第299話
「スライムは粗方退治できたね」
「この調子で進んでいこう!」
ワンダ達は、スライムの大群を退け、再び探索を再開した。
慣れない草原のダンジョンなので、慎重に行動しているようだ。
「待って!」
パーティの1人が静止させた。
メンバー達は、意図を汲んだようで、意識を集中させ、気配を察知する。
「………モンスターが増えてる?」
「かなり多いね」
「こんなに見晴らしのいいエリアだから、見つかったらひとたまりもないよ」
罠が設置しずらい草原にも危険なところはある。
その一つが、障害物のなさだ。
逃げる時にそれを利用出来ないし、見つかれば一瞬で多数から標的にされる。
「こっそり進もう」
ワンダ達は、モンスターに見つからないように、ゆっくり進んでいく。
草原も、背の高い草や、凹凸のある場所が結構あるので、それを利用すれば隠れられる。
「囲まれないようにだけは注意しよう」
ワンダ達は気がついていなかった。
ゲートから入ってきた、もうひと組のチームの事に。
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「! もうひとくみはいってきた!」
「へぇ、いいじゃねーか」
面白くなってきた。
並行してモンスターを戦わせるいい経験になる。
「スライムは?」
「いっしゅんでぜんめつしたぞ。かなりつよい。でもどっかでみたような………」
ラビは侵入者の顔を見てそう言う。
新たなパーティは、先ほどのパーティより数段上の装備を身につけた集団で、戦い慣れた男パーティだ。
「たぶんじょうとうクラスだ」
ラッキーと思った。
正直、慣らしだけにしておこうと思ったが、この様子だとウォーミングアップにもならない。
せっかくなら、いろいろ見ていたいと思っていたのだ。
「だったら好都合。この間お前が仲間にしたアレを試そうぜ」
「おー、アレか」
影からエルが出てきた。
「ご主人様、それって………」
「ああ、ファルドーラのドラゴンだ」
「!」
エルは嬉しそうに尻ヒレをぴょこぴょこと動かしている。
母親の託したドラゴンが見れるのだ。
エルは母のことを思い返して、嬉しそうにはしゃいだ。
その時、
「あーーーーっっ!!!!」
と、ラビが叫んだ。
「こいつ、 リンフィアねぇにベタベタしてるやつだ!」
メコッッ!!
手に持っていたものを思わず握り潰してしまった。
ラビは驚いて後ろを向くが、音を鳴らした俺も驚いている。
次の瞬間、ラビがニヤニヤとしてこちらを見始めた。
「………………………………んだよ」
「えぇぇえ? どうかしたのかなししょぉお?」
ひょっとこのような顔をして煽ってくる。
なんというか、物凄く本能的にイラっとする顔である。
「このクソガキ、調子乗ってんな」
お仕置きが必要なようだ。
一体どうしてくれよう。
「ご主人様、怒ってるのです?」
「はっ、別に? 怒ってねーし」
エルは不思議そうな声を出していた。
俺の頭の上で。
「でも、ワタシはうれしいぞ、ししょう」
二ヒヒと嬉しそうに笑う。
心の底から笑っている顔だ。
「何でお前が嬉しいんだよ」
「んー、わからん。でも、そういうかんじなんだ」
よく分からん事を言って、再び意識をダンジョンへと戻す。
「いまきたやつにさっそくドラゴンをぶつけてみよう」
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「ルクス、このダンジョンどう思う?」
「さっきの感じからして、おそらくすでに冒険者が入っているだろうが、多分そこまで多くない。可能な限り早く進んで、一番乗りを目指して——————」
グオオオオオオオオオオオオ!!!!
ダンジョンに、あるモンスターの咆哮が響き渡る。
1匹ではない。
数匹いる。
そのモンスターは翼を羽ばたかせ、灼熱の吐息をまき散らした。
「くッ………一体何が………………なっ!?」
「マジかよ………!」
「どっ………………ドラゴンだとッ!?」
驚きの声を上げる。
ドラゴンの出現するダンジョンはそれなりに珍しい。
そして、それらは基本的にみな強い。
圧倒的な火力と、あの体軀からは考えつかないような機動力に恐れをなす冒険者は決して少なくない。
しかし——————
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「な——————」
突然、ラビが唖然と動きを止めた。
何かに驚いている。
「どうした?」
ラビは、ひたいに小さく汗をかいている。
余程のことが起きたらしい。
「ドラゴンが………全滅した」
「!」
「そんな………!」
エルも少なからずショックを受けている。
それにしてもドラゴンが全滅。
可能なのか?
いや、しかしここから感じ取れる奴らの戦闘力ではドラゴンを全滅させることは難しい。
つまり、 特殊な要因がある。
「………なるほど、じゃあ奴らは持ってる可能性があるな」
この場合は可能性は一つだ。
「………はぁ、どうなってんだこの学院は。なんでそう特殊な連中が集まるもんかねぇ」
ラビのデビュー戦は、ちょっとした大ごとになりそうだ。




