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第176話


 「まさか魔族と共闘するとは思わなかった」


 ラクレーは突然そう語りかけてきた。

 一瞬驚き、それは直ぐに焦燥に変わった。


 「なんでわかった?」


 「勘。あたししか多分わからないし言いふらす気は無い」


 ニールは、これでもこの問題については慎重な方だ。

 クール系で言って実はバカと言うギャップキャラ、と思いきや、しっかりするべきところはしっかりしている。

 なので、こう言うセリフを聞いても普通は信用しない。

 だが、なんとなく信じられると思った。


 「それは良かっ、たッ!!」


 ニールは黒炎を放った。

 デスウェポンを燃やそうとしたが、全然効かないどころか動きが鈍る様子もない。


 「小細工するなら斬って」


 「そうだな」


 2人は同時に攻撃を受け、左右から挟み込むように攻撃を仕掛けた。








 「ニールさん、あの戦いについていけるのか………凄いな」


 蓮はせめて何かを得ようとじっと観察していた。


 「流石は“女王”ってとこだな。全く、リスク覚悟でギルドに入れて正解だったぜ」


 「え? ダグラスさん、ニールが半魔族だって知ってたんですか?」


 リンフィアがそう尋ねると、ダグラスはとぼけた顔をした。


 「ま、気づいてなかったら上も何も言わねぇだろ? それがたとえフリだったとしても、な?」


 「ふふふ、そうですね」


 いい加減、と言ったら聞こえは悪いが、色んな意味で寛容な男なのだ。


 「っと、冗談もほどほどにしとかねぇと。情けねェ話だが、俺じゃあれにはついていけん」


 眼前には凄まじい剣戟が繰り広げられていた。

 初対面なのに、ここまでスムーズに連携が出来ているのは、やはりこの二人の才能がそうさせているのだろう。


 「もしアイツらがやられてあんなバケモンが放たれちまったら、ここらの街は終わりだ。頼むぜ………」


 剣天が破れる。

 そんな事態になってしまえば、もうこの国の人間で勝てる可能性があるのは、同じ三帝の“魔道王”しかいない。

 

 「クソッ、何もできねぇのはやっぱり腹立たしいもんだな………」


 「………よく、わかります」


 リンフィアは一瞬だけ表情に影を落とした。

 こいつは、多分この場の誰よりも無力の辛さを知っているだろう。







 「こいつ、キリがないな。多分粉微塵にしても復活するぞ」


 「だったら跡形もなく消し去ればいい」


 「剣で? そんな事が可能なのか?」


 ラクレーは剣を鞘に収めた。

 そして、腰に下げているもう一本の剣に手を掛ける。


 「剣で倒せない敵はいない。それが存在している以上、絶対に斬ることはできる。それが例え神であろうが斬り裂けるとあたしは信じている」


 抜刀。

 鞘を中心に魔力が集中していく。

 この世界の抜刀術というのは、魔力を貯めて放つ一撃のことを言う。

 専用の鞘には魔力が高まるための仕掛けが施されているのだ。

 

 「ちょうどいい。時間稼ぎしてて」


 「………わかった、やってみよう」


 と、引き受けたのはいいが、恐らく一人では攻撃を防ぎきれず、たいした時間を稼げないだろう。

 しかし、他の冒険者も当てになりそうにない。


 「やっぱり、使うことになったか………」


 ニールは大剣の柄を、強く握りしめた。

 今、ニールは【覚醒半魔・ステージクオータ】と言う状態になっている。

 そして、まだ2段階変化可能だ。

 だが、理性を失うリスクがあるので、そう簡単に使うことが出来なかった。

 連携など以ての外だ。

 しかし、一人で戦うならば、一つ上の状態にはなれる。

 ()()()()と言うリスクを負えば、だ。


 「牙や肌は隠せても、角と羽は無理だろうな………」



 ニールはこの一瞬で色々考えた。


 ここで素性がバレてしまえば、恐らくリンフィア様やラビ、ケンにも迷惑をかける。

 魔族と知られるのはそう言うことだと、ここ数年この国を回っていてよくわかった。

 この国は、魔族を忌み嫌っている。

 いや、人間の国はみなそうだろう。

 

 それでも——————



 「やらないでリンフィア様が死ぬよりはずっといい」



 居られなくなるのは私だけにする。

 幸い、連中に黙って貰えれば、リンフィア様の素性が露見する事はない。

 だから………

 


 ニールはそう考え、ついに決心した。



 「行くぞ。バケモノ同士派手に暴れようじゃないか」



 ニールはヘルムの一部を外し、顔を晒した。

 視界を広げたのだ。

 もうこれで完全にバレる。

 だが、後悔はしていなかった。

 むしろ、これ以上なくやる気である。



 「ハァアッッッ!!!」



 大剣から黒い炎が溢れ出る。

 黒い模様はより一層広がり、全身を覆った。

 角や牙も巨大化し、今まで見えてなかった羽がついに露わになった。






 「あ、まっ、魔族だッ!!!」


 「女王が魔族!?」


 「嘘だろおい………」



 周りを囲んでいた冒険者達からは予想通りの反応が上がった。



 これで、この街での私の居場所は無くなったな。

 悔いはない。

 こいつらはどうでもいいのだ。

 きっとリンフィア様も………納得は、してくださらないか。



 ニールは一瞬困ったように笑うと、 表情を引き締めた。




 

 ゴォオッッ!!!



 ニールは剣を振り、黒炎のリングを地面に敷いた。

 そこには、ニールとデスウェポンの2名のみ。


 「時間を稼がせてもらう」


 そして剣をデスウェポンに向け、それを放った。


 「【ブラックノヴァ】」


 鋒に発生したのは、黒炎の球。

 だが、魔法で作った炎球とは熱も密度もまるで違う。

 それはまるで黒い太陽のようだった。


 それは一瞬にして敵を包み、閃光のように弾けた。

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