第296話
一応しばらくダガーの稽古も出来ないので、ラビにその旨を伝えにいった。
すると、
「なァにィ!? ワタシだけるすばんなのか!?」
ラビは不機嫌そうにそう言った。
すごい顔だ。
ものすごい顔だ。
「その顔やめろ。しゃーねーだろ。お前まだ第1学年なんだし。俺らの学年に合わせて姿変えてたら、間が持たねーぞ」
「むぐぐ………」
顔がさらに歪む。
やめなさい。
「あ、あのぉ………あなたはそのぉ………ら、ラビちゃんのお兄さんですか?」
「ん?」
こいつは確か、最近ラビにくっついてる亜人のガキだな。
友達ができてホッとしたぜ。
「ちがうぞ。兄ちゃんではない。ししょうはししょうだ」
「ししょう?」
「そういう事だ。生憎俺はこいつの兄貴じゃねーよ。こいつの言う通り、こいつの師匠だ。戦い方とかを教えてる。ヒジリ・ケンだ」
「えっと、ぼ、ぼくはラニアです。ラビちゃんには、いつもおせわになっています」
ぺこりと頭を下げるラニア。
なんだろう、つい頭を撫でたくなる。
犬の亜人だからか?
「おう。こいつはこの通り自由気ままなクソガキだからよろしく頼むぜ」
「は、はい!」
「しっけいな」
しばらくして、ラニアがどこかに行った後、俺はラビを呼んだ。
「ラビ、ちょっと来い」
「?」
くいくいっと手招きすると、ラビは首を傾げながら付いてきた。
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「そろそろ、いっぺんダンジョン化してみようぜ」
ラビは元々生物迷宮なのだ。
しかし、俺と会って以来、生物迷宮としての活動を殆どしていないので、そろそろダンジョンになって貰おうと思ったのだ。
「ダンジョンかー。そういえば、ワタシはワタシが生ぶつめいきゅうだってことをわすれてたぞ」
「いや、忘れちゃダメだろ」
「たしかにこのへんならちょうどいいかもしれない」
そう、ここの学生はたまに外に出て修練をしている。
特科生はなかなか出ないので、チャンスだ。
「攻略失敗人数が増えるほど経験値になる。とりあえずここいらで使える機能を増やしておこうぜ」
「うん!」
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ダンジョン化とは、指定した位置にゲートを設置し、その中に、自分の意思を憑依させたダンジョンを作る………いや、この場合はダンジョンになると言ったほうがいいだろうか。
今、ダンジョンのスタート地点となる森の真ん中にいる。
この森は弱いモンスターがわんさかいるので、下級の学生たちがよく狩にやってくる。
実験台には最適だ。
「おねーちゃん、頑張るのです!」
ラビがダンジョンを作るということで、 長らくダンジョンにいたエルは見てみたいと言って外に出ていた。
もちろん俺の頭上だ。
「わたしにふかのうはない!」
胸を張ってそう言うが、少し心配だ。
ちなみに今は元の姿なので、一層心配になる。
調子に乗らなかったらいいのだが。
と、思っていたが。
「だがしかし! ゆだんはきんもつ。あせったらすぐまけるから、ちゃんとするぞ」
「です!」
「お?」
以外とちゃんと考えている。
流石俺の弟子だ。
「ラビ。ダンジョン構築の基本はわかってるか? 最初はどうする?」
「うん。まずなかのこうぞうとおおきさをかくていさせる。であってるっけ?」
「おう」
わかっているようだ。
まずは内部構造、つまり、城のようにするのか、塔のようにするのか、洞窟のようにするのか、などを考える。
今回の場合は、単純なフロア式がいいだろう。
簡素になるが、罠やモンスターを配置しやすい。
まずは慣れるところから始めるべきだろう。
「やっぱりまずは塔からにしとけ。簡単な階層型のダンジョンにして慣らしていけ」
「わかった!」
「コストを考えろよ」
ダンジョンを作るときは、当然のようにコストがある。
広さはラビ自身のHP量で決まるが、その絶対量を守らないといけないのだ。
外装にもコストが必要なため、今回は地下へ潜っていくダンジョンにする事にした。
第一の作業。
まずは設置する。
「さ、作ってみろ。あった頃よりもデカイのを期待してるぜ」
「もちろん!」
ラビは地面に手を置く。
すると、地面に光の線が入っていく。
その光は、ついた手を中心に蜘蛛の巣のように広がっていった。
「『せいぶつめいきゅうのなにおいてめいずる。わがたましいのやどりしめいきゅうよ、けんげんせよ』」
「!」
広まった光が一気に中心に戻り、ラビの手に巻きついた。
鮮やかな緑だ
これは指定した土地の情報だ。
それをダンジョンになじませるため、一度自身に戻し、再び地面に叩きつける。
「ふっっ………!!!」
ラビは地面に手を叩きつけると同時に、さっきの光を再び出した。
しかし、先ほどまでとは違う。
「!」
光は巨大になると、地面にどんどん埋まっていった。
それに、光の色が赤に変わっていた。
その刹那、地面から光が溢れ出す。
さぁ、ダンジョン制作の時間だ。




