第195話
「おい見ろよ………【銀冠の四柱】が復活してるぞ!」
「うそォ!? マジじゃん!」
「何故あの伝説のパーティが………」
「それよりもどんなクエ受けるか気になるな」
注目度の高いダグラスのパーティ。
銀冠の四柱。
成る程、“金”は三帝か。
「やっぱ、アンタら有名なんだな」
「ったりめーよ。なんつってもギルドマスターとそのパーティだからな」
「“銀冠の四柱”ってのはパーティ名か?」
「おう。悔しいが、金はもういるからな。敢えて銀ってことにしてる」
「じゃあ、俺はなんなんだろーな」
「やめろやめろ。お前が金になったら俺ら銅になっちまうだろ」
「銀も銅も一緒だろ。両方金じゃないし」
「ぬぐぐ………」
まぁ、銀だろうが、銅だろうが、ここにいる冒険者よりはずっと強い。
注目を浴びるのは当然だ。
と言うことは、
「つーか、あの金髪ってガーディアンだよな? なんで“銀冠”といるんだ?」
「有名っつってもあいつGランクだろ?」
「馬っ鹿お前、野郎の実力はGなんざ遥かに超えてるんだぞ?」
「何にせよ羨ましいわ〜。あのローレスさんと冒険できるなんて俺らじゃまず叶わねぇよ」
「日頃の連れてる女の子も超絶美少女だし。それに比べて俺のパーティはむさ苦しいことこの上ない」
やっぱ浮いてたか。
やれやれ。
「なァ、今回のクエストって、具体的には何すンだ?」
「おぉ、言ってなかったな。すまんすまん」
相変わらず非常識なおっさんだ。
嫁さんもさぞ大変だろう。
と、考えていると。
「馬鹿!」
「痛ェ!?」
ローレスがダグラスの頭をグーで殴った。
「アンタ、事前に説明もしてなかったのかい!? 非常識なことを外ではするなって何度言ったらわかる!」
「すっ、すいやせんッッ!!」
なるほど、徹底的に管理された結果がこれか。
「悪いボウズ………では説明するから聞いておけ」
クエストの内容は、ダンジョンの攻略だった。
納品や保護ではない。
クエストとしては珍しい、攻略をゴールとしたものだった。
研究者がそのダンジョンに潜った所、帰ることは出来たのだが、何やら1階層より先に進めなかったらしい。
「入口にいるナビゲーターが色々情報をくれるんだよ」
「ナビゲーター? ダンジョンにそんなやつ居るのか?」
「そのダンジョンにだけ何故かいる。黒髪の男だ」
「黒髪の男か………黒髪って珍しいんだよな?」
「ああ。かなり珍しい。だから、勇者のガキどもが来た時は驚いたぜ。男は両方とも黒。女は黒めの茶髪と黒だったもんだからな」
「黒髪のナビゲーター………ねぇ?」
ちょっと思うところはあるが、別に言わなくても良いだろう。
「それで、モンスターのレベルはどれくらいなんだ?」
「出ない」
「は?」
「だから、モンスターが一切出ないんだよ。一層からよーわからん仕掛けの施された扉があって、その先には誰も行けたことがない」
「そんなにか………」
「そこで、お前の番だ。聞いたぜぇ? あンの分厚い法典一瞬で内容覚えたんだってな」
「まーな」
「なら、いける!」
「一応言っておくが、記憶力と思考力はイコールじゃねーからな」
「じゃあダメか?」
「へっ、ンな訳ねーだろ。舐めンな」
ニッと俺は笑った。
「ケンくん、だったね」
ローレスが俺にそう言ってきた。
「ああ」
「ちょっと、実力を見せてもらえるかい?」
「アンタは………この前あの空間で俺の戦闘見てたよな?」
「ああともさ。でもね、実際に体感するのと見るのとじゃ大違いなんだわさ」
「確かに………一理ある。それで? 戦えばいいのか?」
「いや………」
その刹那、ローレスの内側から何かが蠢く気配を感じた。
「これに耐えるだけでいい」
「オーケー。来い」
単なる【威圧】ではないな。
この感じ、【覇気】か。
覇気
威圧と同系統の特殊スキル。
圧に耐えかねた者を金縛り状態にするスキル。
「じゃあ、行かせてもらうよ」
一瞬の静寂。
そして、
ッゴォオオオォッ!!!
放たれた覇気は、全て俺に目掛けて真正面から飛んできた。
なるほど、これは確かに凄まじい。
でも、
「小せェなァ………」
カッと目を見開き、圧を跳ね除ける。
それに被せるように俺は【威圧】を発動。
覇気ではないので、金縛り効果はない。
しかし、
「………………!!!」
「いい覇気だ。確かに冒険者としては超一流、トップクラスだ。だが、」
俺はローレスの前まで行くと、威圧を解除してこう言った。
「世の中上には上がいるもんだ」
「………なるほど………ッ!」
「悪かったな、あんなもん浴びせちまって。けど、本気じゃないだけまだマシだろ?」
「!? あれが本気じゃない?」
「全然だ。アンタ、おっさんよりは弱いだろ? 俺は強化なしでこのおっさんに勝ったからな」
「あーーっ!! お前バラしやがったな!!」
「いいじゃねーか。アンタの嫁なんだろ? 隠し事は感心しねーなァ?」
「あっはっは! こりゃいい。期待できる」
ローレスは豪快に笑った。
この辺はダグラスに似ていると思う。
「今回戦わないかもしれないけど、こんなことやったのは、ただ単に興味があったからだよ。わかった。アンタは確かに規格外。アタシらとは別次元にいる。それに、あの圧からは悪意を感じなかった。素直でいい圧だ。気に入ったよ」
「認めてくれたか」
俺たちはニッと笑い合って、握手を交わした。
 




