刃を使う。
後で尋問できるように、峰打ち可能な片刃を使って、なるべく気絶させるつもりだ。
刃を返して、峰を前にした。
「それじゃあ、気絶させて、しま……う………か………?」
だが、俺は目にしてしまう。
ニールが浮かべていた苦悶の表情はこれのせいだった。
そこら中に転がる数々の死体を見て、あんな顔をしていたのだ。
「………………………………………………………ぁ」
これは、ここの村人達の死体だ。
男だけではない。
女子供関係なく、惨たらしく死んでいる。
竜の影はなく、焼け跡もなかった。
これは、正真正銘人の手によって殺されている。
「………」
俺は、無意識に剣を握りしめていた。
刃を、再び返して。
「お、こいつ死体見て固まってやがりますぜ」
「ギャハハハハ!! そうか! だったらこいつはただの生徒だ! こんなガキ、さっさとそこらへんのゴミ共同様————————————は?」
リーダーのような男は気がつく。
自分の手首が飛んでいってる事に。
俺はリーダーがチラッとよそを向くと同時に、足元まで詰めていた。
そして、抜刀術で、手首を斬り落としたのだ。
「ぎ——————」
しかし、悲鳴をあげる暇すら、与えるつもりは俺にはなかった。
「この………ッ、屑共が………………!!!!」
「「「——————!!!」」」
俺から発せられた威圧と殺気で、盗賊達は金縛りにあったかのようの動かなくなる。
ヒュンッッ!!
空を斬る音。
刹那、盗賊達の片足と片腕が斬り離された。
「「「………ぁ、ぁあ」」」
【殺疾離】
魔力を一本のあやとりの様に限界まで細め、剣を繰り、斬り殺す。
この技は、攻撃に弱く、相手の攻撃を喰らうと簡単に解ける。
しかし、無防備な相手には絶大な威力を誇り、目にも留まらぬ疾さで繰り出されるい魔力のあやとりは、敵の首を斬り離し、殺す。
故に、【殺疾離】
「「「ぎゃああああああああああッッッ!!!!!!」」」
悲鳴が鳴り響く。
怨嗟と苦痛の声は一帯を埋め尽くし、眼前に地獄を作り出した。
だが、殺すつもりはない。
こいつらにはまだ聞きたい事があるのだ。
「いてぇ………イテェよぉ………!! ひっ………な、なんだテメェ………きっ、聞いてない………こんな野郎がくるなんて聞いてねぇ!!」
リーダー格の男は喚き散らす。
今の話で、こいつは誰かに雇われた事がうかがえる。
だが、
「自業自得だ。クソ野郎」
そして俺は、まずリーダー格の男の腕と脚の神経を斬って動かなくし、全身に無数の切り傷を与えた。
「ぁああ………ぃ、ぎ………」
俺は回復魔法で体力のみ回復させた。
傷だらけの男の胸ぐらを掴み、顔を近づける。
「誰に命令された?」
「いてぇ………くそッ………!!」
止められているのか、口を割りそうにない。
イライラした俺は、一番深い傷を踏みつけた。
「ぎィッッ!!………ッッぁ………——————」
「!?」
俺は思わず手を離す。
苦悶の表情を浮かべていたはずの男は次の瞬間に、不気味に笑っていたのだ。
………いや、これは本当にさっきまでの男か………?
ふと、妙な感じがした俺は、周りを見渡す。
悲鳴がピタリと止み、盗賊達の顔からは表情が消えていた。
「こいつは………まさか………!!」
そうだ、これは暗示。
恐らく、敗北して捕縛された場合に発動する暗示だ。
だとしたら命令は一つしかない。
「ニール、レイ、急いで離れろッッ!!!!」
次の瞬間、耳を突き破るような轟音とともに、辺りが真っ白な光に包まれた。




