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第302話


 「5て………」


 ケンがつけた5手と言う縛り。

 それをどう扱うか。


 「うーん、むずかしいなー」


 5手と言うのは決して多く無い。

 モンスターの設置だけでも1手として仕舞えば、そう言うので手を使ってしまう。


 「むぅ………ちょっとまとめよう」


 振り返って自分の駒を確認する。


 「つかえるのはスライム、サーペント、ゴーレム、ハーピィ。さいごはきまってるから、そこまでのてじゅんと、それをいかにたんしゅくできるかかんがえないといけない」


 同時に可能な手順はまとめて行わないと、手が減ってしまう。

 だから、初手はもう決まった。


 後はその間。

 3行程。


 「………」


 目的を何とするか。

 倒すか………いや、ダメだ。

 逃げられでもしたらそれで“手”を使ってしまう。


 「じゃあ、にげられないようにする」


 そして、諦めさせる。

 ラビは目を瞑ってシミュレーションする。

 こちらの行動に対するアクションを可能性としてあげる。

 その可能性を、一つに向かいやすいように調整する。


 「じゃあ、やっぱりさいごは………こううごく、だから………」


 予測。

 調整。

 ………………確定

 可能性は収束されていく。


 そして、終わりを確定させる。




 「………うん、きまった」









———————————————————————————










 現在、ワンダがいる場所は、草原の中でも高低差が大きい場所だ。

 彼女らは、近くで一番見晴らしの良い場所に登っている。


 「んー………あ、見て! 階段だ!」


 ワンダ達は、階段が視認できる距離まで近づいていた。

 そこまでの道のりを確認するが、モンスターが湧いている気配はなさそうだった。


 しかし、



 「「!」」


 目の前に突然光が発生する。

 これは、ダンジョンでモンスターが発生する前兆だ。

 それぞれ武器を構えて警戒する。



 「みんな、包囲して………」



 ワンダ達は、光を囲うようにして立っている。

 すると、そのすぐ後に光が消え、シルエットが確定した。

 これは、ハーピィだ。


 「ハーピィ………!」


 ワンダは察する。

 選択を誤った、と。


 「キュピィイイイイ!!!」


 ハーピィは自慢のスピードで、囲っているうちの1人を突き飛ばした。

 突き飛ばされた生徒は、咄嗟に手が出てガードは出来たが、大変なことに気がついた。


 「!?」


 崖にいて突き飛ばされた。

 手を伸ばして咄嗟に空をつかんだが、当然何もない。

 そう、今彼女は落下しているのだ。


 「きゃああああああああ!!!!」


 「ソーちゃん!」


 ワンダ達は、ソーちゃんと呼ばれた少女が孤立するのを避けるため、全員崖を飛び降りた。

 幸いそこまでの高さではなかったので、受け身でほとんど衝撃を消せた。


 「大丈夫!?」


 「怪我はない!?」


 駆け寄って状態を確認する。

 傷もほとんどなく、ワンダ達はホッと息を吐いた。


 「うん、大丈夫。ありが————————————」



 突如、妙な浮遊感を感じた。



 「え………………?」


 突然の事だったので、一瞬思考が停止した。

 今間違いなく彼女らは落下している。

 色々な理由を考えるが、混乱して整理がつかない。

 更に、



 「ハカイ」


 そう言って飛び込んでくるゴーレムやサーペントを見てますますわけがわからなくなっていた。

 次から次へと場面が変わり、とうにまともな判断ができなくなっている。



 「あ、あああ………!」


 怖い。

 わからないと言うのは、漠然とした恐怖を人に与える。

 そして、



 「う、うわあああああああ!!!!」




 全員、緊急脱出でダンジョンを抜けた。










———————————————————————————









 「ふぅ、よそうどおりだったな」


 ラビは戦闘を終え、ゆったりと座っている。

 課題はクリアだ。


 ラビは、5手の制限をどうやってクリアしたのかと言うと、


 まず初手でモンスターを召喚。

 高低差を利用して、他のモンスターを隠しつつ、目立つようにハーピィを召喚。

 

 2手目、ハーピィで1人を高いところから落とす。


 3手目は2手目と並行して行い、スライムが床になりすます。

 多数のスライムが集合して、何とか耐えきった。

 スライムは、凝縮する事で固まる事ができるので、何とか土っぽい感触に似せた。

 少し大きめのスライムを10匹のなんちゃってトラップは上手いこと成功した。


 4手目は、隠れていたモンスターを集結させ、


 5手目でダイブ。





 これは、彼女達の行動をうまく利用した作戦だったのだ。

 彼女達は慎重に動いている。

 ダンジョンでの行動の鉄則を()()()()守っている。


 だが、上級者はそれらを簡略化する場合が多いので、この時点で、ラビはワンダ達がまだダンジョンに潜って日が浅いことに気がつく。


 そのダンジョンでよくあるルールの一つは、高い場所で周囲を確認するということだ。

 塔や城のダンジョンでは、こうすることで隠れやすい場所や、いざという時の避難経路を確保する

 ワンダ達はそこをつかれたのだ。


 この観察眼と発想力はなかなかものである。

 ケンもラビを将来有望だと認めているし、実際戦術には長けている。



 「とりあえず、ごうかくできた!」



 無邪気に喜んでいるこの少女は、将来凄い策士になるかもしれない。

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