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第188話


 「ハァ、ごめんねケンくん。兄貴がこんなことしちゃって。はいお詫び」


 てんちょーは酒蒸しを持ってきてくれた。

 これは鯛か?

 あぁ、美味そうだ。

 また酒だが、これなら琴葉も美味しくいただけることだろう。


 「うう、すっごいやらかした気がする………」


 珍しく頭を抱えている。

 ちなみに酒の酔いは状態異常の一種という事で、魔法で治せる。


 「ほら、これ食って元気出せ」


 「わぁ、お魚だ!」


 

 琴葉はすぐにがっついて美味そうに食っていた。


 「流石だなてんちょー。めちゃくちゃ美味いし上手い。こういう方法があったのか」


 「あ、気づいた? 他にもね」


 俺はてんちょーと料理トークを始めた。

 



 一方その頃、




 「ごちそうだ! なあなあ、これとってくれ!」


 ラビも美咲に慣れたらしく、一緒に食っていた。

 裾を引っ張って料理をねだっている。


 「良いよ。ふふふ、可愛いなぁ」


 美咲はもうラビにべっとりだ。

 よほど可愛いのだろう。


 「おーい、チビちゃん」


 「む、チビじゃないぞ。ワタシには、ラビというなまえがあるのだ」


 「おお! そうかそうか。むむむ………」


 七海はまたあだ名を考えていた。

 少しでも仲良くなると、すぐあだ名をつけようとするところは相変わらずだ。


 「よし、ウサ子だ」


 「うさこ? ヘンななまえつけるな!」


 「いやいやぁ、変じゃ無いんだなぁこれが。ウチらの世界じゃウサギをラビットって言う時があるのだ! ラビ繋がりだからウサ子と呼ぶのである」


 「おー、なるほど。ラビットか。じゃあいいや」


 理解したらしい。

 こいつ、一応頭はいい方なんだよなぁ。

 中身はクソガキだが。


 「じー………」


 「すずっち、ジーって口に出すとは珍しいじゃないか。どしたの?」


 「ん」


 その一言で、七海は意味を察した。


 「なるほど、可愛いと言ってるのか。ますます珍しいな」







 「むぅ、レンが構ってくれませんわ」


 「まぁまぁ、殿下に構っていないわけでは無いと思いますよ。獅子島くん、久々にあの金髪に会えて嬉しいんでしょう」


 綾瀬は、フィリアを宥めていた。

 近くに高橋がいたが、見た途端に面倒だと理解し、そそくさと逃げていった。

 あとで殴ると誓った綾瀬である。


 「でも、たまにはこんなパーティも悪くは無いですわね。ここのお料理、王城の料理より美味しいですわ」


 「いてて、先生頼むから見逃して!」


 「お前と言う奴は………護衛くらい面倒くさがらずにこなせ!」


 ルドルフは高橋の首根っこを掴んで運んで来た。

 綾瀬は心の中でガッツポーズをとった。


 「確か王族の警護放棄って死刑ものだったわよね?」


 「ゲッ、マジかよ」


 「それじゃあ大人しく護衛するしかないわね」


 ニヤリと悪い顔で笑った綾瀬を見て、高橋は終わったと思った。











———————————————————————————











 結構食ったなと思って夜風に当たりに来たら、外には三帝が揃っていた。


 「お、アンタも来てたんか?」


 「今し方着いたのだよ。久し振りにこの三人で会いたいと思ったし、な」


 ファリスはこの辺に宿泊しているらしい。

 たまたま近くにいたから魔力を感知したとのこと。


 「ん、邪魔したな。俺はさっさと帰ろうか………」


 「待ちたまえ、坊や」


 「? なんかようか、ギルファルドのおっさん」


 「いやな、君のことを彼女らから聞いてね。ますます興味を持ったのだよ。風にあたりに来たのだろう? ならばゆっくりしていくといい。サクラスから酒とつまみを貰っている」


