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第228話


 「またか………」


 誰かがそう呟いた。

 この際誰でも変わらない。

 みんなまた狭い路地通るのか、と言う顔をしている。


 「さっきのカジノは文句言ってもしゃーないけど、闇市は流石にこう言うところ通るってわかるだろ?」


 「壁に擦れて服が汚れますわ」


 「あとで魔法で掃除するから我慢してくれお姫様」


 この場所は上からは入れない。

 上から入ろうとすると、闇市の門が閉じる仕様だ。

 なのでいちいちここを通る。

 かと言って、簡単にたどり着けるわけでもない。

 路地はかなり入り組んでいる。

 その入り組んだ路地の奥は、


 「ここ、ですの?」


 一見行き止まりである。

 しかし、


 「これはカモフラージュだ。上からの侵入が無い状態でこの扉を三回叩いて、一拍おいて、四回叩く。これを二回繰り返したら………」


 俺は扉を叩いた。すると、


 「わわわっ、床が!?」


 床がずれて階段が現れた。


 「急げ。30秒で閉じるぞ」


 全員階段に押し込んだ。

 階段を下ると、廊下があった。

 その廊下を20秒ほど歩くと、


 「また行き止まり」


 俺は懐から通行許可証を取り出した。

 特定の規則に従った魔力が流れている。

 簡単に言うと、魔力が電気代わりにになったICカードだ。


 俺は扉の端にある突起に通行証かざした。

 扉が消え、とうとう闇市が姿を現す。






 「思ったより普通?」


 「まぁ、そんな物々しい感じだとお客さんが来ないだろうしね。でも、買ってる人たちは普通の人と違う気がする」


 美咲が近くにいた貴族の客や、いい装備をした冒険者を見てそう言った。


 ここは、見た目が薄暗いこと以外は普通の市場と特に代わり映えしない。

 しかし、売っている物や値段は地上のものと全然違う。

 通常では手に入れられないようなものもここなら普通に売っているのだ。



 「盗品は置いていない。ご法度だからな。法に触れないギリギリのラインで取り扱っている。王女的にもこれはセーフだろ?」


 「私は別に構いませんわよ。闇市の存在で困っている大臣がいらっしゃるんですけれど、私、その大臣が死ぬほど嫌いなんですの。違法じゃないのなら寧ろどんどん増えてもらっても構いませんわ」


 腹黒い笑顔でそう言った。

 恐ろしい女だ。

 


 「ニールは来たことあるんだよな?」


 「SSの資格を取ってすぐに知り合った商人にここの事を紹介されたんだ。ほら、通行証だ」


 持ってはいるが、使った様子はない。

 欲しいものがここにはないのだろう。


 「そいじゃ、せっかく買い物に来たんだし、そこの店から見てこーぜ」


 俺達はすぐ目に止まった装飾品店に行った。

 


 「いらっしゃい。おお、ニーちゃんかい」


 「うっす。どうだ? 繁盛してるか?」


 「おう。今日はもうそこそこ売れたぞ。ん?今日は一人じゃねぇのかい?」


 「ああ」


 「えらくいっぱい連れてきたな。ベッピンさんばっかでねーの。ニーちゃんも隅に置けねぇなぁ。ひひひ!」


 このおっさんには、ここにきてすぐの頃に捕まった思い出がある。

 正直うっとおしかったが、取り扱っている商品はかなりいい。

 腕のいい職人から流してもらっているのだろう。

 売っているアクセサリーは、市場じゃ出回らない特殊効果付きのものもあるのだ。


 「おー、これカワイイ」


 「あ、いいじゃんそれ。ななみん似合ってるよ」


 「そうかいな? へへへ、じゃあこれ買お」


 「おぉ? お嬢ちゃんお目が高いね。そいつはうちの目玉商品だ」


 「そうなんだー」


 ん? こいつ………へぇ、ちゃんと視てんだな。


 七海は鑑定をして、特殊効果の強い装飾品を選んでいる。

 他にも同じくらいのグレードのものもあるが、正直七海の好きそうなデザインではなさそうだ。

 付いている特殊効果は、“集中”だ。

 文字通り集中力が増す。

 この辺りは魔法などで試せば効果が出るだろう。

 七海のスキルにはあっている。


 「私もこれ貰えるかしら」


 「おぉ!? そっちのお嬢ちゃんもいいもん見つけたじゃないの」


 こっちは“望遠”が付いている。

 視ている場所が少し拡大できる。

 弓使いの綾瀬にはあっている。


 「エルはこれが欲しいのです!」


 「喋るモンスター!? 誰かの使い魔かい?」


 「俺のだ」


 「なるほど………だが鯨ちゃん。おじさんはこっちをオススメするよ」


 と、取り出したのは装飾されたミニシルクハットだった。


 「おしゃれなのです」


 特殊効果は水属性強化。

 鯨だからだろう。


 「欲しいか?」


 「欲しいのです!」


 バタバタと訴えてくる。

 オシャレなどしたことがなかったのだ。

 この機会に好きなだけさせてやりたい。

 


 「毎度〜」


 「そうだ、人間体でもつけてみたらどうだ?」


 俺がそう言うと、エルは人間体になって帽子を乗せた。


 「ほお〜、こりゃあ珍しい。変身するのかい。お嬢ちゃん、似合ってるよ」


 「えへへなのです」


 エルは照れて鯨に戻って、影に入っていった。


 「………なぁ、ニーちゃん。聞くだけなんだが、」


 「やらん」


 「………どうしても?」


 「天地がひっくり返ってもやらん。これ以上言うンなら」


 俺は少し脅すために【威圧】を飛ばした。


 「ぬおっ………!?」


 「わかったか?」


 「わかったわかった。おっかないねぇ。冗談だよ冗談」


 商人は額に小さく汗をかきながらそう言った。

 普通はこれで引き退るが、こいつら商人は多少脅しても食らいついてくる時があるので厄介なのだ。


 「どうかな。アンタら商売人はその辺が信用ならねー」


 「あっしはそこいらにいる商人みたくがめつくはないよ。無理そうだったら手を退くさ」


 「じゃあ、そう言う事にしといてやるが………」


 「ほれ、オマケつけちゃるから」


 商人はそう言って何かを渡してきた。

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