第200話
「おお! 龍姫! 確か絶世の美、じょぉおおっ、ッッ!!!」
ローレスのドロップキック!
ダグラスの腰に致命的なダメージ。
「こ、腰が!」
「アンタ………嫁の前でよく他の女の事で騒げるな。アンタンとこの力関係的にマズイってそろそろ理解しろよ」
「フッ………これが俺たち夫婦のかた、ちぃぃぃぃッッッ!!! 痛い! マジで! ギブギブギブギブ!!!」
今度はチョークスリーパーを決めるローレス。
結構ガチである。
「なぁ、いっつもこんな感じか?」
「うむ」
「こんなでぇすね」
ドロットとエンドールはしみじみと頷いた。
なるほど、ならしゃーないな。
「なぁ、何でアンタそんな節操ないんだ? こういう事言うの苦手だが、アンタの奥さんめっちゃ美人だぞ」
「あらあら、嬉しい事言ってくれるじゃないか」
「ケッ!! カーッ、ぺっ!! 出たな女誑し。オメーにだけは言われたくねーよ!! 自分のパーティ女だらけのクセして! あーヤダヤダ。これだから最近の若ェのは」
「ローレス、こいつボッコボコにしていい?」
「ああ、好きなだけやってくれていいよ」
ローレスはあっさりダグラスを明け渡した。
「あっ、おまっ、裏切ったなチクショー!」
「うっさいよ!! 元はと言えばアンタが他の女にデレデレしてるから悪いんでしょうが!!」
「いでででででででででででででででででででで!!!」
………もういいや。
とりあえず放っておくか。
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「あー………死ぬかと思った………」
「ダグラスさんご臨終でーす。わーい、やったー」
俺は持ってきたコーヒーを飲みながらボソッと言った。
「聞こえてんぞボウズ!! あ、無視してんなコラァ! 何飲んでんだよ! テメー!」
俺は騒いでるダグラスを無視してコーヒーを一気飲みして準備した。
「よし、行くか」
「そうだね」
「うむ」
「でぇす」
「俺の扱い雑過ぎね!?」
瓦礫だらけだが、お陰で進みやすくなっている。
穴もまっすぐ上に空いている。
空いているが………
「高いな」
一層につき10m弱はある。
多分スカイツリーより高いぞ、この城。
「こんなボロボロじゃなければ立派だったろうに。龍姫はさぞ無念であろうな」
ドロットが辺りを見渡しながらそう言った。
「………」
「どうしたでぇすか?」
「いや、やっぱアンタら流石だなと思ってな。このスピードで飛ばしたらうちのパーティでついてこれるのはニールだけだからな」
「ニールとは、あの【女王】の事か。成る程、最近の若い冒険者もなかなかやるものだ」
「あいつは中でも特別だしな」
半魔族。
それも黒竜の血筋。
戦闘特化型の魔族だ。
頭ン中は残念だがな。
「知ってたか? ドロット。あの嬢ちゃん俺らより強ェんだぜ?」
「何と! そうか………それは凄いな」
「へぇ、変な見栄は張らねンだな」
「薄っぺらい見栄を張るようなつまんねー男になる気はねぇよ。これでもSSランクだ。相手の力量くらい理解してる。初めて会った時からただモンじゃねぇって気はしてたんだよな」
「そうなのか」
「つか、お前んとこのパーティ変わり者が多いよな。リンフィアの嬢ちゃんは、ここに入る前俺に向かって魔族が認められるようにするっつってたっけ?」
確かに言っていた。
そういえば、たまに言ってるな。
いつか種族の壁を取り払えたらいいのにって。
「ま、無茶だと思ったけどよ、この前の騒動で冒険者助けまくってたところを見ると、本気なんだなって思った。人間と分け隔てなく接してるのがなんつーか………まぁ、とにかくそう思った」
「ああ………」
「それにあのチビっ子もなかなか強ェしな。俺と同じダガー使いだからはっきり言える。ありゃ伸びるぜ」
「俺の弟子だからな。当然だ」
今でも、父親から教わってる型を中心に稽古をつけている。
確かに筋が良い。
それもかなりだ。
「ま、強ェのもそうなんだが、お前さんの仲間はちゃんと“パーティ”やってるよ」
「だろ? 俺の自慢の仲間だ」
俺はニッと笑った。
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「ふふふ………」
もぬけの殻になった一層に声が響いた。
「ついてきちゃったのだ!」
ラビだ。
そして、
「うう………聖くんに怒られるちゃうよぉ………」
なんとお供は美咲である。
「いくぞ! ミサキ!」
ラビは、自分以外のダンジョンに入るとついウキウキしてしまうのだ。
ちなみにどうやって来たのかと言うと、美咲のスキルで、出て行く寸前の俺の場所を特定し、わざわざ馬車の運転者仲間から場所を聞きにいったのだ。
美咲が自分は勇者だと言うと、あっさり教えてくれたようである。
「ししょうもししょうだ。ワタシをおいてダンジョンにいこうとは………」
「こうなったら、急いで合流した方が安全だよね………」
こうして、この奇妙な組み合わせのダンジョン探検が始まった。




