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第280話


 外を歩いていたら、ガリウスと会った。

 声をかけると、少し焦った様子だ。


 そう、やたら警備が多い。

 フケようと思ったが、至る所に風紀委員がやってくる。

 ガリウスも困っているようだ。


 「ミレアのヤロウ、俺らがサボるの見越してやがったな。風紀委員の警備がいつもより厳しいぞ」


 「いけ好かねー女っスね、アニキ。行く場所ねーし、寮に帰りますか? でも寮長がうるせーんスよね」


 確かに。

 特科の寮長は厳しい上にかなり強いようだ。

 ガリウスでは少し分が悪い。


 「お前も測定には出るんだろ?」


 「うス。でねーと降格させられるっぽいんで、こればっかはしゃーねースよ」


 不良といえど降格はまずいようだ。

 俺は基本降格はないだろうが、それが公になると面倒くさいので、最低限ガリウスと同じくらいには授業に出ることにしている。

 当然、測定も参加だ。


 「このままじゃ落ち着けそうもねーな。バラけましょっか」


 「んじゃ、それまで各自バレなさそうな場所に行こうぜ。後でな」


 「んじゃまた後で、アニキ」


 「おう」











———————————————————————————











 「いやー、意外と見つからねーもんだな」


 俺は今、木の上にいる。

 葉っぱも枝も多いので、気配さえ遮断すればこっちのものだ。


 「この感じ、今までここを使ってたやつがいるな。この太い枝加工されてるし」


 居心地がいい。

 よし、ここを俺の拠点としよう。


 「………で、あるからして………」


 「お?」


 声が聞こえる。

 授業をしているようだ。

 それもそのはず。

 ここはリンフィアの所属する総合魔法科第三学年一組の教室の前なのだ。


 亜人も結構いるな。

 うちにもいるけど。

 前来た時は中あんまし見てなかったが、中々癖の強そうなクラスじゃねーか。

 

 「………」


 「っと、風紀委員」


 気配を遮断し、周囲に紛れる。

 完全に遮断すると、そこの気配にだけ穴が空いたようになって気づかれるため、背景に徹することがポイントだ。


 「………行ったか」


 気配さえ隠したら下からはほぼ死角なので見つかる事はまず無いだろう。

 これで安心だ。


 「眠………」


 なんか最近異常なまでに眠気を感じる。

 春か?


 「………んなワケねーよな」


 流石に、これは酷い。

 俺も朝は強いほうではないが、ここまで眠気がひどいのは初めてだ。


 「原因は………チッ、あり得るな………………つーかマジで頭が回んねー………………」


 

 今回は特に酷い。

 魔力を一気に流せば刺激で起きられるだろう。

 だが、恐らくそれでは解決しない。



 「………今回は完全に身を任せるか………ぁ………」


 その刹那、俺の意識は一瞬にして刈り取られた。












———————————————————————————











 「ふぅ、こうなったか。ま、危険が迫ったら多分強制的に引き戻されるだろ」


 敵意に敏感な俺は、眠っていても反応できる。

 ガキの頃からそんな癖がついているので、万が一があっても大丈夫だ。


 「やはり………こいつは夢じゃねーな」


 魔力を感じる。

 倦怠感もない。

 仮の肉体だが、俺のステータスを限りなく忠実に再現しているようだ。


 「魂魔法ってやつの効果か。忌々しい紛いモンだな。迷惑かけやがって」


 この現象の原因は、恐らく魂魔法だ。

 神の力の模造品に、俺の中の力が反応したのだ。

 特異点同士の共鳴と似た現象だ。

 俺のステータスを再現していることを考えると、

 

 「つまりここは、俺の魂に直接投影されている幻覚のようなもの………という事は」


 この空間の中には俺にこんなモンを見せている原因となる人物が混ざっている筈だ。


 「このひっろい魂の中を探すのかー。メンドクセェ………」


 「ま、俺の魂の内部だ。いい機会だし、ちょっと楽しんでみるとするかな」


 ここでは俺の権限は現実のそれとは比べ物にならないほど高い。

 簡単に言うとなんでも出来る。

 だが、あまりの無茶をすると、俺の魂に傷が付くので、そこまで無茶は出来ない。

 なので、


 「まずは空を飛ぼう」


 ちょっとした自由だけ堪能する事にした。


 「おお、いいな飛行。炎魔法と風魔法と重力魔法を駆使しても魔法法則上完全な飛行は出来ねーからな。飛行スキル持っているやつが羨ましいぜ」


 フワリと空を飛んでみる。

 中々気持ちのいいものだ。

 空を飛ぶと言うのは男のロマンだからな。


 「にしても、俺の魂何にもねーな」


 いつか入ったトモの空間によく似ている。

 空っぽで、虚しい、まさに空虚。

 欠落者の魂に相応しい。


 だが、それでも所々色がある。

 鮮やかな色たち。

 多分これは、ここ最近に彩られた色なのだ。


 「………………だいぶ人間らしくなったってことかねぇ」


 これは、大事にするべきなんだろうな。


 「………」

 


 

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