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第3話


 ———それでは、最後の説明だ。今からは3人グループであるところに行って、そこで1年間修行をしてもらう。


 恐らくすぐに死なれては困るので力をつけさせようという計らいであるとみた。

 体感的にといっていると言う事は現実とは時間の流れが違う場所なのだろう。


 ———1年後、合図があった後君たちは召喚者の元で再び集まることになるだろう。


 話はトントン拍子に進んでいく。

 俺はまだ気持ちの整理がついていない。


 ———さあ、グループを作ってくれ。


 声は聞こえなくなった。


 「俺と組もうぜ」


 「オッケー。修行かぁ、やっぱりちょっとは憧れるよなぁ」


 「私たちもグループつくらなきゃ」


 もうみんな既に乗り気になっている。

 おそらく乗り気じゃないのは俺と、


 「ケンちゃん……」


 「ケン……」


 「ケンケン……」


 「………」


 こいつらは基本お人好しなのだ。

 巻き込まれてくれといったら喜んで巻き込まれてくれるだろう。

 だから俺は、しばらく1人になる必要がある。




 「……よし! 沈んでても仕方ねー。1年間修行してちっとは戦えるようにならねーとな。そうしねーと俺ら帰れねーだろうし」


 自分に言い聞かせるようにそう言った。


 「お前ら主力になるんだ、気合い入れとけよ」


 こいつに沈まれると俺もやりきれなくなる。

 俺は軽く全員の頭を手の甲で小突いた。


 「さて、多分三馬鹿同士で組むのは確定として俺と蓮は1人足りねーな。ちょっと探してくる」


 多分俺は1人になる。このクラスの人数43は素数だ。

 1人ずつか43人まとめてでない限り余りは必ず出る。

 今回言われたのは3人ずつのグループわけ。

 14組できて余りは1人。


 多分俺になる。


 ………上等だ。やってやんよ。


 俺も無能なままは嫌だ。

 世界は別にどうでもいいが、こいつらを助けられる程度の力は欲しい。

 その為に俺は今まで……いや、今はどうでもいい。

 ともかく俺は決心した。

 1年間1人で強くなると。


 俺は離れていった。

 あいつらのことだ。

 勘付いてはいるだろう。

 でも止められても俺は一人になるつもりだ


 「頑張れよお前ら」


 


 ———泣かせるじゃないか。いいね人間の友情ってものは。


 「テメェに理解出来ンのか?」


 ———いいや、全く。


 だろうと思った。

 この神には多分そういったものが通じないだろう。


 ———これからどうするんだい? 余り物のケンくん?


 「さてな、どうすっかな」


 確かにこのままではできることに限界はある。

 修行しようにもスキルはない上に一人だ。

 これでは話にならない。


 「うーん、なあ、神なら何かこうないのか? こういった時の救済措置」


 ———今までにこういったケースは無くてね。ぶっちゃけ君が記念すべき初の不適合者だ。


 記念すべき初の不適合者か。

 嫌な記念だ。

 それが()()なら。


 「しらばっくれんなよ。いたんだろ? 俺の他にも」


 ———へぇ、何故そう思ったんだい?


 「初めてだったら不適合者なんて俺に言わねーだろ。あれはそう言う者が存在するのを知っているヤツの反応だ」


 そう、話がスムーズに進みすぎている。


 「今までに前例がないイレギュラーならあの程度の反応では終わらせねーだろうし、それに不適合者と言う言葉がすっと出てくるとも考えにくい」


 これらは予測でしかない。

 でも大いにありえる予測だ。


 「どうだ?」


 一瞬ニヤリとした表情が見えた気がした。


 ———やっぱりいいね、君。賢しい人間は嫌いじゃないよ。ああ、確かに何人かいた。過去召喚された勇者達の中に力を持たない者が。ずっと昔だけどね。そして、


 目の前に扉が現れた。


 ———あるよ。救済措置。このことに気づいた人にだけ与えられた唯一の手段。ただし、僕との賭けに勝てたら、だけどね。


 賭けか。

 運勝負か?


