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第172話


 「リンフィアさん、いつでも良いよ」


 蓮は剣を構えながら飛ぶ準備をした。


 「それじゃあ、行きます」


 リンフィアは詠唱を開始する。


 

 「『吹き荒れる突風よ、空を切り裂き、暴れ狂え。【ストリームブロウ】』」


 

 三級風魔法の【ストリームブロウ】

 そこに五級風魔法の【ガスト】を加え、回転をつけ、勢いを強める。


 「………」


 蓮は足元に魔力を感じていた。


 まだだ。

 まだ、飛ばない。


 タイミングを合わせる。

 魔力を感じ取り、爆発した瞬間膝を曲げ、風を感じたら一気に飛ぶ。


 

 ブワッ!



 きた!


 蓮は膝を曲げた。

 そして次の瞬間、

 小さな風を感じた。


 「今だッッ!!!」


 一気に膝を伸ばすと同時に風が吹き荒れた。

 タイミングはバッチリだった。

 蓮はうまく風に乗り、どんどん加速していく。


 「わぁ! 凄い!」


 上手くいって、そのスピードも驚異的だが、もっと驚くべきは蓮だ。

 シビア過ぎると言ってもいいのに、蓮は見事それを合わせた。


 




 「よし、ちょっと久しぶりだが………起きてくれよッ!」


 聖剣 フェルクレス。


 人が扱う魔法では存在しない幻の属性、聖属性の力を宿す剣。

 聖属性は神由来の力で、魔力そのものが、()()()に変質しようとして出来た、偶然の産物だ。


 「いくぞッ!!」


 剣の中央が薄く光った。

 魔力を注ぎ込むごとにそれは大きくなっていく。


 「聖剣解放ッッ!!!」


 蓮の全身が剣から溢れた聖属性のオーラに包まれた。

 そして、飛び交う魔法に剣を振った。





 「オオオオオオッッ!!!!」


 


 ズォオッッ!!!


 


 斬撃は空を裂き、一瞬だけ、飛び交っていた全ての魔法が消失した。


 第1解放『崩邪の一撃』

 これは、所有者に危害を加えようとする力に反応し、殲滅させる。

 



 「よし、抜けた!」


 


 蓮は急ブレーキをかけ、振り返りざまに突起物を切り刻んだ。


 「思ったより脆いな。だったら一気にいこうか」


 可能な限り刻んでいく。

 簡単には再生できないように粉微塵にしていった。


 「リンフィアさん、今だ!」


 リンフィアは魔法を防いで進んで行った。

 思った以上に楽になったようで、ほとんどダメージは食らっていない。


 「レンさんも早く!」


 幸い壊した突起物は真上にあったので、蓮は滑り込むようにして空洞に入った。


 「出られるかはともかく、入ることは出来ましたね」


 「出るときはこの上から抜ければいいよ。今度は楽に壊せそうだしね。それにしても………」


 蓮は空洞の割に明るいなと思った。


 「結構明るいな。中に何かあるのか? うーん、ここで色々言っても始まらないし、行ってみようか」


 「はい」


 蓮たちはデスウェポンの体内へと進んで行った。











———————————————————————————











 「負傷者は即座に後退しろ! 回復が済み次第別の負傷者と交代だ!」


 状況は一転、負傷者が一気に増えた。

 デスウェポンの攻撃が変則的となり、Sランク以上の冒険者も手を焼いている。

 それに、怪我人というのは、Sランク冒険者達だけではない。


 「おいヒヨッコども! 指示に従え!」


 「うわああああああ!!!」


 たまたま近くを通りかかった低ランク冒険者を襲い始めたのだ。

 彼らのステータスでは逃げ切ることは難しい。

 それ故に狙われてしまったので、高ランク冒険者がそれを庇い、結果低ランクも高ランクも負傷者が増えたのだ。



 「なんてこった………こんな悪知恵働かせてくんのかよコイツ」


 「………」


 厄介としか言いようがない。

 何か打つ手はないのかと考えていると、


 「ダグラス殿、ここは私に任せてはくれまいか?」


 ニールがパームカフでクインテットブーストを掛けながらダグラスにそう言った。


 「構わんがどうするつもりだ?」


 「時間を稼ぐ。今のうちに低ランク冒険者達を逃して置いてほしい。では」


 ニールは大剣を手に取る。

 ヘルムを被り、顔を覆い隠して、変化してもバレないようにした。

 そしてそのままデスウェポンに向かっていった。


 「一人で行くつもりか!? おい!」


 無茶だ、と言おうとした瞬間だった。

 ニールからものすごい魔力が発せられたのだ。


 覚醒半魔・ステージクオータ


 4分の1だけ、竜の力を解放することで、あらゆるステータスを上昇させた。


 「こいつは………とんでもねェ魔力だ!」


 しかし、この強力な力の裏には当然リスクがある。

 今もニールの頭には破壊衝動が彷徨いていた。

 だが、それでもまだ小さいほうだ。

 これくらいならまだコントロール可能。


 「ハァッ!」


 剣に黒炎を纏わせ、デスウェポンの関節を斬りつけた。

 傷口から爆発したように炎が燃え盛る。

 


 「灰になれェェェッッ!!!」



 ニールはさらに火力を上げた。

 しかし、


 「くっ………火力が足りないか!」


 脚はまだ引っ付いたままである。

 だが、ダメージは確実に与えている。

 もう暫く斬れば脚は落とせるだろう。

 すると、危険とみなしたデスウェポンがニール目掛けて魔法を撃ってきた。


 ニールは魔法を弾くのと、斬るのを並行して行う。

 だが、これではタダでさえ不足している火力がさらに小さくなる。

 今最優先にすべきは囮だ。

 低ランク冒険者が逃げる時間を稼ぐ。

 ニールは仕方なく退こうとした。

 その時、

 

 「うおおおおおおお!!」


 地上から現れたダガーが魔法を弾き始めた。


 「ニールねえ! いま!」


 「ああ、助かる!」


 ニールは再びデスウェポンの脚を斬りつけ、脚を一本斬り落とした。

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