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第177話


 リングの中心で燃え盛るデスウェポン。

 ニールはこの間に魔力を貯めている。

 周りの冒険者は、見たこともないような威力の炎球を眺めていた。

 リンフィア達も、勇者達もだ。


 「なんだ今のは………!」


 「ファイアボールか!? いや、それにしては黒いし魔力が桁違いだぞ!」



 ブラックノヴァ


 あまりの威力に冒険者達は愕然としていた。

 もちろんファイアボールとはまるで違う代物だ。

 特に大きな違いはその性質。

 ファイアボール………炎魔法は基本的に燃やす魔法だ。

 他の効果はそのオマケに過ぎない

 だが、これは違う。

 これは、


 「見ろ! 地面が溶けていってるぞ!」


 「何だこの暑さは…………」


 「まだ燃え続けるのか!?」


 物を燃やし、溶かし、熱する。

 そのあらゆる効果を、オマケではなく100パーセント発生させる。

 だが、


 「!!」


 「キュリリリリリリリリリリリィィィィ!!!!」


 それでも倒しきることは叶わない。

 デスウェポンは炎を振り払った。

 あの威力の攻撃を受けて平然とし、それを一瞬で振り払う奴のスペックはかなり高い。



 「やはリ、倒しきルことは叶わナいカ………フふ、ふハは、あッはっハっは!!」



 楽しい、楽しい楽しい!!!


 そうだ、これが戦いだ!

 なぜ今まで私はこんないいものを楽しんで来なかった!?

 あははは!もっと、もっと壊したい!!



 ニールは普段絶対にしないような邪悪な笑みを浮かべて、デスウェポンに突っ込んだ。

 先ほどとは比べ物にならないくらいスピードが上がり、何とか攻撃を全て防いでいた。

 しかし、受けるばかりで攻めきれてもいなかった。


 「うっとォしイ!!」


 ニールはより一層強くなった黒炎を剣にまとい、デスウェポンの腕を2本一気に斬り落とした。


 「よォし!!」


 その隙を狙って一瞬で攻撃を繰り出した。

 大剣はデスウェポンの横腹を直撃し、横に動かした。


 「おお!?」


 「やったのか!?」


 だが、流石にそれでは大したダメージを与えられていない。

 デスウェポンは軽く刺さった大剣を抜き、上へ飛ぶ。

 すると、回復を終えた脚も使ってニールの剣を押さえた。


 「クっ………」


 しかし、ニールも確実にパワーアップしている。

 ニールは脚を振り払い、逆にデスウェポンの乱れた体勢を利用して、中央に剣を突き立て、腹部にゼロ距離から黒炎を流し込んだ。


 「【ブラックノヴァ】ァ!!!」


 火柱が上がる。


 「モっとダァァァ!!!!」


 火柱が上がる。

 火柱が上がる。


 ニールは次々にブラックノヴァを放った。

 流石のデスウェポンもこれは効いている。

 デスウェポンは抵抗するためにニールに脚を伸ばしたが、避け、頭上から攻撃を放った。



 「ガァッッ!!!」



 ニールは大きく口を開いてブレス攻撃を放った。

 拡散した炎が、ニールを一瞬で包み込む。


 【ブラックロアー】


 黒炎のブレスだ。

 これもやはり、通常の攻撃とは威力が異なる。

 凶暴で凶悪な黒き竜の咆哮。



 ああこれだ!

 これが私だ!

