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第272話


 「おや、ケン君今度は力をセーブしてるのかー」


 例によって、トモがケンの様子を眺めていた。

 トモの記憶では、ケンが今まで力を隠した事はなかったので、珍しい事もあるものだと思って見ていた。


 「それにしても魔法学院か。おそらく魔王の仔達を育てるためだと思うけど、よりによってあそこかぁ………」


 トモはくるくる回りながらうーんと唸っている。

 当然、形だけで、本当に悩んでいるわけではない。


 「あれは、ケン君の主義に反しそうだねぇ。ま、それもまた一興、では済まないだろうね」


 トモはケンをじっと見た。

 見た目はどう見ても普通の少年だが、その知は、思想は計り知れない。

 これは一体何を考えているのだろうか。

 知を司る神の考えることはきっと誰にも理解できないのかもしれない。

 もしかしたら、思ったより単純なのかもしれない。

 

 なんにせよ、それは誰も知り得ないのだ。


 「なんにせよ、僕は干渉できないし、ケン君に行く末を見てもらおうかな」


 くるくると回って着地する。


 「だから僕は今回も眺めるだけ。さて、高みの見物と決め込もうかな」


 







———————————————————————————










 「おお………いつ見ても凄まじいな、ガリウスの魔力は」


 「やっぱり魔力量は多いもんね」


 「不良のチンピラだが、そこは認めないとな………」



 ガリウスはお世辞にも好かれているとは言えない。

 授業サボるわ、喧嘩するわ、先生に反抗するわで問題ばかり起こしている。

 しかし、最低限の規定は守っているし、試験には合格しているので、降格や退学にはなっていないのだ。


 そしてこの魔力量。

 嫌われていても、一目は置かれている。



 「へっ、凡人ども。よーく見てろ。これが俺の最大火力だァアッ!!」


 ます身体強化から行う。


 「『その肉体は鋼となり、神速を得る。人の限界を越え天上に至らん【カルテットブースト】』!!」


 精度と威力を確実にするため、詠唱をする。

 そしてもう一度詠唱を行う。


 「『荒ぶる炎よ。憤怒のままに燃え上がり、我らを阻む壁を貫け【プロメトスピア】』!!」



 炎二級魔法・プロメトスピア。


 超高温の炎を投擲槍に変質させ、使用者が直接投げる魔法だ。

 身体強化により、投げる威力が上がれば威力は格段に上がっていく。



 「おッッッッッらァアアアアアッッ!!!!!」



 流石に慣れたもので、綺麗なフォームでまっすぐ投げていた。

 そして、



 パキキッッ………!!!



 中心から障壁を突き破り、威力が衰えないまま30枚以上貫いた。


 「おお!!!」


 「相変わらず凄まじい………!」


 「最高記録更新なるか!?」


 周りからも驚嘆の声が上がっている。

 ミレアもこれをじっと見ていた。



 なるほど、いい魔法だ。

 単純だが、威力が出る。

 一個ずつ段階を踏んで魔法を使えるので、並行していくつも使うよりは、一つの魔法に集中できる。



 「ハハハハハッッ!!! 行けやオラァア!!!」


 

 槍は半分を過ぎて少し進んだところで漸く動きが止まった。


 「どうなった!?」


 「50枚超えてるよね!?」


 「当然だろう。いつもそこは切らなかった」


 「ついに60行ったか!?」


 教師が枚数を記録する。

 そして、発表された。


 「ただいまの記録………………61枚!! 新記録です!!」


 「ッッッしゃァア!!!」


 見たかと言わんばかりに拳を突き上げ、勝ち誇った顔で俺をみた。

 だが、勝ち誇られて当然だ。

 制限がある以上、これは油断できない。



 「くっ!! まだ上げてくるか!!」


 ローゾルは悔しそうにそう言う。


 「こりゃ決まったかなー」


 シャルティールは諦めたかのように俺を見ながらそう行った。


 「それでは、次」

 

 はい、俺の番だ。




 「お、新人の番だ」


 「いや、今回は無理っしょ。つーかいっても3,40枚くらいじゃない?」


 「補助だしなぁ。物理障壁と魔法障壁で変えられるこの試験じゃ不利だろ」


 皆基本的に魔法で壊そうとする理由は、武器が安いことと繋がってもう一つあった。

 それが、物理障壁だ。

 防御魔法は、物理と魔法に分かれる。

 物理障壁は物理攻撃に強く魔法に弱い。

 魔法障壁はその逆だ。

 なので、安物しか使えない以上、極端に不利になる。



 「と、思うんだろうなぁ………」


 物理障壁は、ある欠点がある。

 魔法障壁にも欠点はあるが、物理の方が弱点をつきやすいので、こちらを選択した。


 物理障壁が何故物理攻撃に強いかと言うと、単純に硬いからだ。

 硬い物質としてそこに現れる。


 ただ、魔法障壁だと、魔力そのものに抵抗する触れられないバリアみたいなものなので、物理攻撃はすり抜ける。


 なので、この試験では武器を使えば物理障壁にするのだ。

 変に纏わせれば武器が保たずにお陀仏である。


 対人戦闘の際は基本両方を重ねて使用する。

 モンスターは使い分けても戦えるので、重ねて使うことは滅多にないのだ。



 「さて、法則に則って、軽く障壁を破らせてもらおうかなァ………」


 俺はニッと笑った。

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