表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
297/1486

第297話


 「これが、あたらしいワタシのダンジョン………………」


 ラビは、目の前にそびえ立つ神殿のような入り口を見てそういった。


 「いや、これ俺が作った入口だから。お前まだ入ってもねーだろ」


 作ったあと、入口だけがポツンとあったのがお気に召さなかったらしく、入口を作れとせがまれたため、簡単な物を周囲の木を使ったり、土魔法を使ったりして作った。


 「だってー、こんなあなしかないダンジョンに入りたくなるか? それともうちょっとこってほしかった」


 「引き摺り回すぞテメー」


 俺は青筋を浮かべてラビにそう言った。

 落ち着け俺。


 俺は心を落ち着かせつつ中に入った。

 なかは特にこだわって無いのでシンプルだ。

 また文句言うなー、と思っていたが、どうやら中が気になるらしい。


 「なーなー、まずなかにはいろう!!」


 ラビがグイグイと服を引っ張ってくる。

 入らなくても自分で作ったんだからわかるだろうと思うが。


 「はしゃいでんなお前」


 「もちろんだ。なにせやっとダンジョンらしいことができるんだからな。ここのせいとをたくさんえじきにして、ざいほうのかずをふやすのだ」


 ダンジョンの攻略に失敗すると、所持金やアイテムがアイテムボックスなどの空間系の生活魔法内、またはポーチなどから抜き取られるのだ。

 転送時に空間に干渉してランダムに奪うという仕組みだ。

 ゲートのないダンジョンも、未クリアの状態で入口を通ると、ちゃんと抜かれている。



 「確かに、宝はダンジョンの醍醐味だしな。宝ってのはロマンが詰まったもんだ。うん」


 「とう!」


 話聞けよ。


 そう思ったが、ラビはゲートに飛び込んだので、

言ったとしても聞こえなかっただろう。


 「あ、おい!」


 そして、この瞬間からダンジョンとして機能することになる。


 「この野郎! 先走ってんじゃねぇ!」



 ラビを追いかけて、ダンジョンのゲートに触れる。

 ゲートに触れた瞬間、景色がパァっと変わった。

 

   

 よくゲームなんかで見るようなゆらゆらした空間。

 空間移動の際に見える空間同士の間を見ているのだ。



 「久々にこれを見たな」



 色鮮やかな空間。

 だが、この空間に関しては俺は何も知らない。

 知という概念では説明できない不可思議な空間なのだ。

 ただそこにある。

 次元の狭間からは二度とでられない。

 よく聞くフレーズだが、この世界の場合、閉じ込められ、世界から断絶された瞬間、存在や生命といった概念からも外れてしまうからだ。

 そりゃあ、 出られないだろう。

 空間そのものになってしまってるのだから。


 そして、目的の場所に到達する。


 「っと」


 視界が一瞬で開けた。

 草原だ。

 あの真っ暗な洞窟とは違い、大分明るい。

 

 「ししょう!」



 ラビが嬉しそうに駆け寄ってくる。



 「ひろいだろ!」


 「確かに、こいつァ広いな」


 3層構成にしているが、1層だけでも前よりずっと広い。

 これほど広大とは、流石想像以上だ。


 「ワタシもせいちょうしたということか」


 「だな。さて、トラップにモンスターに宝。設置するもんは山ほどある。取り敢えず、最下層に攻略印を置いて、中盤に保険、この一層に集中してダンジョンを作ってみろ」


 俺がそう言うと、ラビはせっせと作業を開始した。

 予想が正しければ、()()()()()だ。










———————————————————————————











 「いたか?」


 「ダメ、 全然見つからない」


 魔法戦闘科・下等クラス一組に所属する少女、ワンダはクエストを受けていた。

 平々凡々な彼女は、少しでも戦い慣れるために、今日もクエストをこなしている。

 今回のクエスト内容は、ホブゴブリン5匹の討伐だ。

 

 「ホブゴブリンをあと2匹………」


 「ワンダ! 見て!」


 仲間の1人が声を掛けた。

 何だろうと思い、近くに行くと、そこには見覚えのない神殿のような建物があった。


 「前来た時こんなのあったっけ?」


 ワンダは壁に触れてみる。

 どうやら木で出来ているということに気がつく。

 変わった建物だと思って調べていると、中にゲートがあった。


 「………!」


 「ダンジョンだ………」


 「新しいダンジョンかな?」


 こんな風に、ダンジョンは急に現れるものだ。

 全員、得もいえぬ気分に包まれた。

 初めての状況に対する不安や、新発見したことによる高揚感などが入り混じって、不思議な感覚になっている。


 「もしかして、大発見かも?」


 友達の1人がそう言うと、ぐちゃぐちゃしていた感情がはっきりと形を成した。

 今はみんな、高揚感でいっぱいになっている。

 未確認のダンジョン。

 冒険者の端くれなら気にならないわけがない。

 未確認の突発性ダンジョンと言うことは、誰も手に入れたことのないお宝が眠っているかもしれないのだ。


 「ねぇ、入ってみない?」


 「奇遇ね、私もそう思ってた」


 どうやら、全員同じ意見らしい。

 万が一、ダメそうだったら逃げかえればいいのだと思っている。

 

 「じゃあ、入ろう!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