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第170話


 『詳細は言えぬが、ワシが今どうなっておるかだけ説明しよう』


 ヨルはその場に座った。

 思念体だが。


 『エヴィリアルの内乱の時、まだワシは神として君臨しておった。しかし、その後の召喚の時、ワシの力がとある者に奪われてしもうたのじゃ』


 「人間や魔族じゃ無理だな。同じ神にか?」


 『如何にも。そのせいでワシは大半の権限を失い、こちらの世界で、力を取り戻す術を探しておった。じゃが、なかなか見つからぬものでの』


 神と言えど万能ではない。

 “全知”の神がいても全能の神はいない。

 神というのは、ある特定分野において、それを極め、且つとある物を手に入れた存在のことを指す。

 こいつが失ったのは恐らくそのとあるものの一部、いや大半だ。


 だが、そうと言っても神だ。

 人を超えた存在であることには変わりない。


 『最近ようやくひとつだけ見つけたのじゃ。その方法が』


 ………俺は多分それがわかる。

 可能性としてはいくつか想定できるが、これが最も可能性も効率もいい。

 それは、


 「使徒を全滅させること、だな」


 『………驚いた。お主、どこまでこちら側の事情を知っておるのだ?』


 「さァな。勇者が全員死んだら神様が死ぬっていう伝説が事実だってことを知っていただけだ。今俺を操ろうとした理由もそれが含まれてんだな」


 『すまぬと思っている。今ワシの味方は誰もおらぬから焦っておったのじゃ。引き込めそうなやつは何人かおるが………』


 ヨルはチラッとゼロをみた。

 確かにこいつにはどこか迷いがある。

 しかし、下手に手を出せない以上、引き抜くのも簡単じゃない。


 「トモ、どう思う?」


 『ぶっちゃけ噂だけは小耳に挟んで居た。神が変わったというか主旨のね。ただ、君たちには特に関わりがないだろう?』


 「まあ、確かにな。特に俺は」


 ぶっちゃけ誰が神でも知ったこっちゃねー。

 トモは別だが、他は結構どうでもいい。


 『ほんとは特異点だからもうちょいしっかりして欲しいんだけどね。ま、その方が僕は楽しいからオッケーなんだけど………そうか。君は堕ちてもないし、消失もしていない半端な状態なんだね。でも………』


 『うむ、消失に関しては時間の問題じゃ。おそらくそう長くはない』


 「消えちまうのか?」


 『じきにな。困ったものじゃよ。信仰の対象がワシであった時代と比べて。奴らは血の気が多くなった。一部の過激派が他種族に攻め入ったりなどの行為は昔もあったが、それを差し引いても最近は特に目に余る』


 「………」


 

 エヴィリアルはあいつらの故郷だ。

 できるならそういうのは、いやだな。


 「ヨル」


 『なんじゃ?』


 「お前が消える前までにはどうにかしてやる。ただし、俺が解決したら………ひとつ、願いを聞いてもらう」


 『良いのか? さっきあのような事をしでかしたのに』


 「いい。気にしねぇ。真っ先にってわけにもいかねーが、消えそうになったらトモ越しで教えてくれ。エヴィリアルに行ってサクッと征服してくる」


 『………感謝する』


 これで手札が増えたな。

 俺は下を向いてニヤリとする。

 が、下心だけでもない。

 悪いやつではないんだ。

 助けを求められたら助ける。


 『ワシはもう帰る。引き続き引き抜きを行うが………難しいじゃろうな』


 ヨルは力なく笑った。


 「俺一人で多分十分だ。今のうちにこっちをぶらぶら楽しめ」


 『強気じゃな。何故そこまで自信がある?』


 何故?

 決まっている。


 

 「俺が一番強いからだ」



 俺は一切躊躇うことなくそう言った。


 『くっ………はは、あははは! やはり面白いな。ますます欲しい。じゃから、』


 思念体は俺の頰に手を当てた。

 もちろん触れることはできない。

 しかし、暖かい何かが流れ込んできた。

 これは、俺が神の知恵を得た時とよく似ている。


 『あ゛ーッ!!! 僕のケンくんに何するのさ!!』


 横でものすごいトモが騒いでいた。

 つまり、そう言うことだろう。


 『何ちょっと唾つけといただけじゃよ』


 「良いのか? これってマズイだろ?」


 『不良じゃろうが。それしきのことで色々言うな』


 む、確かにその通り。

 だったらここは素直に、


 「有難くもらっとく」


 『やれやれ、そう言うのも良いと言うに』


 「礼儀を尽くさねーことが不良の定義じゃねーよ。実際は違うだろうが、俺は好きなようにするのが不良だと思ってる。勝手気ままに我がままに。俺がしたいのはそう言う生き方だ」


 そう生きると誓ったんだ。



 『そうか………だったら、その力もそのために精々役立てろよ』


 「おう」


 『それではな。また会おう、ケン』


 「ああ、またな」


 ヨルは勝ち誇ったような笑みを浮かべてトモを見て消えていった。


 『ぐぬぬ、何を貰ったんだいケンくん』


 嫉妬心丸出しに俺を見る。

 俺は鑑定でステータスを開いた。


 「! これは………いいもん貰ったかもな」



 精神体憑依


 物に自分の意思を植え付け、操作する。

 

 

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