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第256話


 「な——————」


 ミレアは果たしてどちらに驚いているのだろう。


 いきなりレイが俺に襲いかかって来た事にだろうか。

 それとも、ポケットに手を突っ込んだままレイの攻撃を簡単に避けまくってる俺にだろうか。


 まぁ、多分どっちもだ。


 「つっても、俺も十分驚いているんだけどな………」


 なんだこいつ。

 どうでもいいが剣の腕はいい。

 おそらく服装からしてこの学園の生徒だ。

 そして、よく見れば首元にバッジが付いている。

 ミレアのバッジと同じ形の色違いだ。

 こいつは生徒会だろう。

 それにしても、生徒会は強い奴が多い。

 これならリンフィア達にもいい刺激になることだろう。


 「なっ、なんなんだこの男………何故当たらない!!」


 さて、そろそろ終わらせるか。


 「寝みィ攻撃だわー。強化なしで俺に攻撃当てられるやつはとりあえずこの国にはいねーよ。出直して、こいッッ!!!」


 俺は木剣を掴んで魔法で爆破した。

 高密度の狭い範囲での爆破なので周りに影響は出ない。


 「馬鹿、な………木剣とはいえ、私の剣を素手で………貴ッ様ァ………!」


 「やめなさい」


 レイの背筋がピーンと伸びた。

 なんとなく察していたが、この反応で確証を得た。

 この生徒は俺がミレアをナンパしているのだと思っていたらしい。

 

 「しっ、失礼しました! その、また例のごとくお姉様に言い寄る男どもかと。この距離感で男と歩いていた前例がなかったものですから」


 こいつ、ナンパヤローなら片っ端から斬り刻んでいるのか?

 あぶねーヤロウだ。

 つーかこいつ今お姉様って言った?


 「レイ、彼は転入生ですよ。いつもの様な私に言い寄る男とは違いますから、襲わなくてもいいのですよ。それと、ここでは会長と呼びさない、ウェルザーグ副会長」


 「はっ、失礼致しました。ロゼルカ会長」


 何という主従関係。

 生徒会とは一体………


 「申し訳ありません。不快な思いをした事でしょう」


 「いや全然? 適度な刺激は人生を楽しく過ごすために必要だしなー」


 チラッとレイを見ながらそう言った。

 全然と言ったが、流石にいきなり襲われたらいい気はしない。

 これくらいの仕返しなら許されて然るべきだ。


 「このっ………」


 「やめなさい、仕掛けたのは貴方でしょう。ケン君もあまりからかわないように」


 俺はおざなりに返事をした。


 「お仲間さん、待っているのでしょう? 行ってあげてはどうですか?」


 「そうさせて貰うわー」


 リンフィア達の結果も気になるので、さっさと向かうとしよう。

 だが、その前に俺は一言だけ言っておくことにした。


 「………」


 「睨むな睨むな。可愛い顔が台無しだぜ?」


 「ふざけるな。私は男だ」


 「なるほどね………どういう事情かは知らんが、まぁあらかた察しはつく………オーケー、男な。そりゃ失礼」



 俺はすれ違い様にレイの耳元でこう呟いた。



 「またな、レイ・ウェルザーグ()()()



 「——————」



 レイは驚愕の表情を浮かべ、俺を見ていた。

 目が合う。

 そして、レイは気がついた。

 俺が()()()()()()ことに、気がついた。










———————————————————————————










 「おっす。結果はどうだった?」


 「全員合格でした!」


 当然の結果だな。

 不合格はありえん。


 「クラスはどうだ?」


 「私とラビちゃんは上等で、ニールが特等でした!」


 「ほー」


 まずまずの結果だ。

 でも結果的には良かったのかもしれない。

 いきなり特等じゃ付いていけないかもしれなかったが、上等ならおそらく付いていけるだろう。

 俺の勝手な想像だが。


 「なるほどな。ま、受かって良かったな。おめでとう」


 「それで、何故お前は襲われてたんだ?」


 「レイってやつが勘違いしてたらしい。俺がミレアを口説いてるって」


 「………」


 ニールはジトーッとした目で俺を見ている。


 「ンだよ」


 「本当は口説いたんじゃないのか?」


 「テメーは俺をなんだと思ってんだ。そんな節操なしじゃねーし、そもそも女を口説いたことは一度もねーよ!」


 「まぁ、誤解は仕方ないとして」


 こいつ失礼だなオイ。


 「さっきダダ漏れで飛び出して行ったのはやっぱりアレか………その………アイツはあそこにいる生徒会長のことが、すす、好きなのか?」


 「照れながら言うなよ」


 「う、うるさいっ!」


 ここまで純情なやつを俺は他に知らない。


 「えー! そうなんですか!? へぇ〜、なんか素敵ですね!」


 リンフィアのこの反応がノーマルに近い回答だろう。


 「ししょう、おなかすいたぞ」


 このガキは放っておこう。

 俺はサンドイッチを与えて放置した。


 「好き………ん〜、難しい質問だな。普通ではないよな。何というか………」


 「普通じゃない?」


 「ああ。だって女同士だぜ?」


 「「………」」


 リンフィアとニールは固まった。


 「おー、ほうはほは(そうなのか)


 ラビがサンドイッチを食べながらそう言った。

 汚い。


 「行儀わりーなテメーは。喋んな馬鹿」


 「もごもご」


 「「えぇ!?」」


 リンフィアとニールは声を揃えて驚いていた。


 「あ、お前らあいつから男って言われて素直に信じた口か? よく考えろ。男が苦手なミレアが、会長補佐みたいな役割の副会長を男にすると思うか? そもそも生徒会自体男子禁制なんだぜ? それに、顔や体つきはよ〜く見ると女子だ」


 「うーん………」


 「曖昧だ………」


 「曖昧にしたのはわざとだ。完璧な男装って難しいだろ? だから、わざと中途半端にして性別を尋ねられたら男って言うんだ。そうしたら、あいつは女子っぽい男子って事になる。完璧に男装したら、万が一ボロがでたら目立つだろ?」


 「なるほど………心理的にこれ以上複雑になっていないと思わせてるんですね」


 「よくわからんかったな」


 脳筋め。

 簡単に言うと、めちゃくちゃ男っぽいやつの女子っぽい部分と、中性的なやつの女子っぽい部分だとどちらが目立つかと言う話だ。

 誤魔化すために後者でいこうとしたのだろう。





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