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第186話


 「今さっきのようなところを見せられたら一体どれだけの魔法知識が詰まってるか気になるな………ちょっと中見せろ」


 「アホかアンタ!?」


 誰ツッコミを代わってくれよ。


 「冗談だ」


 「本気であってたまるか」


 こいつ冗談言うキャラだったのか。


 「さて、了承も得られた事だし、街に戻るよ。せっかくだからサクラスの処にも顔を出しておきたい」


 俺もてんちょーのメシ食いてーな。

 そうだ、今度こいつらも連れて行こう。

 蓮達も一緒がいいな。

 飯行こうって言ったし。


 と、そんな事を考えていると、


 「なぁ、少年」


 「何だ?」


 「お前ほどの男ならこの状況も切り抜けられただろう? なぜ私に乗っかった」


 「んーと、理由は3つある。1つ、こいつらにまともな魔法教育を受けさせる事。2つ、なるべくカードは残しておきたい。3つ、この世界の………特に魔族の情勢を知りたい。マギアーナは国境ギリギリの国だ。だから半魔族もいるんだろ?」


 「ああ」


 「なら魔族に関しても多少は情報が行ってる筈だ。違うか?」


 「情報も来ている。しかし何故だ?」


 んー、ちょっと誤魔化すか。


 「こいつらは半魔族だが、結構前に亡命していて今のエヴィエリアルの状況を一切知らない。今回街を襲ってきた連中についても調べたいしな」


 「そう言うことか。ならば可能な限り情報を渡そう。タダではないがな」


 「承知の上だ」


 「ふ、なら良い」


 これらも当然目的だ。

 しかし、真の意図は別にある。

 エヴィリアルにいるリンフィアの弟のランフィール。

 こいつをいずれ保護し、一緒について来させるか、そのまま国ごと乗っ取る。

 基本的にやるなら前者だが、魔族を受け入れているこの学院に入れると言う案もある。

 後者はあくまでもそうならざるを得なくなった時の措置だ。

 それは後々考えよう。





 「あ、ケンくん悪い顔してます」


 リンフィアが俺を見てそう言った。


 「そうなのか?」


 「わたしにはいつも通りに見えますが………」


 ラビとニールにはわかっていなかった。


 「いや、あれは何か企んでる時の顔です。絶対そうです」


 「聞こえてるぞ」


 「ひゃー!! もう! びっくりするじゃないですか!」


 「いや、後ろで悪い顔やら企んでるやら言うもんじゃねーだろ」


 俺はリンフィアのデコをグリグリと指で擦った。


 「あ、痛いです。結構ホントのやつです」


 「前から思ってたが、お前敬語の割には太々しいよな」


 「元気なのはわたしの長所です。お陰で奴隷時代も乗り越えられたし、亜人の方からも、ちょっと元気すぎない? って言われたことがあります」


 よく考えれば、奴隷から解放してすぐもあまりテンションは変わってなかった。

 気にしてなかったが確かにおかしい。

 あまりにも明るすぎるような………何かあるな。まあ今は深くは聞かないでおこう。


 「さてと、わたしは先に街に戻るとするよ。久々にギルにあっておこうと思う。詳細は明日話そう。ではな」


 「ん、じゃあな」


 ファリスは一足先に街に帰った。



 「なんか大変みてぇだな、坊主」


 「おっさん。ああ、大変っちゃ大変だ」


 「この街離れんのか?」


 珍しく真面目なトーンで話しかけてきた。


 「そう………なっちまうな。なんかワリィな。せっかくリスク覚悟で入れてもらったっつーのに2ヶ月弱で街から離れることになっちまって」


 すると、ダグラスはがっはっはっはといつもの様に豪快に笑った。


 「そんなモンはオメーらの自由さ。冒険者ってのはそういうもんだ。好きな場所に行って、いく先々で色んな冒険をする。それを縛り付けちゃあギルドマスター失格だぜ。お前らの冒険がフェルナンキアじゃなく、マギアーナになったってだけだ。それに今回は完全にお前さんらに救われた。感謝してるよ」


 「そうか………んじゃ、世話ンなった礼に1つだけ、未解決のクエストをなんでもクリアしてやる。中央のギルマスなら今の俺のランクでもどうにか出来んだろ?」


 「お! マジでか!? んじゃ、お前さんが行く前に頼むわ」


 「おう」


 ダグラスは俺とそう約束としたあと、事後処理のためにこの場を離れた。


 「それじゃあ、俺たちも一度街に戻るか。今夜はパーティだ。ラクレー、てんちょーの店空いてるか聞いてくれるか? 俺が奢る………ってお前、いつも飯はタダだっけ?」


 「む、失礼だな。あたしは金を支払ってる。SSSは月に一度決まった収入がはいるから。奢るなら、遠慮なくあたしも食べる。それと、お前には街を離れる前にいつ戦うか決めといて貰わないといけない」


 げ、そうだった。

 面倒だが仕方ない。

 約束してしまったんだし。


 「わかった。んじゃ、そん時話そうぜ」


 「ふふふ、楽しみ」


 我ながら厄介な約束したなと思う。

 まぁこいつの剣術は俺も見ておきたいし、いいか。









———————————————————————————

 








 それから、まずダグラス達は低ランク冒険者達を街へ帰した。

 残っているAランク以上の冒険者は、みなモンスターバブルの後始末に駆り出されていた。

 と言っても、大半は魔族達が魔力を吸い出していたので、然程時間はかからなかったようだ。


 ギルドの方は、ダグラスがいない間ギルファルドが指揮を取っていたようだ。

 一度襲撃され、 混乱状態だったが、こいつのカリスマ性のお陰かすぐに収まった。

 

 町民への説明は、蓮達勇者一行と王女が行った。

 第三王女だが、人気が高く、支持が厚いフィリア直々に行ったこともあり、プチ騒動になったらしい。

 近くで見ていたが、蓮の執事っぽさがなんとも言えずつい笑ってしまった。


 リンフィア達だが、とりあえず正体に関しては箝口令を敷いて貰った。

 一応王女からの命令だから逆らえばタダでは済まないだろう。



 そんなこんなで徐々に問題は解決していって、 今回の件はこれで一件落着になった。








 表面上は、だが。



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