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第17話

 

 寝起きで状況が読めていないらしい。

 まずは声をかけてみる。


 「よう、気がついたか」


 「あなたは………っ!」


 女は手で覆ってツノを隠そうとした。


 「何してんだ? 隠してんならもう遅いぞ。俺がここまで運んだンだからな」


 女は恐る恐る手を退かした。


 「………………か」


 「ん?」


 「私を蔑まないんですか?」


 「……は?」


 何を行ってるのだろう。

 この見た目のせいか?

 金髪はこんな異世界でも効果を発揮するのか?


 「蔑む? 俺がお前を?」


 「だから、私は魔族ですよ? それに奴隷なんですよ?」


 「……ああ! そう言うことか」


 人間は魔族を見下してるんだった。

 恐らく魔族を見かけたら嫌な感じで見たり野次を飛ばしたりするのだろう。


 「しねーよ、くだらねぇ」


 「……」


 じーっとこっちを見ている。

 改めて見るとかなり美少女だ。

 琴葉と張るくらい、いや、それ以上かも。

 髪はボサボサで所々汚れて入るがそれが目に入らないくらい美少女だ。

 


 「この人変わってる」


 シャムがそう言った。


 「そうですね。確かに変です。ふふっ」


 女は優しく笑った。


 「助けてくれてありがとうございました。それと、すみません、巻き込んでしまうことになるかも知れません」

 

 「あー、やっぱマズかったか」


 そう、あれでも一応領主らしい。

 指名手配くらいはされるだろう。


 「ま、なんて事ァねーよ。その程度どうにかするのは造作もねぇ」


 「はぁ」


 これは信じてない。

 まぁ信じろってもの無理な話だ。


 「逃げるにせよ準備がいるな。っと、そうだ。忘れてた。お前道具屋どこにあるか知ってるか?」


 俺は漸く当初の目的を思い出した。


 「えっと、ここを右に曲がってまっすぐ行ったら赤い建物が見えるのでそこを左に曲がってすぐのところです」


 「……よし覚えた。サンキューな」


 「いえいえ」


 「そろそろ行くわ。怪我ももう大丈夫だろ?」


 「はい、もうバッチリです」


 ぴょんぴょん跳ねて見せた。


 「それならいい。じゃあな」


 俺はその場を後にした。







———————————————————————————






 「行っちゃったね。僕を見て優しくした人間はあの人が初めてだったよ」


 シャムはケンの後ろ姿を見ながらそう呟いた。


 「そうね。あんな人がもっと増えたら……」


 女はなんとも言えない表情をしていた。


 「お姉ちゃん?」


 「なんでもないよ。帰ろっか」


 「うん」


 シャムは石を退けて塔に入ろうとした。


 「待て……!」


 シャムたちは声が聞こえた方を振り返った。


 「あ……ぁ」


 シャムが身体を震わせる。

 振り返ると居たのは2人の主人のヨルドだった。


 「ご、ご主人、様」


 「貴様ら、俺をこんなにしてタダで済むと思ったのか……来い!」


 ヨルドの声に合わせて複数の影が飛び交った。

 影はシャムたちの後ろに回り込んだ。


 「やれ」


 みぞおちに一撃。


 「お姉ちゃ、んっぐ……ぁ」


 シャムは耐えきれず一瞬で意識を失った。


 「シャムくん!」


 女は駆け寄ろうとするが、捕まってしまい動けない。


 「離してください!」


 身をよじって抵抗するが一向に離れることが出来ない。


 「離せだと? 何を言っている。もう貴様らはここから離れることはできない」


 「!!」


 「貴様らは廃棄だ。俺の言うことを聞かない奴隷なんぞ処刑だ! あははは!」


 裏路地にヨルドの高笑いが鳴り響く。

 処刑。

 つまり、自分も、そしてシャムも殺されてしまう。

 そう思った女は、


 「そんな! せめてシャムくんだけでも!」


 どうにかシャムだけは助けたかった。

 シャムはまだこんなにも幼く、死ぬには早すぎる。

 だから女はこんなにも必死に叫んでいるのだ。

 そしてヨルドはその様子を眺めていやらしい笑みを浮かべると、


 「ダメに決まってるだろ。あのクソガキも処刑だ」


 女の顔が絶望に染まる。


 「お願いします……! あの子はまだあんなに……」


 言い切る前にシャムと同様にみぞおちを入れられる。


 「うっ……!! どう、か………」


 そしてそのまま倒れ込んだ。


 「こいつらを牢へ連れて行け。処刑の準備だ」


 薄れて行く意識の中女は祈る。



 誰か、助けて……!

 






———————————————————————————







 「!」


 ふと何か感じ顔を上げるがそこには当然何もない。


 「気のせいか?」


 俺は今道具屋で買い物をしている。

 可能な限り安く仕入れるために値切りの最中だ。


 「こ、この値段でいいのか?」


 「あぁん? まだ下げれんだろ。その鍋の素材の鉄状態が悪いって何回言えばわかンだよ。ほれ、あと1割いや、2割はいけンだろ」


 道具鑑定で道具の素材の状態は把握できる。

 これは見た目はいいが焦げやすい鉄だ。

 

 「勘弁してくれよぉ! これ以上は無理だって!」


 「ほぉ、それじゃあいいんだな? まだあるぜェ状態が悪い売りモン。バラすぞ?」


 「ぐぬぬ……わかったよ! もってけ泥棒!」


 「おぉっし!」


 よし、これである程度生活必需品は揃えた。

 実は錆びくらいなら生活魔法でどうにでもなるがそれは黙っておこう。


 「じゃあな、また来るぜ」


 「二度と来んなバカヤロー!」


 俺はさっさと店から出て行った。





 「んー、一通り街ン中見たが趣味の悪リィ建物ばっかだったな。あの成金(偏見)ヤローが居なくなりゃちったぁましになるんだろうがよ」


 この街にはやたら金ピカの建物が多い。

 俺から見たら、と言うか向こうに人間から見たら趣味が悪いが、こちらでは珍しいらしく、一応観光名所らしい。


 「金閣寺みたいに趣があるわけでもねーしな。もういいや、宿に帰るか」


 俺は一旦宿に帰そうとした。


 が、止めた。



 「いやな予感がする………」


 俺は急いでさっきの現場に引き返した。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 天才のはずなのに支離滅裂な行動が多くて萎えます。 ・暗殺を仕向けるような不穏な国に親友を置き去りにする ・奴隷を先に帰らせ「主人を見捨てる奴隷」という状況を作り出して被害を拡大させる …
[一言] 首突っ込むなら片時も離れるなよ。助けるにしろなにするにしろ離れてる間に死んだらどうするつもりだろね。偽善者っていうのかねそれとも馬鹿っていうのかね
2020/01/16 20:20 退会済み
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