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第253話


 「くっ………」


 幸いまだ傷は浅い。

 ニールは一度体勢を立て直した。


 「フン」


 レイは悠々とそれを見ている。

 明らかに挑発している。

 さっきのお返しと言わんばかりだ。

 すると、


 「どうした? 私を倒すのではなかったか?」


 「こ、ンのッッ!!!」


 ニールは再び飛び出し攻撃………と思いきや、


 「何ッ!?」


 レイの手前で急ブレーキをかけ、剣を突き立てる。

 そして、



 「喰らえ!!」


 土属性魔法剣、【グランドブレード】を使い、地面を崩す。

 レイは、不意打ちと言うこともあり、一瞬の隙を作ってしまった。

 ニールはそれを見逃さない。


 「ハァッ!!!」


 強化魔法で足を重点的に強化、回し蹴りで横腹に一撃を加える。


 「ゥぐッッ!!!」


 レイは咄嗟に衝撃を横方向にいなし、和らげた。

 お陰で骨折は免れた。


 「これでチャラだ」


 「この女………」


 レイの雰囲気が変わる。

 本気になったらしい。

 低く構え、剣を顔の横まで持ってくる。


 「!」


 ニールは防御体勢をとった。

 その間に、魔力が鋒に集まっていく。

 そして、



 「【風貫(かざぬき)】」



 剣を前に突き出す。

 鋒に溜まった“風”が押し出され、超スピードでニールに向かった。



 「マズイ、ッッ!!!」



 防御ではダメだ。

 貫かれてしまう。

 

 だから、風には風だ。


 「【ウィンドソード】」


 風同士をぶつけ、威力を弱めた後に、


 「ふぅッッ!!!」


 往なす。

 風貫は後方へ散って行った。


 「チッ、これを初見で止めるか………」

 

 「ハァッ、ハァッ………」


 往なしたとは言え、ダメージはある。

 ニールは初見で防ぐ事が出来たので良しとし、構え直した。


 「かかってこい、剣天候補。新人にここまで手こずっていちゃあ、彼女のようにはなれんぞ」


 「口の減らない………!」


 レイは【サイクロンブレード】を使う。

 剣を中心に巨大な竜巻が発生した。


 ここまで見てわかったのは、どうやらレイは風属性が得意だと言うことだ。

 だから、ニールはあえて炎で戦う。


 ニールは剣に黒炎を纏わせた。


 「炎が残れば私の勝ちで、消えればお前の勝ちだ。単純でわかりやすいだろう?」


 「馬鹿が、貴様の炎なんぞかき消せないと思ったか!!」


 剣を交える。

 剣に纏わせた黒炎と竜巻にどんどん魔力を送っていく。


 「こんなもの………!」


 徐々に均衡が崩れていく。

 ニールの炎が優っているのだ。


 「黒炎を、ただの炎だと思ったか? 侮るなよ人間。この黒炎は、黒竜ヴァルヴィディアの炎だ………!」



 競り勝ったニールは剣を弾く。

 レイは体勢が崩れ、後方へ大きく仰け反った。

 大きな隙だ。


 「貰った!!」


 「甘いッ!!」


 レイはそのまま飛んで一回転し、すんでのところで剣を持っていきギリギリガード。

 そのまま攻撃を続けた。






 だが、それ以降戦況はあまり変わらなかった。

 決定的に攻めきれていない。



 「互角………? この私が新参と互角だと………!? それに女に………」


 グッと拳を握りこむ。

 レイはこの事実にショックを受けていた。


 (女? ああ、こいつは男だからか)


 ニールは男だからどうとか女だからどうとは考えていない。

 強い方が強いから弱ければ負ける。

 引き分けても仕方がない。

 最近思考がやわらかくなったニールはそう思った

 そこまでショックを受けていない。

 しかし、負ければ悔しい。

 負けても仕方はないが、絶対に負けたくはない。

 それに、わずかに差のある今のままだとジリ貧だ。


 「ここままじゃラチがあかない。こうなったら………」


 剣がない状態でも、ステージクオータくらいならなれる。

 ニールは魔力を解放しようとした。

 すると、




 ゾクリ




 「!!」


 レイから何かを感じた。

 そして理解する。

 こいつにも隠し球があるのだと。


 「私に………敗北は許されんッ!!!」


 「来る………ッ!!」


 レイに妙な力を感じる。

 

 (光………?)


 その瞬間だった。


 




 「そこまで」



 ニールとレイは一斉に同じ方向を向いた。

 そう言ったのはマルゴではない。


 「誰だ?」


 そう言いつつ、ニールはある事に気がついていた。

 それは、彼が先刻の闘気の持ち主だと言うことだ。


 「どーも。俺はここで教員をやってるファルグってモンだ」


 灰色髪で咥えタバコ。

 顎に少しだけヒゲがあって、服装はぐちゃぐちゃ。

 こいつは本当に教師かと疑うような風貌だ。


 「悪いが模擬戦は終了だ。ある程度実力も測れたし、いいっすよねマルゴ先生」


 「はっはぁ、そうですね。ここいらでやめておきましょう」


 ニールはふっと息をつくと、魔力を緩め剣を納める。

 正直勝負がつかなかったのはモヤモヤするが、ここで止めていなければ殺し合いになっていたと思うので、大人しくやめる。


 「なぜ止めるのですか先生。私はまだ負けては………」


 ファルグはレイの肩に手をおきこう言う。


 「()()は使うなと言ったろうが。こんなどうでもいい事で使うようなシロモノじゃあない。それに、あっちの嬢ちゃんも隠し球は持っていたようだからな」


 (見破られているか………!)


 「ここで妥協しろ。心配せずとも一回分けたくらいじゃ、ミレアはお前を見限らねぇよ」


 「そう………ですか」


 レイは剣を納めた。

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