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第28話

3人称視点です


 「そらっ!」


 「やぁっ!」


 「セイッ!」


 掛け声が聞こえる。

 賢たちがフェルナンキアについた頃、異世界から来た勇者である賢のクラスメイト達は訓練に励んでいた。


 「コウタ、握りが甘い。ユウト、お前はもう少し精度を上げろ」


 「「はい、ルドルフさん」」

 

 杉原 幸太、固有スキル【幸運】

 発動すると運が異常なまでに上がる。


  川飛 裕翔、固有スキル【飛行】

 飛行ができ、触れたものを飛行させることもできる。


 2人はそれぞれ剣と弓の訓練に臨んでいた。

 そして、訓練を行うのは男子ばかりではない。


 「マナミ、弓の引き方はこうだ。ヒナ、槍の持ち手が反対だ」


 「わかりました」


 「はーい」


 音無 愛美、固有スキル 【消音】

 自身から発生する音を完全に遮断できる。


 貫田 雛、固有スキル 【貫通】

  自身が武器と定めたものの先端が異常に貫通力を増す。


 男女関係なく毎日数時間の訓練を行っている。

 だが、やはり初心者はまだまだ時間がかかる。

 当然のことだが実戦で使えるようになるには相当の時間を要する。

 この世界のスキルレベルというシステムがあっても簡単には上がらない。

 だが、経験者は別だ。


 「お願いします」


 「行くぞッ!」


 生徒には普通の兵士と合同で行っている者もいた。

 その中の一人が蓮だ。


 「ハッ! ヤァッ!」


 次々に攻撃を加えるが蓮はそれを全て受け流している。


 「セアッ!」


 蓮は攻撃の隙をついてカウンターを放つ。

 蓮の剣技はここにいる兵士よりずっとレベルが高いものだ。


 「ぐあっ!」


 よって立場が逆転してしまっている。

 兵士はカウンターを喰らい弾け飛んだ。


 「ほう、かなりの腕だな、レン。技術だけなら私よりも上なんじゃないか?」


 ルドルフも認めるほどの腕前だ。


 「ありがとうございます」


 蓮は決して傲らず、必要以上に謙虚になったりもしない。

 そういうところは兵士たちの間でも好印象だ。


 「隊長!」


 蓮と模擬戦をしていた兵士が駆け寄って挨拶をした。


 「隊長はやめろ。今の私は勇者の教育係だ」


 「そうでした。申し訳ありません、ルドルフ殿。今しがたレンと模擬戦行っていたのですが、やはり彼は格別ですよ。SSSのスキルだけでなくこれほどまでの剣術。きっと素晴らしい勇者になってくれるでしょう」


 「フッ、そうだな。格別といえば、彼女はどうした?」


 「ハル殿は弓の指導を行っていますよ。流石は教師という感じでした。教え方はとても丁寧で何より誰にでもわかるいい指導です」


 生徒達の担任である宇喜多 春は弓道部の顧問だった。

 彼女は現役時代(本人にそう言うとメチャクチャ怒る)は全国で一位をとるなどかなりの実力者だ。

 なんでも実家に弓があって小さい頃から弓を扱っていたかららしい。

 こちらに来てからは生徒と、ついでに弓兵に弓を教えている。

 それだけの実力は備わっており、スキルレベルはなんと7だ。


 「………お前、弓兵では無いだろう」


 「あ、いや、えーっと………」


 ちなみに美人だからと言う理由で弓兵以外も指導されに行ってる兵士もいたりする。

 平和だ。


 「まったく………そうだ、魔道士系の勇者達の様子はどうだ?」


 「まだまだのようですね。ただ、やはり数名は突出した才能を持つ者もいるそうです。SSSの女の子、確かコトハという勇者は五級魔法を物凄いペースで覚えていってるそうです。なんでも初期値からかなりのコストがあって、魔法適性も適応率が高いとか」


 グリモワールにも短所はある。

 これは誰でも簡単に魔法を覚えさせてくれる本ではないのだ。

 魔法創生陣と違い、適性がないと覚えられない。


 琴葉には絶対に接近戦は出来ないだろう。

 小さい頃から運動神経が鈍かったのだ。

 ただ、想像力や何かを作り出すのは奇跡と呼べるほどの天才だった。

 もしかしたらそれがコストに関係していたのかもしれない。


 「一応見に行くか」








 ルドルフは琴葉達、魔道士系の勇者が訓練を行っている場所に移った。


 「あ、ルドルフさん、こんにちは!」


 琴葉は相変わらず元気いっぱい、といった感じだった。


 「ああ、訓練は順調か?」


 「いい感じだと思います。次で10個目の魔法ですよ」


 両手を前に出して10を強調する。


 「しし! すごいでしょ」


 「やるじゃないか。この短期間に10個とは恐れ入る」


 「でしょー! あ、休憩終わりだ。それじゃあまた練習してきます! ではでは! おーい、ななみん!」


 ピューっと風のように行った。


 「………やはりまだ子供だな。だが、育て甲斐はある」









———————————————————————————


 





 「教育係、でありますか」


 「ああ」


 聖 賢襲撃の後、ルドルフは王から勇者の教育係を務めるよう、大騎士長スカルバード伝いに命じられた。

 

 「しかし大騎士長殿、私の部下はどうなるのでしょうか」


 「安心しろ、お前の部下は私が預かる。一時的にだがな。勇者達の育成が完了するまでは私に任せろ」


 ルドルフはスカルバードに全幅の信頼を寄せている。

 彼はそれを聞いて安心した。


 「ありがとうございます。大騎士長殿」


 跪いて、感謝の意を述べた。


 「ルドルフ、勇者の育成というのはこの国で今最も重要な任務の一つだ。重大な大役である事をくれぐれもそれを忘れるなよ」


 「はっ」






———————————————————————————





 「大役、か。確かに彼らなら………」


 ルドルフは期待していたのだ。

 勇者達がいつか魔王を倒して平和を勝ち取ってくれることを。

 

 「いつかあの少年の様に強くなってほしいものだ」


 あの少年。

 ルドルフは賢の底知れない力に恐怖ではなく、尊敬の念を持っていた。

 王に虚言を言うように言われた時は非常に恨めしく思っていたが、今となってはこの場にいない事が惜しいと感じている。

 賢はルドルフ達を殺さなかった。

 そして、あの時の彼の怒りは仲間を思ってのことだった。

 ルドルフはそれに強く感心したのだ。


 「ふむ、ならば私も彼らの育成に全力を注ぐとしようか」


 ルドルフ・バルキウス。

 勇者の教育係となった彼は今日も勇者を育成するために奮闘する。

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