表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
276/1486

第276話


 授業が終わり、しばらく学校内をうろうろしていると、すっかり日が暮れていたので、寮に戻ってダラダラしていた。

 最近ダラダラ出来ていなかったような気がするので貴重な時間だ。


 ミレアは相変わらず忙しそうで、部屋にはウルクしかいない。


 「で、初めての授業はどうだった? ケン君」


 「流石に座学はおもんない」


 俺は手のひらで氷の鳥を作って遊んでいた。

 氷・芸術の複合魔法【アイスモデリング】


 この魔法は氷の彫刻を作る魔法だ。

 

 「お? いい感じじゃね?」


 「おお、すごいねー。本物みたい。そういえば、リンフィアちゃん達はどうだったー?」


 「ああ、うまく馴染めてるっぽいな。リフィは緊張してたが、思ったより上手くいってそうだ。一番気がかりだったラビも無事っぽいしな」


 「無事?」


 「いや、こっちの話だ」


 年齢の変動はバレていなかった様だ。

 上手く隠せている。


 「もう1人は? ニールちゃん」


 「アイツにちゃん付けする奴は初めて見たな………アイツは心配いらねーだろ。馬鹿ってこと以外は普通に優秀なんだし」


 「はっきりしないねー」


 本当に馬鹿なのはもったいない。

 あの感じで馬鹿っていうのも貴重だと思っておこう。


 「そういやミレアは?」


 「またお仕事だって。そろそろ行事があるし、仕方ないねー」


 そういえば、俺はこの学校の行事やら予定やらは全然知らない。

 

 「なぁ、この学院ってどんな行事があるんだ?」


 「行事かー。えっと、大きいのは大体4つくらいあるよ。文化祭、魔闘祭、魔獣祭、そして1番のイベントの魔法祭」


 祭ばっかりだ。

 だがジャンルは多い。


 「でも、大きいのはしばらく先だねー。今度あるのは定期的に行われる測定だよ」


 「測定?」


 「うん。なんて言うのかな。魔力量や操作の精密度、魔法構築のスピードとかを測るんだって。たまーにこれでクラス変動が起きるんだけど、私は固定だから変わんないのだー」


 王族の特権か。

 俺には関係ねーな。


 「またケンくん誤魔化すの?」


 「仕方ねーだろ。俺が本気で測ったら、使う魔法具全部ぶっ壊れるぞ」


 「ぶっ壊れるんだ………」


 「しかし測定なぁ………サボるか」


 「いやダメだよ!?」


 ちっ、その場の流れでオッケーかと思ったのに。


 「大丈夫だろ。いなくて困るのは、ファリスだ。簡単にクビにはしねーだろうぜ」


 「いやいや、そう言うわけにもいかないでしょー」


 「えー、めんど————————————」




 キィィィンン………



 耳障りな高い音が聞こえた。

 いや、違う。

 音だけではない。






 『    』







 声が、聞こえる………?


 そう認識したのとほぼ同時に、背筋が凍る様な嫌な感覚を受けた。


 「!?」


 俺はバッと立ち上がる。

 索敵、魔法感知を発動するが、近くに敵らしき影はない。


 なんだ今の。


 考え得る可能性は、意識の共鳴、感覚共有、念話、いや、考えれば考えるほどキリがない。

 

 「あー、キンキンするよー」


 「!? お前も感じたのか?」


 「うん。これ怪しい現象じゃないらしいよ。この時間帯はここら一体の魔力が高まるから、私たちの魔力に共鳴して高い音が聞こえるんだって。えっと確か………」


 「魔力の波紋共鳴か………」


 こんな風に魔力を使う人が多く集まる場所でよく起きる現象だ。

 これはそうなんだな。


 「そうそれ!」


 「そうか………」


 そうなのか?

 いや、待てよ。

 こいつはそもそも、あの声は聞こえていたのか?


 「ウルク」


 「うん?」


 「お前は、あの声が聞こえてるよな?」


 「声?」


 「!」


 なるほど。

 だったらこれは波紋共鳴ではない。

 あれに個人差など無いので、声の様なノイズが入ったなら全員等しく聞こえる筈だ。


 何か、もしくはだれかが強い魔力を発したことだけは確かだ。



 「ちょっと出かけてくる」


 「うん? こんな時間から? まぁいっか。いってらっしゃーい」









———————————————————————————










 俺は屋上へ向かった。

 時間も時間なので、人はいない。

 鍵を借りるのも面倒なので飛んで来た。


 「ここは、マギアーナが一望できるな」


 普通に景色を楽しみたいところだが、今はやめておこう。


 「さて、考えるか」


 いかんせん情報が少ない。

 結論を急ぐ必要性もないのでゆったりいこう。


 あれは魔力の波紋共鳴ではない。



 と、考え出した直後、屋上の扉が開いて、人がやってきた。


 「君は………」


 「? 誰だお前」


 この学院の生徒のようだ。

 それにあのバッジ。

 おそらく生徒会だ。

 しかし、微妙に違う。

 それに金色だ。


 「生徒会長か?」


 「参ったな………そこそこ顔は知られていると思っていたんだが、ああ。俺はこの学院の第二生徒会会長、イシュラ・ノゼルバーグだ」


 「!」


 その名前には聞き覚えがあった。

 確か、


 「テメーか、俺を引き抜こうとしたヤロウってのは」


 「じゃあ、やはり君は転入生のヒジリ・ケンか………!」


 イシュラは走って俺の前に駆け寄った。

 そして、深々と頭を下げてこう言った。


 「頼むッ! さっきの声を調べているんだったら………」



 声!?


 どうやらここ男にも聞こえていたらしい。

 つまり、聞こえる者とそうでない者がいる。


 そう考えていると、次の瞬間、


 「調べるのをやめてくれ!!」


 そう言ったイシュラの声には焦燥が入り混じっていた。


 少し事情を尋ねるか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