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第286話


 「昼休憩要るか?」


 さっさと終わらせたい俺としては昼休憩は結構邪魔くさかった。


 「お昼だし、みんなお腹空いてるんだよー。ケンくんはお腹空いてないのー?」


 「空いてないこともねーが、そこまでないな。ほれ、今日の弁当だ。昼代浮くだろ」


 暇つぶしに作った料理が余ったので弁当を作っていたのだ。


 「わ! いいの!? ありがとー!」


 ウルクは弁当を持って何処かに走って行った。

 こいつもまだ若干浮いているようなので、話題になればいいなと思う。


 「アニキって、不良っぽくないっスよね」


 「そう見えるか?」


 「うス」


 ふむ、確かにこいつには不良らしいところはあまり見せたことないな。

 向こうにいた頃は、ヤンキー狩り………まぁ明らかな悪人のみだけど、そんなのをしていた事とか、周辺の学校の不良グループを返り討ちにしたりとかが大分知られてしまっていたから、不良不良言われたのだろう。

 こっちの世界じゃ、向こうとは常識もずれているし、こういう反応になるはずだ。


 「最近ケンカとかしたスか?」


 「こっちじゃねーな。そもそもケンカって段階までいかねーんだよ。フェルナンキアでも迷惑なチンピラ共を地面に埋めたり壁に減り込ませたりしてるだけだぜ?」


 「なるほど、結構やってるっスね。んー、よく考えりゃ授業サボってるし、アニキはやっぱり俺様と同じ不良っスね」


 「おう」


 ………不良かどうか、か。

 考えたこともなかったな。


 不良ってのは、いわゆるレッテルだ。

 周囲が反社会的だと認定された者が善悪関係なくそうだと決定される。


 ………いや、ならば俺はやはり不良なのだろう。

 助けた人間に怯えられる者が、普通だとは、俺は思えない。



 「アニキ、メシどうしますか?」


 「俺は散歩しとくわ」


 「そスか。じゃあ俺は向こうでウォルスと食ってますんで」


 「ああ。後でな」



 俺はガリウスと別れ、屋上へ向かった。












———————————————————————————











 やっぱ、屋上が一番見晴らしも風通しもいいな。

 まさにベストプレイスだ。



 「………邪魔が入らなかったら、だが」


 「邪魔とは結構な言い草じゃないか。仮にも私は学院長で、お前はヒラの生徒だぞ?」


 「ヒラ言うなよ。アンタもよくここに来るのか? それとも………今回たまたまつけてただけか?」



 屋上に上がってくる時、うろちょろしていたので気がついたのだ。


 「もちろん後者だ。やはり流石だな。今日はちと用があってな。小耳に挟んだから、お前の耳にも入れようと思ったのだよ」


 「なんだ? 古のドラゴンでも蘇ったか? それなら喜んで討伐してやるよ」


 「残念ながら、お前にとっては多分いいニュースではない」


 ピクリと眉が動く。

 多分、とついているが、十中八九いいニュースではないだろう。



 「聞くぜ」


 俺は向き直って、ファリスの話を聞いた。


 「………ミラトニア第3王女、フィリア・ミラトニアが近々婚約するらしい」



 「な——————」










———————————————————————————











 同時刻、フィリアは玉座の間に居た。



 「婚約………ですか」


 「近々決まる可能性がある。その覚悟だけはしていなさい」


 フィリアの婚約。

 王族である以上、政略結婚はざらにある。

 それがフィリアの意にそぐわないものだとしてもだ。

 王族としての責務というものである。


 「………お相手はどなたでしょうか」


 「ルーテンブルクの第2王子だ」


 「!」


 はっきりと認識する。

 これは、明らかな政略結婚である、と。


 「フィリア」


 「………はい、お父様」


 「余の決定は絶対だ」


 「っ………………はい」


 フィリアは表情に出すことはなかった。

 だが、心中穏やかであるはずがない。


 なぜなら、彼女には想い人がいるのだから。










———————————————————————————











 場面は学院へ戻る。



 「確かに、いいニュースとは言えねェな………」



 ルーテンブルク。

 鎖国中の国家であり、その国の全貌は、王ですら知らない。

 婚約するのは、その国の王子だという。


 このルーテンブルクは、ミラトニアやルナラージャとは決定的に違う面がある。

 それが、《呪法》と呼ばれるものの存在だ。

 鎖国しているのは、この法術を漏らさないためであろう。

 

 呪法とは、手の甲に現れる呪印と呼ばれる紋章の力の事である。

 1人につき1つ、決められた属性の呪印を持ち、その属性は変えることはできないが、極めたら、その属性に限っては魔法を大きく上回る。


 究極の一か、万能の全か。


 呪法と魔法の決定的な違いだ。



 そして、その呪法と魔法こそが、今回の婚約の鍵となる。




 

 「ルーテンブルクとはな………クソッ、呪法に手ェ出す気かよ」

 

 「やはり、呪法も知っているんだな」


 ファリスは少し低めのトーンでそう言った。


 「本来、人間の術ではない魔法と呪法。魔法は魔族から。そして、呪法は天使から。天使が呪いってのは、おかしな話だが、そんな事を言ってる場合じゃねぇ。こいつは大事だぜ」


 「ああ、だから今回の合宿は特別にしている。国王も噛んでいるぞ」


 「………まさか、ここの連中を使う気か?」


 「最悪そうなるだろうな」




 呪法と魔法の力。

 この二つが合わさる事で、大きな力を得る。


 だが、国は二つだ。

 そして、国ほどの規模のコミュニティの衝突は、一つの出来事に直結する。




 「近々起きるぞ——————戦争が」

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