 少し悩んだが、この国の頂点に立つ三人だ。

 有益な話が出来るかもしれない。

 まぁ期待してないが。


 「じゃあ、邪魔するぜ」


 「約束守ってよ」


 隣でホットミルクを飲んでいたラクレーが俺を見てそういった。

 釘を刺しておきたいのだろう。


 「わかってるわかってる。昼に聞いたって。明日だろ? 場所だけは考えとけよ。巻き添えはなるべく無しだ」


 「なんの話かね?」


 「魔族達の狙いが冒険者だって事はなんとなく気づいてたんで、こいつに低ランク冒険者の手助けを依頼してたんだよ。報酬が俺との戦闘だ」


 「本来ならラクレーが報酬になってやるのが普通なのだがな。余程少年が気に入ったらしい」


 「ん、楽しみ」


 心なしかウキウキしている気がする。


 「君も奇怪なやつだな、坊や。我々三人とこうやって会う人間はこの国に数える程しかおらんというのに」


 「よく考えても見ろ。まだこっちに来て日が浅いんだ。法律もよくわかってなかった俺がそんなもんに気が行くと思うか?」


 「ふ、それもそうだな」


 ちょっと一息つく。

 酒を飲んでみたがこれがまたうまい。

 さすがてんちょー。


 「あ、そうだ。魔法学院に入るんだったら手続きとかはどうすりゃいいんだ?」


 「そこに関しては私がやっておく。おそらくお前は他の子らとはクラスが変わるがな」


 「つーか俺学ぶことなんざ何もねーよ」


 魔法的な知識はこいつよりずっと多い。

 経験の差を差し引いても、はるかに俺の方が詳しいだろう。


 「だろうな。だがお前以外はどうだ? 突然やってきたイレギュラーに、しかも自信の塊のような連中が持つ魔力や知識をさらに上回るような奴がきたらどんな反応をするか」


 「なるほどな」


 「他の子らも実力が伴ってきて、本人が希望さえすればクラス替えをしよう」


 多分リンフィアはどうにかなるだろう。

 ぎりぎりだが、おそらくラビも。

 しかし、 ニールに関してはどうだ?


 「1人は完全に剣士なんだが」


 「ならば、魔法戦闘科に入学させるといい」


 「あー、そういう学科もあんのか。なら心配要らねーな」


 「そうそう、出立予定が決まった。あと3日で、街を出る予定だ。それまでに準備を頼む」


 「ああ」



 あと3日、か。

 約束は2つ、明日明後日で終わらせて、最後は………その時考えよ。



 俺はグイッと酒を飲み干した。


 「ごちそうさん。ラクレー、明日迎えに行くから店で待ってろ。正午だかんな」



 「わかった」



 「最後に一言」


 ギルファルドが俺を呼び止めた。


 「なんだ?」


 「君は神を見たことがあるか?」


 唐突な質問に一瞬驚いた。


 神、うんある。

 というかさっき会った。

 伏せるべきか、言うべきか。


 んー、もういいや。



 「ある」


 「そうか、なるほど。参考になった」



 「………ふーん」



 俺は振り返って店に戻った。




 「む、話は終わったか?」


 ダグラスは俺を出迎えた。


 「おう」


 「んじゃ、最後に一言だけ言っとくか」


 オホンとダグラスはわざとらしく咳き込んだ。



 「ちゅうもォォォォォォォォォオオく!!!!」


 耳がキンキンする。



 「こいつが! 今回この事件の解決に最も尽力した男! ヒジリ・ケンだ! あ、名前はケンのほうだぞ。金髪のガーディアンといえばわかるだろう!」


 「ちょ、おい!?」


 「今回、ぶっちゃけて言うが、こいつがいなけりゃ、最悪フェルナンキアは陥落していた。それがどうよ! 死者0人だぜ!? ここまで出来たのはこいつのおかげだ。有難う………!!」


 「おおお! マジかよ!」


 「スゲェなにーちゃん!」

 

 「よっ、大将!」


 持ち上げられることに慣れてない俺はちょっと困った。


 「それじゃあ、そろそろこの宴会も終わりだが! 我らが英雄に乾杯だ!」


 「「うおおおおお!!!」」


 「やれやれ………」

 










 そして、その後しばらく飲んで騒いで会はお開きになった。









———————————————————————————









 「楽しかったですね」


 「そうだな………こいつらが寝なかったら尚良かった」




 リンフィアはラビを、俺はニールを背負っている。

 こいつ、飲み会が終わったら、泥酔した状態で鎧を着やがったせいでおぶりづらい。

 ゴッツゴツだ。



 「しょうがないですよ。2人とも今日はお疲れでしたから」


 「お前もな。ご苦労さん。あ、あと3日でここを離れるぞ」


 「3日かぁ。結構あっという間ですね。結構長く居た気がします。楽しかったです………」


 リンフィアは懐かしそうに思い出していた。

 俺はつい見入ってしまう。


 「ケンくん?」


 「あ、ああ、そうだな。やっぱ寂しいか?」


 「ちょっとは」


 「じゃあ、残り3日でこの街への未練をなくしとけよ。目一杯遊べ」


 「はい!」



 

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