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第232話


 「そうか。ルナラージャは完全な階級制の社会なんだな」


 「如何にも。民主主義国家にいた拙者達からすると、それはもう目を疑うような事が横行しているでござる」



 命の話によると、ルナラージャの身分制度は、大まかに王族・貴族・市民・農民・奴隷に分けられている。

 決定的な違いがあるのは、王族と貴族の間と市民と農民の間だ。

 まず、王族と貴族では所有する権限がまるで異なり、政に介入できるのは王族のみとされている。

 そして、農民以下の国民は、市民以上の国民達と住む場所を分けられる。

 ルナラージャはとてつもなく巨大な城塞都市に王族・貴族・市民が集められ、農民や買われていない奴隷は地方で農作業などに強制的に従事させられているらしい。


 「お前も大変だな。そんなところに召喚されるなんてよ」


 「いや、1人で召喚されるよりずっとマシでござるよ。“迷子”なんて本当に孤独でござるから」


 「お前迷子を見たことあンのか?」


 「あるでござるが、その者は迷子同士で徒党を組んでいる様子にござったな」


 迷子同士の徒党………


 少し思うところがあった。

 亀井 久介。

 奴もまた迷子同士で徒党を組んだ様子だった。


 「どんな奴だった?」


 「ふむ………なんと言うか、胡散臭い男でござったな。それ以外では………何かを探している様子だった気がするでござる。拙者の拠点の近くに超難関ダンジョンがあるのでござるが、いつもそこにいたでござるな」


 「ダンジョン………だったら気ィつけろよ、命」


 「何故でござるか?」


 「俺は以前同じような特徴の迷子を見たんだが、そいつはどうやらダンジョンに関わる何かを探ってる連中の1人だったんだ。多分そいつもそうだ。かなり過激な連中だから、扱いは気をつけろ。それなりには強いぞ」


 何を探っているかはいくつかあたりをつけているが、この情報は公開すべきではない判断したので伏せておいた。


 「左様でござるか………相分かった。用心しておくでござる」


 「ああ。そうしとけ」


 その後は他愛もない会話をいくつかした。

 外部の日本人で友好的な奴とは初めてあったから貴重な経験だった。







 「結構話したな」


 「そうでござるな。そろそろ解散するでござるか」


 確かに、そろそろ戻らないと琴葉達も騒いでる頃だろう。


 「ああ。んじゃ、またな」


 「では、さらば。ケン殿に命の神のご加護があらん事を」


 「!」


 最後の最後に一番欲しい情報を言って帰っていった。

 嘘をついている様子はない。

 一応信用できる情報だ。


 「命の神………トモに聞かなきゃな」

 









———————————————————————————












 「ラクルか。どれどれ………げっ! 結構遠いでござるなぁ。仕方あるまい。これは拙者が賜った任務でござるからな」


 命は食べ歩きをしながらそう言った。

 すると、


 「およ?」


 通信魔法具に一本の通信が入った。


 「もしもし………ぃい!? こっ、これは国王陛下。如何なされた」


 電話の主はルナラージャ王国国王だった。


 『我の娘は見つかったか?』


 「いえ………しかし、有力な情報を得たでござる。王女の目撃情報をたった今得られたでござる」


 『そうか………ではだだちに向かうが良い。速やかに任務を遂行せよ』


 「御意」


 そう言うと、国王からの通信は途切れた。


 「ふー、緊張したでござる。毎度毎度国王との通信は神経をすり減らしてしまうでござるなぁ」


 命はフンと鼻を鳴らして、気を引き締めた。




 「では行くでござるか————————————王女暗殺に」










———————————————————————————












 「お前ら………」


 結構長く話していたつもりだが、女子達はまだ装備を見ていた。

 蓮はフィリアに付き合わされて暇ではなかったが、高橋はすでに飽きたのかぼーっとしていた。


 「おっ、聖。どこ行ってたんだよ。俺もう暇で暇で………」


 「ワリィな高橋。確かにこれはキチィわ」


 「女子ってマジで買い物長いよな。果てしねぇよ。こんな狭っちぃ店でも」


 「狭くて悪かったな」


 「うひぃぃぃぃ!! さーせんッしたッッ!!!」


 高橋は深々と頭を下げた。


 「お前ら決まったか?」


 「「全然」」


 「………」


 流石の俺もこれは黙った。

 だが、いつまでもこの店にいる訳にもいかないので、


 「欲しいの全部買ってやっから先行くぞ」


 そう行った瞬間次々と持ってきた。

 世の中の男子諸君、覚えておけ。

 女子って、結構がめついんだぜ。









———————————————————————————









 とは言ったものの、白金貨を100枚も手に入れた俺にはこの程度の出費痛くも痒くもない。


 「毎度!」


 店主は顔に似合わずニコニコしていた。

 

 「お前ら、最初からたかる気だったな」


 「いいじゃん、ケンケン。俺たちの間に遠慮なんか必要ないぜ!」


 「いや、お前はもうちょい遠慮しようか」


 俺は七海のコメカミをグリグリと押した。

 

 「ケン、私もいいんですの?」


 「ああ、遠慮すんな。今は俺の方が所持金は上だ」


 「いてててててててて!!!」


 ここで七海をリリース。


 「おおおおお………馬鹿になる………」


 もう馬鹿だろうというツッコミは今更なので言わないでおく。


 「いい戦士になるにはいい装備が必要だ。蓮の横で戦いたいのならもっと強くなれ」


 「そうですわね………ええ、そうしますわ!」


 1人だけ自分で買えというのもアレだったからな。

 さて、そろそろ俺も目的の店に行くとするか。

 

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