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第266話


 教室に向かう前に、俺は待合室に向かう。

 授業が始まる前にある朝礼で紹介するために時間を置く必要があるらしい。

 転校生あるあるだ。


 今向かっている待合室に、朝礼の時に俺に付き添う教師が待っているらしい。

 しばらくはそいつとそこにいる事になる。


 「って、何でお前付いてきてんだ?」


 「ん?」


 待合室に向かっているのだが、ウルクがいる。

 何でも、俺を案内すると言っているのだが、俺の方が道を覚えているので、どちらかというと俺が付いて行っているというよりは、俺に付いてきているのだ。


 「まーまー、細かいことは気にしないでよ」


 「いや、お前普通に授業遅れるぞ」


 まさか俺がそんな注意をするとは。


 「大丈夫!」


 ウルクは自信満々にそう言った。

 何か理由があるのだろうか?

 例えば、俺の付き添いをすると言っているとか。


 そう思ったが、


 「王女なので!」


 全然違った。


 「いや、王女関係ねーだろ」


 「そうだぞ。そろそろ戻れ、ウルク」


 この声は………


 声の方を見ると、そこにはファリスがいた。


 「来たな。おはよう、ケン」


 「へぇ、まさかアンタ直々に来るとはな。特科はそんな感じなのか?」


 「ああ。特別魔法科は私は直接推薦し、入学させたもの達の集いだ。ならば、転入生が入ったら私が付き添うのが筋だろう?」


 たとえそうでも、向こうの世界では普通そこまでしない。

 担任が普通に紹介して終わりだ。

 その辺は何というか律儀なんだな、と思った。


 「当然、そこにいるウルクも一緒だ」


 「ちなみに、私の場合は完全に裏口入学だよー。実力じゃまだまだこの科の人たちに及ばないしねー。唯一張れるのは回復魔法くらいかな?」


 そういえば、出会った頃は魔法使いを名乗っていたことを思い出していた。

 ここにいる連中に張れるレベルに魔法が使えているのに、あんなにボロボロでMP切れ気味だったってことは、よほど長い時間休まず戦っていたのだろう。

 それもそうか。

 いつ追っ手が来るかわかったもんじゃないし。


 「いや、そうでもないぞ。お前には魔法を扱う素養は十二分にある。少なくとも、その辺の魔法使いよりはずっとな。自信を持て。そうすればもっと上を目指せるはずだ」


 「へぇ、そうなんだ………じゃあ、頑張ります!」


 おぉ、燃えているな。



 「それじゃあ、早く戻っておけ。定時までに着席しておかないと、ミレアがうるさいぞ」


 「確かに! じゃあ、ケンくん頼みまーす!!」


 ウルクはそう言って教室へと走って行った。


 「騒がしい女だ」


 「そうだな。全く、おてんばな王女だ」


 今、ウルクを王女って言ったか?


 「言いたいことはわかる。お前が思っている通りだ。アイツの素性は知っているよ。逆にお前がそこまで知っているのが疑問だ。アイツのことだから部屋でうっかり口を滑らしたと思うんだが」


 「半分正解だ。部屋でじゃなく、以前会った時にあっさりバラされた。注意しねーと、アイツ口軽そうだからあっという間に広まるぜ」


 「そうだな」


 ははは、と呑気に笑っている。


 「お気楽だな。他国の王女を匿うって問題だろ」


 「ああ。問題だ。大問題だな。しかし、アイツにはリスクを負ってでもここにいて貰わねばならんのだよ。色々あってな」


 ファリスはそれ以上この事について語ることはなかった。

 だが、間違いなく大きな何かを抱えている事は、目に見えて明らかだった。

 そしてそれは、アイツの野望と重なっている様な気がする。


 「お前もいよいよだ。緊張するか?」


 「しねーよ。そういや、リフィ達も今日からだよな。アイツらはどうだ? 緊張している様子か?」


 「今日は会っていないから分からんが、まぁ、緊張はしていそうだな。昨日の歓迎会でリンフィアは少しドキドキすると零していたぞ」


 初めての学校だからか。


 「そうか。楽しめるといいな。アイツらは」


 俺がそう言うと、ファリスは何かを懐かしむように遠くを見ていた。


 「………」


 その眼には懐古の情以外に小さな何かが隠れていた。




 「お前、本当に仲間思いだな」


 「んー………そうだな。俺にとって、アイツらや蓮や琴葉達………ダチや仲間は命よりも大事なモンだ。人が自身の命を大切にするのと同じように、俺はアイツらを大切にしたい」


 今ここまで強くなっているのは、その為だ。

 

 「命より、か。その眼………お前はきっと、彼らの為に命を投げ打つことを厭わないのだろう」


 「ああ」


 そうして、俺たちは時間が来るまでしばらく語りあった。

 





 


 



———————————————————————————












 時間が訪れ、俺たちは教室の前まで移動した。

 今更だが、異世界に来てまで学校にいるとは、妙な気分だ。


 「じゃあ、先に入るから、合図をしたら入ってこい」


 「わかった」


 こうして、俺は今日からクラスメイトとなる連中と、ついに顔を合わせる。

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