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第235話


 その後、琴葉は地上じゃあまり売られていないグリモワールを買った。

 リンフィアは何を買おうか検討中である。


 「お前は魔力を練るのがまだ若干遅い。急激に力をつけたせいだろうな。これ使って練習しろ」


 俺は店の魔法具をリンフィアに渡した。


 「………」


 「ん? どした?」


 「うーん、私って、今度魔法学校に入るんですよね?」


 「ああ」


 「でも、魔族って魔法学は学ばなくてもいいって誰かが言ってたんですけど………」


 「いや、勉強していて損はない。それに、必要ないのは魔法の習得のため勉強だ。向こうじゃもっと広い分野を学べる。お前はそう言う部分を身につければもっと強くなれるし、生きる上で困ることも減るだろうぜ」


 「なるほど………」


 魔族は魔法の習得に魔法創生陣を用いる。

 しかし人間と違い、魔法の理論を一から理解する必要はない。

 彼ら魔族には遺伝子レベルで魔法の知識が植え付けられており、必要なのはその補助的な知識だからだ。

 だから、創生陣を使った場合は魔族の方が早い。

 それでも、二級以上の上位の魔法は、その補助が膨大で、 さらに実力がないと覚えられないので基本大部分はここで躓く。

 だから、勉強してその面をカバーすればいい。

 勉強しなくとも習得できるやつは習得できるが、するに越したことはない。


 「じゃあ、頑張って勉強します!」


 「おう、その意気だ」


 俺たちは顔を見合わせて笑った。

 それをジーっと琴葉が見ている。


 「むー、そこは私の位置だったのにぃ」

 

 「あ? 何言ってんだ?」


 「ケンくん、それは………」


 リンフィアはその先を言わなかった。

 キュッと口を閉めて踏み止まったかのように。



 「………ケンちゃんの横は私の特等席なんだもん」



 琴葉は俺に聞こえない様にそう言うと、頰をリスみたいに膨らませた。


 「うお!? なんだなんだ。怒んなよ、琴葉」


 「いーーっっだ! ケンちゃんのバーカバーーーカ!!」


 「いや、俺に限って馬鹿ってことはないだろ」


 俺は平然とした顔でそう言った。


 「うっわ〜でた。ケンちゃんの俺頭いいです発言。ムカつくわー」


 「テメェ!!」


 「きゃー! リンフィアちゃんたすけて!」


 琴葉は素早くリンフィアの後ろに隠れた。


 「え!? あの………」


 「こいつ人を盾にして………」


 暴れ回ってやろうかと思ったが、婆さんが眼をギラつかせているのでやめておいた。


 「助かったよリンフィアちゃん!」


 「あんまりケンくんからかっちゃダメですよ」


 「にしし、わかってるって〜。おばあちゃん、さっきのグリモワール見せてー!」


 「………」


 「どうしたリフィ」


 「ケンくん、よっぽど好かれてるんですね」


 リンフィアはじっと前を見ている。

 琴葉のことか。


 「まー、好かれているというか懐かれてるというか。長ェ付き合いだしな。幼馴染の中でも琴葉と蓮は特別だ」


 「特別?」


 「ああ。機会があれば、お前にも話してやる。言っとくが、それ話すのはよほど信頼してる奴だけだからな。誰にも言うんじゃねーぞ」


 「信頼………えへへ、はい」


 


 





 



———————————————————————————










 

 魔法具店を後にし、今度は鉱石屋に入った。

 ここは鉄はもちろん、ルビーやダイヤなどの宝石になる鉱石や、ミスリルなどの特別な鉱石も取り扱っている。


 「おっさん、鉄とアルミとチタン、あと鉛と銅とミスリルが欲しいんだが………あ、それと」


 俺は必要な金属材料を全て言った。


 「どれくらいだ?」


 「これくらい」


 俺は大体の量を計算してメモった紙を店主に見せた。


 「白金貨2枚で可能な限りこの比率の分くれ」


 「はく、ッ!? ちょっと待ってろ!」


 店主は奥へ行った。

 在庫を調べるのだろう。


 「そんなにたくさん買ってどうするんですか?」


 「俺馬車ダメなんだよな」


 「はい、すっごいですもんね」


 俺は馬車でクエストに行く時、かなり危ない顔色をしているところをリンフィアはよく見ているのだ。


 「だから移動手段としてバイクっつー俺の世界の乗り物を作る」


 「ばいく?」


 「ああ。まぁ燃料は魔力にするつもりだから完全に一緒じゃないがな。あとは、車だ。バイクじゃ全員は乗っけられねーから」


 と言っても、アイテムは収納できるので、車はスピードや操作性を重視した物を作る。

 部品は完全に手作業で作ることになるが、最近やっと魔法による金属加工の効率化を完璧にマスターしたので、あまり時間はかからないだろう。

 

 「とにかく移動が便利になると思ってくれればいい」


 「なるほど」


 「兄ちゃん、ちょっとこい」


 店主が手招きをした。

 残っている在庫を見せてもらった。

 白金貨2枚分確かにある。

 俺はきっちり全部買い取った。

 人生最大の大人買いである。


 

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