 ———この部屋に入ったら賭けは開始される。成功報酬はー、そうだな、5文字だ。


 「5文字?」


 「5文字で願ったことならなんでも叶えよう」


 「……っ!」


 なんでもはデカイ。

 5文字も制限があるがなんでもというのはいい。


 ———でも失敗すれば、


 「死んでもらう、か?」


 それくらいの代償は当然だ。


 ———ご名答。で、どうする? 今ままでに降りた人も沢山いたけど。



 負けは死か。いいなそれ。面白いじゃねーか……!


 俺の気分はかつてない程に昂ぶっていた。

 命がけのギャンブル。

 確かに怖い。

 でも、ここで退くのは男じゃない。


 俺は扉のドアを開けた。


 ———!


 「いいぜ、やってやるよ」


 ———そうこなくっちゃ。









———————————————————————————









 中は狭い空間だった。

 同じく真っ白。


 「始めようぜ」


 ———おっと、その前に、


 部屋の中央に椅子が出てきた。

 座れと言うことだろう。

 俺は椅子に座った。


 ———さあ、賭けようか


 俺はゆっくりと頷いた。

 流石に緊張する。

 命がかかっているのだ。

 しょうがないだろう。

 

 ———賭けの内容は至ってシンプルさ。この、


 空中に3枚のカードが出現する。

 カード全て返されており見る事はできない。

 

 ———3枚の中から1枚選んで○が出れば君の勝ちさ。オーケー?


 「ああ」


 ———それじゃあ、


 「選ぶといい」


 !?


 目の前に子供が出てきた。

 いきなりで驚いたが、こいつが誰だか俺にはわかる。


 「お前、ガキだったのか?」


 「年は君よりもずっと上さ」


 「だろうな」


 俺は一枚選び、取ろうとした。

 が、話しかけられたので、取らずに手を止めた。


 「もう取るのかい? 早いね」


 「わかんねーんだから時間かけてもしゃーねーだろ。死ぬとしたら時間なんざかようがかけまいが死ぬんだしよ」


 「人間にしては勇気があるね。じゃあもし死んだ時のために一つ質問をしよう」


 「あん?」


 「君にとってあそこにいる彼らは何なんだい?」


 クラスの連中のことだろう。

 ぶっちゃっけ人による。


 「全員か?」


 「分けて考えてもいいよ」


 考えを読まれていた。

 流石は神。


 「そうだな、クラスの連中は俺にとっては……クラスメイトと言う枠で繋がった他人だ。向こうは俺をどう思ってるのかは知らねーが俺はどうとも思ってないと言うのが本音だ。何かを思うほど深く関わってねーよ」


 「それ以外は」


「けど、俺といつもいるヤツらは俺にとって唯一持った繋がりだ。それを脅かすやつらをツブす為なら俺は何でもやるぜ?」


 っと関係ない事まで言っちまったな、と反省する。


 「なるほど、なるほど、それじゃあついでにもう一つ」


 今度は何だ?


 「君にとって神とは何?」


 いきなり哲学っぽい質問が来たので返答に困った。

 そんなことは今まで考えたこともない。

 ……あえて言うなら、


 「偶像、だな」


 「……続けて」


 「人間ってのはどう足掻いても完璧には成れない。どっかしら欠けてる部分があって、そのせいで苦悩しちまうんだ。だから、作った。完全な存在、全知全能の偶像を。自分らがそれに縋る為にな。俺は、」


 「あっ」


 カードを一枚とり、見せつける様に裏返す。

 思わず笑みがこぼれた。


 「そう思った」


 「ふう、わかった」


 「どっちの?」


 「君の考えも、勝負の結果も、さ」


 神はカードを手に収め俺に背を向けた。


 「合格だ、ケンくん。君は見事に勝ち残った。命を賭けることに躊躇いを持たなかった。賭けどころを理解している。いいだろう。僕は君を救済しよう」


 神はその場にカードを投げ捨てた。

 そのカードは両方とも○が書かれていた。

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