第194話
「あれ? そういえばイケレンくんとリアちゃんまだ来てない? どげんしたとか?」
「イントネーションを正しく覚えて博多弁使え。確かにおっせぇな。見てくるか」
「うむ、行ってくるがいい」
俺はスルーして俺の寝室を見に行った。
蓮に限ってまだ寝てるとは思えねーが………
「と、考えてる間に部屋に到着っと」
とりあえずドアをノックする。
「おーい、お前ら遅ェぞ」
バタン!
何だ? おいおい、人の部屋で何してんだ!?
俺は慌ててドアを開けた。
「何してん——————」
「あ」
そこには、寝ている蓮にゆっくりと近づいているフィリアがいた。
「いやだからこれは、そのぉ………」
「おい、人の部屋で何をしようとしていた?」
「さっ、さぁですわ?」
惚けた顔をしているが、視線が泳ぎまくっている上に手遊びがひどいので、完全に蓮に何かしようとしていたのは間違いない。
「………何ですの!」
「いや、おたくらまだ子供なんだからほどほどににしとけよ? つーか、人ン部屋でよくもまぁそんなことが出来るな」
「うううう、うるさいですわよっ! 私はただ………そう! 蓮を起こそうとしただけですわ!」
そう! とか言っている時点でバレてるとは判断しないのかこの王女は。
「………」
「ちょっと! 黙るなんて酷いんじゃないですの!」
「どうしろっつーんだよ………」
そうこうしていると、蓮が目を覚ましていた。
「ん………あっ、寝てしまったか………おはよう、ケン」
「おっす。オメーも大変だな」
「どういう意味ですの………」
「そのまんまだ」
「キー! キー! こんな無礼者滅多に見ませんわ! ケン! 王族云々関係なく人に対する態度がなってませんわ!」
「うるせぇよ! バカ王女! 頭悪りぃのかオメー!」
「はい言った! ついに言いやがりましたわね!」
「はははっ!」
俺とフィリアは一斉に蓮の方を向いた。
「いや、ちょっと懐かしいなぁって思ってね」
「!」
そうか、昔はたまにこんな感じで口喧嘩してたっけ。
「まぁ、ケンが失礼ってのは確かだな。殿下、もっと遠慮なく言ってやってもよろしいですよ」
「テメー、このヤロー………」
「いーだ! 蓮は私の味方ですわー!」
「言ってろ。アホ王女」
「キィィィー!!」
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「さてと、全員飯食ったな?」
「ああ、美味しかったよ。相変わらずの腕前………いや、上達してたな、ケン」
「不覚にも、美味しいと思った私が悔しいですわぁ………」
ぐぬぬ………と唸りながらこっちをにらんでいる。
スルーしよう。
「んじゃ、そろそろ俺はクエスト行ってくるからな。リフィ、家の管理は任せた。最悪こいつら追い出しちまえ」
「追い出しませんけど、家のことはちゃんと任されました!」
「おう」
俺はアイテムボックスから木刀を取り出して腰に下げた。
「お、その木刀………」
「ああ、懐かしいだろ?」
「いや、」
蓮は詠唱し、アイテムボックスからそれを取り出した。
「!」
「そういう事だ。お前は常備してたから持ってるんだろう? 俺の場合は部活道具に混ざってたからな。武器運用は出来ないが、ちゃんと取ってある」
蓮はニッと笑った。
「あー、ケンちゃんの木刀久しぶりに見た!」
「俺のトレードマークは頭以外はこれだったからな。こっちでも愛用してる」
木刀があると、出来るだけ簡単にチンピラどもを無力化できた。
使い慣れているのが特に大きい。
「いいなぁ、お揃い」
「お前剣使えねーだろ」
「部屋に飾っとくの」
「これ結構邪魔くせーぞ………っと、時間だな。行ってくるわ」
俺はベランダを開ける。
「んじゃ」
俺はベランダから飛び降りてギルドまで走った。
「もうっ、ケンくん行儀悪いですよ!」
リンフィアがそう叫ぶ頃には、既に俺の姿は小さくなっていた。
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「うぃーっす」
ギルドの受付に行くと、いつも通りマイが働いていた。
「よ、マイ。おっさんいるか?」
「ケンくん。話は伺ってます。マスターは彼方に」
マイが指差した方を向くと、ダグラスと他に3人ほどいた。
察するに、あれがかつてダグラスとパーティを組んでいた仲間だろう。
ナイトメアに閉じ込められた時に見た覚えがある。
「では、頑張ってきてください」
「おう」
俺はダグラスの方へ行った。
「おっす」
「む、来たかボウズ」
「ああ。んで、そっちのは?」
俺は3人を見て尋ねた。
「ああ、俺の元パーティメンバーだ。紹介する。このでかい坊主頭がドロット」
「件の少年か。ドロットだ。よろしく頼む」
「よろしく」
おっさんも大概ゴツいが、こっちは更にゴッツイ。
相撲取りみたいな体格なのだが、それら全てがゴッツゴツの筋肉という嘘みたいな体をしていた。
「こっちがローレス。妻だ」
「マジで!?」
おっさんの女とは思えないほどの美人だ。
一体どんな手を使ったのやら。
「疑ってんな? オメー」
「ったりめーだろ。何故にこんな曰く付きの迷惑マスターにこんな美人な嫁が出来ンだよ」
「おまっ! 言わせておけば——————ぐべっ!」
強烈なビンタを食らったダグラス。
「アンタ、子供相手にみっともないよ」
「いや、だってこいつが………」
「へぇ?」
「すみませんでしたーーっ!!」
直角にお辞儀するギルドマスターの図 in ギルド。
「君がケンくんね。主人から話は聞いてる。今回はよろしく頼むよ」
「おう、よろしく」
「いてて………んでもって最後はこいつ。エンドールだ」
なんか、物凄く顔が丸い生き物がいる。
人間ここまでおかしな骨格になれるのか? と疑ってしまうレベルだ。
「エンドールでぇす。よろしくでぇす」
喋り方も特徴がある。
これが、今回のパーティメンバーだった。
 




