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第166話


 「全然ダメージが入らないが、こっちもあまり被害はないな」


 ダグラスはそう呟いた。

 足を振り回したり、毒液を吐くだけ。

 この人数が本気を出せば余裕で対処可能だ。


 「つーことは………………ん?」


 突然蜘蛛の動きが停止した。

 ピタリと動きがやんだのだ。


 「何が起きた?」


 ダグラスは一旦攻撃を止めさせるが、特に動く様子もないので、攻撃を続行させた。


 「上で何かあったのか? まあ、何にせよこりゃあ今のうちに足を壊すしかないな」


 「ちょっと待てよ、あれなんだ?」


 誰かが上を指差した。

 足の関節あたりから何かが出て来ている。

 あれは何だろうか。


 すると、



 ガッコンッ!!


 

 ロボットが動く様な音が聞こえた。

 重々しい機械音が鳴り響き、デスウェポンが変形していく。


 「あそこから鳴っているのか?」


 「何が起きるんだ?」


 様々な憶測を口にするが、誰も何が起きるのか確証をもって言っているやつは一人もいなかった。

 だが、これだけは皆共通して思っていた、


 碌でもないことが起きる予感がする。


 と。

 そして、見事的中した。




 「キュリリリリリリリリリ!!!!」



 「「!?」」


 関節から出て来た何かが冒険者たちの方へ向いた。

 棒状の塊だ。

 その先端に魔力が集中する。


 「………………………! 全員気をつけろ!」


 ダグラスが焦燥感を露わにして叫んだ。


 「魔法が飛んでくるぞォーーーーーーッッ!!!」


 棒は回転を始めた。

 しばらく回ってスピードが十分になると、魔法を地上にばら撒き始めた。




 ズドドドドド!!




 悪魔の兵器と呼ばれるだけのことはある。

 破壊を撒き散らすその姿はまさに悪魔だ。


 だが、


 「そるぅああああ!!」


 「どりぃあああああ!!」


 次々に魔法を弾き飛ばしていく。

 

 「効かねぇええぞおお!!」


 そして防ぐ。


 「ほっ! よっ! そらっ!」


 「ふっ………!」


 避ける。


 決して遅いわけではない。

 むしろ速攻系の魔法レベルのスピードだ。

 威力も十分にある。

 だが弾く。

 防ぐ。

 避ける。


 そう、彼らはS以上のランク冒険者だ。

 そのくらいの芸当はやってのける。

 しかし、それでも多数の魔法は結構マズイ。


 「多、過ぎるッ!」


 「いつまで来るんだよ!!」


 降り続ける魔法。

 一切衰えることなく、永遠に続きそうな程だ。

 それに対して、冒険者達の体力はどんどん減って行ってる。


 「マズイな………お前ら!」


 ダグラスは魔法使い達を前にやって、土魔法で壁を作らせた。


 「作戦を練る間だけでいい。時間を稼いでくれ」


 「「はい!」」



 「クソッ………坊主はまだ帰ってこねぇのか!」










———————————————————————————










 俺は、魔族側の特異点、エビルモナークが去ったあとすぐにレイドボスのところまで戻ろうとした。


 「さて、ギルファルドのおっさん。マイのねーちゃんを頼むぞ」


 踵を返して、出口に向かう。

 すると、


 「待って下さい!」


 マイが俺を引き止めた。


 「どうしたんだ? 用があンなら急ぎめで頼む」


 「メイが魔族達に攫われました!」


 「!!」


 メイが攫われた。

 これはダメだ。

 他の誰かならともかく、メイは“ヴェルデウスの娘”という魔族達に狙われる理由がある。

 それにワープされていたりしたら俺ではもう………


 「まだ()()()ない様子でした。彼らが使う空間転移のようなものは使われていなかったです」


 「! それなら間に合うかもしれない。何処だ! 何処に消えた!」


 マイは首を横に振った。

 だったら仕方ない。町中を走り回って探すしか——————


 「見つければ良いのだろう?」


 ギルファルドはそう言うと、通信魔法具を取り出した。


 「ギルファルドだ。今からいう特徴の女性を見つけろ。全員使え」


 ギルファルドはマイから聞いた特徴を言っていく。

 そして通信魔法具を切ると、


 「私だ。見つかったか。場所は?………坊や、メイという方は東区の第4地区の武器屋の裏路地に連れ込まれた様だ」


 「本当か!? わかった。恩にきるぜ、ギルファルドのおっさん」


 「さぁ行きたまえ」


 俺は頷いて、すぐ現場に向かった。










———————————————————————————










 「いや! 離して!」


 「やなこった。俺たちに逆らったことを後悔させてやるぜ。エッヘッヘ!」


 この下品極まりない顔をしておる男達は、オーク族だ。

 

 「誰か! 助けッ、むぐぅぐ!!」


 「助けなんて呼ばせねぇよ。でもそうだな。少しぐらい黙って貰おうか——————な?」


 拳を握って、振りかぶった手の感覚がない。

 オークは訳がわからず、手を見た。

 

 無い。


 手首がない。



 「う、ぎゃアアアアアアアア!!!! 俺の手が! 手がアアアアアアアア!!」


 「手ぐらいで騒いでんじゃねぇよ豚野郎」


 俺は切った腕を拾い上げた。


 「ケンくん! 助けに来てくれたのですか!?」


 「よう。ちょっと待ってろ」


 俺はオーク達を睨んだ。

 威圧により、ビクッと震えるオーク達。


 「そんなビビるこたねーだろ。ほれ、返してやる」


 俺は、オークに手を投げた。

 山形に飛んでいく手。

 それに手を伸ばしてキャッチしようとした。

 しかし、


 「刻んだ状態でな」


 「え?」


 オークの手に乗った瞬間、手がバラバラになった。


 「ぁ」


 「いらねーだろ? 嫌がる女を襲うクズの手なんてよ」


 オーク達はその瞬間ブチ切れた。



 「殺してやルゥゥゥゥゥゥゥ!!!!」


 そして、


 「………………ッ」


 オーク達の間を通ってメイの前までいく。

 オーク達は、振り返ると同時に背中から血を流して倒れた。


 「一生寝てろ、クソ野郎」


 「ありがとうございます。助けていただいて」


 「礼はいい。怖かったんだろ? だったらそれを一番最初に言ってスッキリしろ」


 俺はポンと頭に手を置いた。


 「………」


 はい3、2、1



 「うわああああああ!!! 怖かったよおおお!!!」


 思ったより激しく叫んだ。

 メイは頭を埋めてギャンギャン泣く。


 「素直でよろしいこった」


 メイを宥める。


 チラッと魔族達をみた。

 

 まだ残ってたのか。早く捕縛しねーと………しねーと………え? おい、なんで魔族が残ってるんだ?


 「まさか………」


 そのまさかだった。

 そう、街から魔族は、消えていない。

 

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