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第300話


 対竜種(アンチドラゴン)


 これは、一種の状態異常と考えていい。

 スキルにも属さず、なにかの性質でもない。


 様々な意味でイレギュラーな状態だ。

 魔法、物理攻撃関係なく、竜の力に対して有効であり、様々な効果を発揮する。

 それは、生物ではなくアイテムに宿る。

 

 世間ではドラゴンキラーだとか、ドラゴンスレイヤーだとか言われている、伝記の中でのみ存在すると言われた物質。


 こう言う対生物のアイテムは様々な種類が存在するが、どれも希少で、知られているのものは限られている。


 それがどう言うわけか家の蔵にあったルクスは、それを持ち出して、武器に加工した。

 彼が今持っている杖は、竜種に対して威力が数段に跳ね上がると言う特殊効果付きのものだ。

 そして、彼のパーティメンバーが持っているのは、杖には及ばないとは言え、対竜種を持った装飾品だ。


 「いやー、マジでスゲェなこれ。あんな強そうなドラゴン共が一瞬で片付けられた」


 「当然だろう? あの伝説の対竜種だ。家の蔵に有った時は驚いたが、やはり伝説は本当だったと言うべきのものだったよ。なにせこの威力だ。きっと彼女もこれは気にいるよ」


 ニィっと、口角を上げる。

 この鋭い眼光。

 ルクスは、いつもの優男のような表情ではない。


 「悪い顔してるな、ルクス。まァた女漁りしてんの?」


 「今回はちょっと特殊でね、全く俺に靡かないんだ」


 「ほぇー、この美形に全く、ねぇ。もしかして、そう言う趣味?」


 メンバーの1人が冗談めかしてそう言った。


 「いや、そうじゃなさそうだ。どうやら彼女、今気になっている奴がいる様子だった」


 「へぇ、今度は略奪か。面白そうじゃん」


 「お前に落とせねー女はいねーだろうから、結果は見えてるけどな」


 現在全戦全勝のルクスは確かに落とせない女はいないと言うにふさわしかった。


 「ふっ、買いかぶるなよ」


 「ケッ、思ってもねーくせに」


 「ぎゃははは!! そうだぜルクス!」


 どうやら、パーティメンバーは上品とは言えないようだ。

 なぜそんな連中とつるんでいるのかはわからないが、少なくとも、普段見せている表情とは違う面を、 彼らには見せているらしい。


 「ダンジョンだから魔石が出ないのは困り物だよなぁ」


 「だが、今度の合宿の練習にはなる——————」


 しかし、彼らに見せている顔もまた、彼にとっては偽りの側面だ。

 


 「——————あの計画のためにも、な」


 強い風が吹いた。

 ルクスの髪がたなびく。


 ——————髪の一部から黒髪が隠れている事には、誰も気がつかなかった。



 






———————————————————————————










 「………へぇ、変装してやがったのか」


 俺は遠くからルクスを観察していた。

 顔の造形から、何となく奴が何者か察する。

 だが、今は手を出さない方がいいだろう。


 「んー、でもなー、あの野郎がリフィに近づくのはなんか釈然としねんだよなぁ」


 さてどうしたものか。


 「とりあえず、それとなくリフィに注意を促して、合宿で事を見極めるか。それと、 ラビにも言っておかねーと」



 あの顔の感じはほぼ間違いない。

 奴は日本人だ。

 そして、勇者である様子はないという事は、


 「そろそろ狩り時か? “迷子”共」


 ダンジョンを狙う謎の異世界人集団に属する“迷子”の可能性が高い。

 









———————————————————————————









 俺は戻って、事をラビに伝えた。

 やはり、少し顔をしかめている。

 母の力を奪った連中が許せないラビにとってはいい話してはないだろう。


 「くろかみのれんちゅうなのか………」


 「まだ決まった訳じゃねーがな。この世に一体どれほどの迷子がいるかは知らねーが、あいつもそれに属している可能性はある。だが、あの程度の雑魚ならお袋さんの力を奪ったやつではなさそうだぜ」


 亀井久介と比べるとてんで弱い。

 なら、そこまで重要な役割を持っているとは考えにくいだろう。


 「ただ、顔が違うんだよなぁ」


 「うん、わたしがみたくろかみと、このまえファルドーラのところでみたくろかみとはかおがちがう」


 連中は皆同じ顔らしいが、今のところ2人だけなのでなんとも言えない。


 「もしかしたら、あの顔は本当の顔をじゃない可能性もあるな」


 「へんそう?」


 「可能性はある」


 「むぅ、なにたくらんでるんだ………」


 連中の狙いは、ダンジョンに関係することだ。

 いや、正確には生物迷宮に関するものだろう。

 正直言って、あれの存在を知っているだけで驚きだ。


 「焦っても仕方ないか」


 俺は手をラビの上に置く。

 ちゃんと守ってらないと、と思っていたが、こいつ自身にももっと力をつけさせないとな、と思った。

 

 「この学院も、面倒なやつ抱え込んだもんだな。いいかラビ。絶対正体がバレる事態は避けろ。そんでもって、いつか敵が取れるように、今もっと訓練しねーとな」


 「もちろん!」



 

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