第278話
強化魔法の座学の授業。
教壇にはこの学院きっての熱血教師、ジョンド・ヤガネが立っていた。
彼はいつも燃えている。
それはもう眩しいくらいにキラキラしている。
雰囲気、瞳、そして頭頂部が。
ジョンドは今日もバーコードをたなびかせて授業を始めた。
「さて、途中編入して慣れないことも多いだろう。俺にもわからないことはない。うむ。慣れない土地と言うのは大変なものだ。わかるぞォ」
「………すー………すー」
「だからこそ! 最初と言うのは肝心だ。友人を作り、仲間を作り、この魔法学院で勉学を励もうではないか。いや、ハゲではないぞ?」
「………すー………すー」
「して、その中でも重要な2日目と言うわけで、、、訳だが………ヒジリ」
「………すー………すー」
今日はとってもいい天気。
気温がちょうどよく、日当たりも良かったので、ものすごく眠くなって爆睡中のケンである。
「キッサマァァ!!! 起きんか!!」
しかし、ケンは起きない。
「仕方ない………」
この国では、日本のように体罰がどうしたこうしたと騒ぐような事はまるでない。
精々貴族がそんな風にいちゃもんつけるくらいだが、それもあまりない。
拳骨、張り手、その他、結構されるのだ。
特にこの魔法学校では、指導の際に魔法を使うこともしばしばある。
傷をつけることはないが、当たるとそこそこ痛い攻撃魔法や、幻覚を見せて驚かせたりなどする。
「起きんか馬鹿者ォ!!!」
ジョンドは光五級魔法【ソーラービーム】を俺に向けて放った。
威力を弱めているが、髪の毛を焼くくらいの効果はある。
光魔法攻撃の特徴であるスピードは威力を弱めても生きているので、一気にケンの髪の毛を目掛けて飛んできた。
が、流石に敵意には勘付く。
「む………」
ケンは光魔法だと察知した瞬間、アイテムボックスからいつも修行で使っている反射魔鏡を取り出した。
弱い光魔法は鏡に反射され、ジョンドの残り少ないバーコードを焼いた。
「あっ! あーーーーっ!!! 俺の髪がァァアアア!!!!」
「アホが………………すー………すー」
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「ケンくん、流石にジョンド先生可愛そうだよー」
「確かに残り少ないバーコードを焼いてしまって申し訳ない」
割とガチでそう思った。
ドンマイ、ジョンド。
「次の授業は魔法植物の観察だねー。マンドラゴラとか見れるよー」
「お、マジで?」
それは寝ないで参加しよう。
「それにしてもさっきはよく寝てたねー。遅くまで起きてたっけ?」
「いや? そうでもねーよ。ただ、暇だったし、為になりそうもねーからな。んじゃ、次の授業に行くか」
「うん」
こっちでは特にこいつとつるむって事はないだろうなと思っていたが、ウルクと一緒にいる機会は多い。
と言うよりは、こいつが俺に付いて回ってる感じだが。
「お前、俺以外に友達居ンのか?」
「いるよー。でも、ケンくんと一緒の方が楽しそうだしねー。こんな感じで付いて回ってる訳だよ」
「さよか」
と言う訳らしい。
「さてと、授業がある教室は………ん?」
ポーンと言う音が鳴った。
アナウンス音だ。
『第三学年特科一組、ヒジリ・ケン。至急屋上へ向かってください。学院長がお呼びです』
魔法具を使ったアナウンス。
あまり向こうの世界のものと違いはない。
「って、俺か。んだよ一体。俺まだ何もしてねーよ」
「何かする予定だったんだねー。しょうがない、私先行ってるね」
「おう」
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「で、揃いも揃って何の用だ」
なんと屋上には両生徒会長、副会長と、ファリスがいた。
「そんな嫌そうな顔をするなよ。実は、頼みがあって呼んだのだ」
「頼み?」
また碌でもなさそうな感じだな。
一応、話だけでも聞いてみるか。
「この学院にクラブがある事は知っているか?」
「ああ。あちこちにポスターが貼ってあるな。それで?」
「お前には、ある部活動に入部………と言うより、その部長になって貰いたい」
何となくわかった。
新参の俺に部長を任せる部活はまず無いだろう。
そこそこプライドはあるはずだ。
という事は、
「俺が入るとして、俺しか部員がいないんだな」
「その通り」
「断る!」
「無理! もう作った!!」
なん………だと………!
「両生徒会長の許可と学院長の許可で成立だ。部員が1人でもいればクラブは成立。なに、ただで働けとは言わん」
ファリスはポケットから鍵を取り出した。
「マスターキーだ。この学院の全設備の使用を許可する」
「マジか!!」
それは結構でかい。
色々な設備があり、したい事が結構自由にできる。
「………まぁ、話くらい聞いてやる」
話を聞く事にした。




