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第234話


 「どうしてだい、僕ちゃん」


 「今までこの書に触れた人間は聖属性を持つに足る人間はいなかった。だが、こいつは条件を満たしている。リフィ、お前はもう一人聖属性を使える人間を知っている筈だ」


 リンフィアは頭に手を当て、誰だろうかと考えた。

 聖属性。

 魔族が決して手にすることがない魔法だ。

 だが、リンフィアは最近聖属性を目にしている。


 「あ、レンさんの剣。確か聖属性でした!」


 「そう。勇者の中でも飛び抜けた適正(適性)を持っているのがこいつらだ」


 「む? このお嬢ちゃん、最近巷で噂の勇者なのかい!?」


 「ああ」


 「そうかい………これが本当に聖属性だとしたら、確かにこの嬢ちゃんは適正(適性)があるかもしれないねぇ。おとぎ話の勇者も聖属性を身に宿したと聞いておる」


 おとぎ話ではない。

 気が遠くなるほど昔の出来事だが、それは俺たちの前の代の勇者の話だ。

 伝わっている話は少なく、それもかなり歪曲した物だが、勇者がいたのは事実である。


 「よし、これ買う。いくらだババァ」


 「あの聖属性のグリモアだ。白金貨が欲しいねぇ」


 チッ、強欲ババァが。


 「じゃが、老い先短いわしの中に、聖属性魔法を見てみたいと言う気持ちもある。嬢ちゃんが使えたらそれをタダでくれてやろう」


 「いいの!? おばあちゃん!」


 「使えればの話じゃ。ほれ、さっさと覚えんか」


 婆さんは琴葉にグリモワールを渡した。

 グリモワールは、本を閉じた状態で魔力を流せばあとは自動で魔法を習得する。

 

 「じゃあ、いくよ」


 琴葉はふぅっと息を吐いて、魔力を流した。

 すると、グリモワールが宙に浮いて、独りでにページをめくり始めた。


 「聖属性………初めて見るグリモワールの魔法習得がこんな凄い魔法なんて、なんか得した気分です」


 魔族は全魔法に適性がある代わりにグリモワールが使えない。

 創生陣を使う際にかかる手間は人間よりも格段に少ないし、無詠唱や短縮は習得しやすいが、単に魔法を習得すると言う意味なら人間の方が早かったりする。

 しかし、人間程に魔法を勉強する必要はないので、やはり魔法関係では魔族の方が優秀だと言える。

 人間は適性がなければ使えない魔法もあるのだから。


 だからこそ、琴葉は異質なのだ。

 適正(適性)のある者は創生陣で魔法を覚える際も不適正の者(適性のない者)よりも習得が早い。

 琴葉は魔法を使うのにかなり向いている。

 

 「………よかったな。お前はもう、無力じゃ無い」


 「なんの話ですか?」


 「なんでもねーよ。それとリフィ、間違ってもこの魔法は食らうなよ」


 「分かってますよ。聖属性を魔族が食らうとものすごいダメージですし、隠してるツノや尻尾なんかも出て来ちゃいます」


 ツノはいつも被っている帽子があるので誤魔化せなくないが、尻尾はアウトだ。

 羽も背中がボコボコ動いてるのをみられるとマズイ。


 「!」


 グリモワールが最後のページをめくり終わって、パタンと閉じた。


 「むむ、出るぞ!」


 「あ、あれ………」


 グリモワールは琴葉の目の前まで移動した。

 そして、次の瞬間にボロボロに崩れ去った。



 「あれって………」


 「ああ………適合したぞ!」


 

 琴葉の足元から魔法陣が現れる。

 陣は琴葉を透過して上へ上がっていく。

 頭を通って陣は消滅した。

 これで習得完了だ。


 「お嬢ちゃん、本物だったんだね。わかった。タダでいいよ」


 「やった! ありがとうおばあちゃん! それで、どこで魔法を見せればいいの?」


 「ここでいいよ。今から目の前の棚に魔石を置くから、その魔石を撃ち抜いてごらん。心配せんでも結界を張るから余計なもんは壊れん」


 「わかった!」


 婆さんは商品を退かせてそこに魔石を置いた。

 結界を敷いて、周囲の壁を守った。


 「いつでもいいよ」



 魔力を練っていく。

 琴葉は腰に下げているステッキを手に取り、前に構えた。


 「『神より賜りし光の力、邪の者を浄化せよ【パージスフィア】』!」


 半透明な球体が現れる。

 琴葉はステッキを振って、魔法を飛ばした。

 すると球体は、魔石にぶつかった瞬間、少し膨らんで魔石全体を包んだ。

 球体は乱回転し、周囲の魔力を震わせた。

 そして、


 「こっ、これは!?」


 一気に弾け、内側にあった魔石の大部分を削った。

 もはやかけらしか残っていない。

 結論から言うと、結界は不必要だった。

 何故なら、この魔法は、対象以外のものは一切傷つけない魔法だからだ。


 「【パージスフィア】。邪念などに反応して対象を攻撃する。悪人やモンスターの持つ強い悪意や敵意に反応して、攻撃を行うので、人質を取られた時などに使用すると、敵のみを排除できる」


 「す、すごい………」


 「ただ、魔族の場合はモンスターと同じ扱いになるから、善悪関係なく攻撃される。攻撃対象には、属性相性関係なく大きなダメージを与えることが可能」


 超無差別全属性キラー。

 なんと恐ろしい。


 「何で僕ちゃんそんなモン知っとるんだい?」


 「ん………」


 俺は手のひらの上にパージスフィアを出した。


 「!!」


 「使えるからだ」


 グッと握って魔法を消す。

 まぁ、これはイカサマだ。

 効果は全く一緒だが、これは神象魔法の()()()()()()()作った魔法だ。

 正確には聖属性魔法では無い。


 「ひぇ〜アンタも勇者かい。ガラの悪い勇者がいたモンだよ」


 「残りの寿命一気に縮めたろうかッ!」


 口の達者なババァだ。


 「あー、琴葉。はっきり言ってこの魔法は使える。攻略法に迷うモンスターがいれば使え。役に立つ」


 「うんっ! そうする!」


 

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