第293話
パンと手を叩いて、話題をシャットアウトする。
「はい! これでおしまい! 残念ながら同点だ」
「そうですか………」
あんま悔しそうじゃないな。
つーか引きずられても俺が困る。
「余裕ぶっこいてんじゃねーよ。連続首位は俺が止めてやったぜ。ケケケ」
こんな雰囲気はあんま好きじゃない。
だから、せめて元に戻って欲しい。
そう思ってやったのだが、反応は意外も意外。
ミレアはクスッと笑みを漏らす。
「ふふ………それは腹が立ちますね」
「あ」
俺が『あ』とこぼしたのを聞いて、ミレアは何だろうかと首を傾げた。
そして数秒後、ミレアはハッとした。
やっちまったな。
と、口に出す前にどよめかれた。
「「えぇ!?」」
あの男嫌い——————本人曰く苦手なだけ——————で有名なミレアが、男と会話をしているだけでそこそこの注目を集めたのにもかかわらず、会話の中で俺に笑いかけてしまった。
これはマズイ。
「かっ、会長………一体………」
「ミレアさん、本当に………?」
「え、や、これは………」
「ははは、馬鹿かよ」
ついこんな事を言ってしまった。
すると、
「だ、黙りなさい!」
顔を赤くしながらそう言った。
すると周りはこの反応だ。
「会長がッ………あの会長が………ッ!!」
「嘘………だろ………!?」
「そんな………あり得ない………!」
「馬………鹿、な」
まるで天変地異でも起きたかのような驚きよう。
これを収めるのは面倒だし、面白いのでもうちょい見ておこうと思ったらその時。
「ハイみんなストップ」
シャルティールがそう言った。
学級委員ということもあり、彼女にもそこそこの発言力はあるようだ。
「よく考えなよ。ミレアだって人間だよ? こんな日もあるさ。寧ろ、今までより近寄りやすいイメージになったと考えた方が良くない?」
スゲェ、みんな黙った。
こいつらマジかよ。
何と無く強いショックを受けたような気がする。
すると、
「確かに………そうかもしれない!」
「堅いイメージが少し和らいで、みんなの生徒会長のイメージがより強くなった!」
「うおおお! 会長万歳!」
「「万歳!!」」
クラスの半分はミレア信者? だ。
生徒会長のファンである。
万歳とノリで言っている連中も、ミレアの事は認めている。
何だかんだ男にも女にも人気な会長である。
「こいつらヤベェ」
「我が舎弟よ。そう思ったか」
「ウス、アニキ。これはやばいっス」
なんか馬鹿らしくなった。
昔の話なんざ、今ほじくり返すことじゃねーよな。
うん、今じゃない。
「おいお前ら」
ファルグがそう呼びかけると、皆一斉にファルグの方向を向いた。
「盛り上がってるとこ悪いが、まだ試験は終わってないぞ?」
「「は———————はぁ!?」」
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「『やぁ、諸君。元気に測定をやっているかね。まぁ君らのことだ。元気なのだろう。さて、聞いたと思うが、今回もう一つの種目を用意した。前もって伝えなかったのはこちらの手違いだったので素直に謝罪しよう。今度の合宿は以前までのものと比べてもかなり特殊な合宿となる。必要なのは魔力や技術だけではない。それを理解してもらうための種目だ。人によっては簡単だし、当然難しいと感じる者もいるだろう。そこを乗り越えるんだ。それでは諸君、健闘を祈る』って、いうことなんだが………」
みんな良く状況を飲み込めてないようだ。
それもその筈だ。
完全イレギュラーなのだから。
「先生」
ミレアが手をあげる。
渋々なのだろうが、一応表情には出さない。
「ん、どうした?」
「例年と違うとは、具体的にどう違うのでしょうか?」
「ん〜………そうさな。簡単に言うと、今回の方が危険ってことかな」
危険。
一体どの程度危険なのか。
だが、俺には前情報があった。
おそらく、ここで兵士として心身を、特に心を鍛えたいところだろう。
だから、危険度はみんなが思っている以上に高いものになりそうだ。
「危険………」
「はっきりした事は当日学院長から聞けばいいさ。とりあえず、この試験は危険度はないし、何よりこの最後の試験を頑張らにゃならんだろ?」
「はい、仰る通りです」
と、真面目に返すミレア。
ちなみに、俺は内容はなんとなくわかっている。
だが、危険ではないわけでもない。
寧ろ、場合によってはかなり危険だ。
「それじゃ、試験内容を発表する」
その内容とは、
「最後に行うのは、度胸試しだ」




