第168話
「うおおおおおおお!!」
「死ねええええええ!!」
まずは二人。
左右からタイミングをずらしての攻撃。
さらに後ろからもう一人。
無強化の人間だから無茶な動きはできないと思ったか?
「フッ」
まず、後ろに下がりながら上に飛んで、つま先で後ろのやつの頭頂部を砕き、剣を奪う。
「!」
今ので初撃を交わしたので、第二撃を打とうと足を差し替えた。
俺はその瞬間、足を斬り落とし、もう片方のやつの腕を裂いた。
「ぎゃあああああああ!!! 俺の、足ッ!」
「ひぎいいいいいいいッッ!! 腕が、腕があああ!!」
今回は時間差ではなく、ただただ痛みを感じるように斬った。
現在二刀装備中。
使ったことはほぼ無いが、使い方はわかる。
神の知恵により、動きの最適解を計算、学習、そして、
「ハァッ!」
今斬った奴が崩れ落ちる前に、そいつの後ろにいた奴の腹を内蔵ギリギリで斬り裂いて実践。
もう片方で敵の攻撃をガード。
うん、慣れた。
「こいつ、二刀使いか!」
違う。
が、もう既にそう言っていいレベルには達した。
「1、2、3ッッ!!!」
立て続けに目の前の魔族の手を、腕を、足を斬り落とす。
「全然減らねぇなァ。こんな大人数残しやがってよォ………お前ら全ッ員ッ! 斬り刻ンでやるよ!」
「っ………………!!」
威圧を飛ばして動きを硬直させる。
ザコ相手に使うには丁度いい技だ。
すぐ近くにいた低ステータスの魔族の腕を4人まとめて斬り落とした。
「待てィ!」
「あ?」
3人の魔族が前に出る。
構えを見る限りなかなかの手練れだ。
「よくも我が同胞をここまで傷つけてくれたな………斬り捨ててくれる!」
何を言ってるんだ?
「はァ? 何ぬリィ事言ってんだよ。エビルモナークっつークソヤローが約束を反故にしたのがそもそもの原因だ。魔族共に街を襲わせねぇと言ったはずなのにこれだぜ? だったら、お前らが俺に斬られても仕方ねぇよなァ?」
「我が主人を愚弄するかッ!」
「もう会話にもなんねぇな………ッ! と」
絶妙なコンビネーションだ。
俺が防御をして、最も手を持っていきづらいところにもう一人が攻撃をし、それを防いだ瞬間に次を入れる。
こいつら兄弟だな?
顔そっくりだし。
攻撃の隙を与えないようにするためのフォーメーションか。
「ま、俺にはきかねーけどな」
一撃目、二撃目、それを両手で防ぐ。
そしてラストを攻撃してくる場所を予想し、一撃目を出したやつを引っ張る。
すると、その攻撃はそのままそいつに入った。
「ぎッ………!?」
「しまった!」
俺は二撃目を放ったやつを斬って、そのまま重症の魔族の傷口を裂いた。
「ぎゃあああああああ!!!!??」
「兄者!」
最後に残ったやつの背後に回り込む。
「残念」
「貴様ッ!」
振り返った瞬間、腹部に掌打を入れる。
魔力を送って、中の細胞に直接ダメージを与えた。
「これは痛いぞー」
「ごはッ! げッ、ぁあああああ!!!」
血を吐きながら倒れる男。
「まだいるのか? めんどくせぇが、魔法使えねぇしなぁ。それにゼロの野郎は一番奥に持ってかれたし………地道に斬っていくか」
次々に斬っていった。
二度とこの街を襲おうとは微塵も考えられないように痛めつける。
「ゼロ! 魔力を制限したのは失敗だったな! 魔族は他種族とは比べ物にならない魔力が売りの種族が大半だ。オーガみたいな武闘派ならともかく、ここにいる連中は魔法がねぇと話にならねぇよ!」
俺はそう言いながら次々に魔族をなぎ倒していく。
「チクショウ………………お前たち、魔法さえ解放すれば勝てるか?」
「全員でMPギリギリになる威力の魔法を打てばあるいは………」
「………わかった」
するとゼロは、固有スキルを解除した。
使える。
魔法が使えるぞ!
俺は思わず口角を上げた。
「総員! 魔法攻撃だ! ありったけを注ぎ込めェェェェェ!!!」
「【フレイムソード】!」
「【アイスソード】」
「【サンダーソード】」
魔族たちは次々に剣に魔法を付加させる。
なるほど、魔法剣の斬撃を一気に飛ばす気か。
確かにこの辺は消し飛ぶくらいの威力は出るだろう。
俺がいなかったらな。
「行けーーーーーーッッ!!!」
斬撃が同時に放たれた。
全方位から隙間のない魔法斬撃が飛んでくる。
俺は剣を構えて、深く息を吐いた。
魔力による物質や力を斬るにはコツが要る。
触れる部分の魔力の密度を高くすれば、斬ることが可能。
ただ密度を高くして斬るだけの行為も、より高密度となった魔力の斬撃となることにより、一種の技へと昇華する。
「【斬魔一閃】——————」
ズォオッ!!
斬魔一閃
高密度の魔力を帯びた斬撃は、大気中の魔力をも斬り裂き、魔力が無くなった空間から強い衝撃波が生まれる。
人や物は斬らない。
しかし、衝撃波を魔力でガードしないと、そこから魔力を奪われるのだ。
そして魔法剣は、一瞬にして消え失せた。
「あれだけの斬撃をたった一撃で………」
「バケモノめ!」
「何だ?! 魔力が………」
「遅ェよ」
「「!!!」」
マズイと思ったのか、ゼロが再び固有スキルを使おうとしていたので、俺はクインテットブーストでこの場にいる全魔族を斬った。
もちろん痛めつけるようにだ。
「っ………!」
「さて、最後はお前だけなんだが、少し話をしねぇか?」
「話などあるものか。さっさとやれ。こいつらにやったように俺を斬れ」
なるほど。
やっぱりこいつは………
「お前、実は結構いいやつなんじゃないのか?」
「は?」
「最初会った時に思ったんだが、お前はどこか正々堂々としてる。他の連中とは違ってそこには好感が持てる。だからこそわからねーんだ。何で人間を滅ぼそうとしてる? そんなナリでも元は人間だろ?」
「………」
ゼロは何も言わない。
ただ、今俺が言った事をちゃんと考えている様子である。
だが、このまま何も言いそうにない。
仕方ないと思い俺は剣を振りかぶった。
こいつは峰打ちで済ませてやろう。
その瞬間だった。
何かを呟こうとしていた。
「俺は——————ッ! ぅぐ、ぎ………ぁあああああ!!!」
「おい!? どうした! しっかりしろ!」
突然苦しみだした。
魔力にも、身体的にも異常が見られない。
俺にわからない?
どう言う事だ。
こんな状態知らないぞ。
こんな真似が出来る奴は他の特異点か、あるいは………
「ッッッ!!!」
何だ、この重圧は。
心臓を直接握られるような圧迫感は。
俺はバッと上を向いた。
そこには、妖艶な笑みを浮かべた女がいた。
一見してわかる。
神だ。
 