 何も考えず、自由にただ破壊のみを求める狂人。


 

 「あはハはッっ!!」


 まだ生きている。

 今度は飛び出してくる前に、こちらから突っ込むことにした。

 内側から激しい剣戟の音がする。

 そして、一際大きい音とともに、立ち込めていた煙が一気に晴れ、鍔迫り合いのようになっていたニールとデスウェポンが姿を現した。


 「クっ………ぐゥゥ………」


 「………」


 両者、一旦剣を下げ、後ろに退いた。








 「互角だ………あのバケモノ相手に互角かよ!」


 高橋が歓喜の声を上げた。

 周りにいた七海や綾瀬、ラビ達などもそう思っていた。

 だが、


 「………じゃない」


 「え?」


 「互角じゃないです………多分、ニールが押されています」


 リンフィアはそう言った。

 これがもし、他の誰かが同じ状況ならそうは言ってないが、ニールだからそう言ったのだ。

 表情に余裕がなく切羽詰まっている。

 一見笑っているように見える表情でも、リンフィアにはそう見えたのだ。


 「で、でも、お互いに似たような実力じゃ………」


 美咲がそう言うと、


 「いや、俺もそう思うよ。ニールさんは多分もう後がない。対して敵はまだまだ余裕そうだ」


 「俺もそう感じたぜ」


 「私もそう思う」


 蓮とダグラス、ルドルフもそう言った。


 「そんな………!」


 皆辺りを見渡す。

 冒険者達は蓮達と同じようなことを思っていたようだ。

 ここにいるのは皆はるか上位の冒険者ばかり。

 流石にこれくらいは読める。

 そしてそれが表情に出ていた。


 「じゃ、じゃあ、何であの人は動かないんですか!?」


 「腰に下げている剣をよく見てみろ。あれは抜刀剣だ。この前訓練で教えただろう? 一撃の威力を極限まで求めた剣だ 」


 美咲は訓練の様子を思い出していた。


 「この前教えた通り、膨大な魔力を貯めなければ、鋭い一撃はでない。ラクレー殿は、そのために魔力を貯めているのだ。だが、あれほど貯めているところはあまり見たことがない。かなりの時間を要しているようだが………」


 「それだけスンゲェのをお見舞いするってこったろうよ。ニールの嬢ちゃんは多分時間稼ぎだ」








 「ハッ、めンどうナヤツだ………」

 

 クソッ思ったより限界が近そうだ。

 戦い方にキレがなくなっている感覚がある。

 表情も歪んでいるだろうな。

 だったら一層暴走した方が………いや、それはいやだ。

 それでは巻き込んでしまう。

 くっ………一体どう——————



 「!?」


 考え込んでいるところにデスウェポンが突っ込んできた。

 普段ではしないような油断が、ここに来て出てしまっている。

 これもこの状態になる弊害の一つだ。

 そして、この油断が、戦況を一転させた。


 「っ………!?」


 体勢が崩れ、背中が剥き出しになる。


 「しマっ——————」


 デスウェポンは背中を容赦なく攻撃した。



 ブシュッ!!



 「ぐあアあアアあああ!!!!」


 背中から血飛沫が上がった。

 ニールは痛みを堪え、ぐっと足を踏ん張り、体勢を整える。


 「ッッッ………!」


 目に見えて動きが鈍くなっていく。

 さっきまでなら防げていた攻撃が防ぎきれなくなっていた。


 「こコに来テ時間切れカ………!」


 痛みで鈍っているのではない。

 そろそろこの状態での自我の維持が出来なくなってきたのだ。


 「ラクレー殿は………チィッ、まだカ………ぐぎいいいああああ!!」



 狂気の侵食が一層強くなり、自我が埋め尽くされそうになる。


 このままじゃマズイ、耐えなければ。

 耐えなければ。

 耐えるべきだ。

 耐える。

 耐えよう。

 耐えるしかない。

 耐えるしかない。

 耐えるしかない?

 耐えるしかないのか?

 耐えなくていいのか?

 耐えなくていい

 耐えたくない。


 もう、耐えない。


 開放しよう。

 そうだ。

 狂気に従え。

 本能に流されろ。

 欲望を解き放て。


 自由を、自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を自由を


 意思とは裏腹に魔力が増していく。

 それは剣に流れ、ドス黒い力がニールを飲み込もうとしていた。


 「自由ヲ………」



 本当に自由か?



 「!!」


 声?

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