第283話
「はいセーフ!!」
ギリギリのところで滑り込んだ。
一応間に合ったらしい。
「アニキ! どこにいたンスか!? 俺様めちゃくちゃ探したっスよ」
ガリウスが近寄ってきた。
いいな、舎弟。
大事にせねば。
「ここで言うのもあれだからあとで教えてやるよ。いい場所だぜ」
「マジっスか!?」
「その話、詳しく聞かせてもらいましょうか」
ガリウスが一瞬ビクッと体を跳ねさせた。
こいつ、わざとやってんな。
それにしても………
「ンだテメェ………つーか文句あんならもうちょい近づいて言えよコラァ!!」
離れてんなー。
ガリウスがいるからだろうな。
「黙りなさい。無断欠課は校則違反ではありませんが、常識的に考えてやっていいことではありません。ガルディウス君、貴方はやりすぎですよ」
その距離で言われてもなぁ。
「ケン君、やはり授業をサボりましたね………全く、貴方ときたら………」
「はいはい、説教は無しだ。お前も集中したほうがいいぜ」
一応大事なテストらしい。
なのでこれは俺からの気遣いだ、うん。
「そうですね、説教は後にしましょうか」
チッ、そうなるか。
まぁいいや。
「測定ってのは何種目やるんだ?」
「6種類です。魔力量、魔力操作の精密度、魔力操作の強度、魔力操作の自由度、並立して操作可能な魔法の数、魔力の速度です」
魔力操作は、精密さと強度、自由度が重要とされている。
今回測定するのはここだ。
細かい操作を行えて、頑丈な作りをし、より自由な操作をすることにより、魔法の使い方の幅は広がる。
魔法の並立操作に関してはかなりの高等テクだ。
ピアノを両手でやるのが難しいあの感覚に近い。
それよりはまだ難しいが。
何にせよ、今日はそこを見る。
速度とは魔法の起動までにかかる時間から計算した速さを指し示す。
「6つの種目で一つでも合格ラインを下回ったら、降格ですよ」
「おいおい………マジかよ。ウルクは大丈夫なのか?」
「自分の心配はしないんですね………」
「バカ言ってんじゃねー。そんな低水準に引っかかるか」
それを聞くと、ミレアはムッとした。
「怒んな怒んな。ファルグ来たぞ」
「また呼び捨てっ………」
振り返ると同時に動き回ってミレアから離れた。
結局説教始めるんだもんなぁ。
「そんじゃ、ボチボチ始めるとすっかなァ」
適当だなー、とみんな思った。
だが、この適当さ故に話しやすく、生徒からは結構な人気を勝ち取っているのだ。
「さっさと始めようぜ、センセー。俺様くたびれたぞ」
「落ち着けよ、ガリウス。集中も大事だ。一応テストなんだしサ。どうせならここいらでドカンと一発俺は違うんだぞっつーところを見せびらかせてみろよ。なっ」
「………確かに」
扱い上手いな。
命令するように言うわけでもなく、説教臭いわけでもなく、こいつが納得するように頼んだ。
「まぁ、くたびれるのもわからなくもないねぇ。若者はそうこなくちゃな。さ、まずは精密度測定からだ」
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「「ふッッ………!!!」」
魔法具がある。
球体の魔法具で、中に5つの玉が入っている。
それぞれ赤、青、黄、緑、白と、赤から順に大きくなっている玉だ。
これらの玉を、球体の中で飛んでいる黒い玉に当たらないように避けるというのが、測定の内容だ。
「合格ラインは60秒。失敗しても2回までは挑戦可能だからな」
「「はいッ………!」」
4人ずつ、同時に計測を始める。
球体を持って魔力を込め、中の玉を操る。
「………1分経過。最低ラインを超えたから、次はBランクを目指せ。120秒………あと1分耐えろ」
「ぐッッ………も、む………り………………キャッ!!」
1人脱落。
記録は87秒。
特科ではランクCだ。
「………前回より5秒伸びたな。うん、いい傾向だ。ただ、操作の際に、若干出力の調整に手こずっている傾向は直ってなさそうだ。それでも以前よりは改善されつつある。この調子で励め」
「はいっ!」
よく見てるな、このおっさん。
この後の3人は、それぞれ116秒、140秒、173秒、となっていた。
Aランクは5分耐久なので、流石に難しいらしい。
10分を超えたらSだと言う。
「んー、なかなかAランク超えは出ないなァ」
そうそう出るもんでも無いだろう。
なかなか出ないように設定された基準っぽいしな。
「行きます」
「僕もいこっかなー」
シャルティールとミレアが前に出た。
シャルティールは、このクラスのリーダーなだけあって、優秀らしい。
なので、この2人に挟まれたとしたら、さぞやりづらかろう。
「俺様もやるぜ」
ガリウスが前に出た。
すると、
「テメーも来い、ウォルス」
「仕方ない………わかったよ」
ミレア、シャルティール、ガリウス、ウォルス。
今回はこの4人で計測するらしい。




